一青窈はなぜ、名曲「ハナミズキ」を初めてセルフカバーしたのか?

 2015年バージョンの「ハナミズキ」は、このアルバムから先行する形で配信でリリースされる。まず大きな特徴のひとつは、女声によるコーラスだ。歌っているのは一青の母校である森村学園の合唱部の生徒たちで、その清らかな声は曲の純粋さを大きく引き出している。公開済みのレコーディング風景の映像では、一青とアレンジャーの武部聡志の前で声を出す彼女たちの姿がうかがえる。そしてもうひとつの特徴は、この何年かの間に良好なボイストレーニングと精力的なライブ活動によって表現力と声量を増した一青自身のボーカルである。人生の経験を重ね、そこに豊かな包容力をたたえるようになったその歌は、本当に素晴らしい。

一青窈「ハナミズキ」リリックビデオ

 さて、現在の一青は、このアルバムの制作を進めながら、次の人生に向けての準備をしているところだろう。そう、既報通り、この4月に結婚と妊娠を発表したのだ。

 そこで思い出すことがひとつある。実は先ほどの「パパママ」は、二度と会えない存在になって久しい両親に大人の年齢になった彼女がピュアな気持ちで話しかけるような歌で、この曲は同アルバムと今年初頭まで行われた全国ツアーでは重要な役回りを担っていた。その歌詞の中に<もし私が結婚したら/おめでとうと言ってくれますか>というフレーズがあるのだ。アルバム『私重奏』が出たのは去年の10月だが、完成したのは夏の終わり頃で、楽曲自体が書かれたのはそれよりさらに前のこと。もしかしたらその時期から結婚というものを心のどこかに意識していたのではないか……と思うのである。

 今後は活動のペースも変わってくるだろう。しかし一青が歌うのは人生の歌であり、それを突き詰めれば人間愛の歌であることは変わらないはず。その過程では、今までの曲のニュアンスにも幅が出てくるはずだ。これからその歌の深みがさらに増していくのを期待するとともに、まずは『ヒトトウタ』の到着を心待ちにしようと思う。

(文=青木優)

■リリース情報
『ヒトトウタ』
発売:7月22日(水)
価格:通常盤(CD)¥3,000+税
   初回限定盤(CD+DVD) ¥4,200+税
 
<CD収録内容>
1.ハナミズキ (一青窈 初のセルフカバー)
2.ジュリアン (PRINCESS PRINCESS)
3.ロマン(玉置浩二) 
4.たしかなこと(小田和正)
5.青春の影 (チューリップ)
6アイ (秦基博)
7.幸せな結末 (大滝詠一)
8.糸 (中島みゆき)
9.Everything (MISIA)
10.瑠璃色の地球(松田聖子)

Bounus Track.
11.ハナミズキ (English Ver.)
12.ハナミズキ (Chinese Ver.)

<DVD収録内容>
「TOUR 2014-2015 ~私重奏~」ライブ映像を10曲収録

※新録「ハナミズキ」2015年6月24日先行配信予定

http://www.hitotoyo.jp/

https://www.facebook.com/hitotoyoofficial

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