矢野利裕のジャニーズ批評
嵐は、J-POPの歌詞と音楽性の関係を更新するーー「青空の下、キミのとなり」の画期性とは?
むしろ、使われている音色(おんしょく)自体は、だいぶダンスミュージック寄りである。冒頭のシンセサイザーなんか、かなりハードな低音が鳴っているし、ビートも確信的に重いのが選ばれている。したがって「青空の下、キミのとなり」は、細部だけを取れば、けっこうハードなダンスミュージックに聴こえてもおかしくない。しかしここで重要なことは、そのようなサウンドが選ばれつつも、全体的には、タイトルから連想されるようなさわやかさを失っていない、ということである。「青空の下、キミのとなり」の最大の特徴は、バキバキした音色(おんしょく)を取り入れつつも、全体的にはさわやかな曲調になっているというバランス感にある。J-POPにおける歌詞と音楽性の関係を考えたとき、「人と人が繋がっていくことの大切さを実感させられる歌詞」を、このようなバキバキな音色で歌い上げたことは、意外と新しい試みかもしれない。
「青空の下、キミのとなり」の冒頭数秒は、メロディや曲の雰囲気が、YUKI「メランコリニスタ」の冒頭に似ていると思った(それはつまり、Chicago「Saturday In The Park」に似ているということだが)。元JUDY AND MARYのYUKIは、ソロにおいて素晴らしい4つ打ちの楽曲たちを披露し、新しい世界観を切りひらいた。「青空の下、キミのとなり」は、歌詞と音楽性の関係を更新する可能性を持った曲だ。のちのち、そのように振り返られることを願う。
■矢野利裕(やの・としひろ)
批評、ライター、DJ、イラスト。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)などがある。