RHYMESTERは今のスタイルをどう掴みとったか?「やっぱり、オレらはライヴ・バンドなんだ」

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「出音はもちろん、ライヴ・アクションも意識するようになった」(DJ JIN)

――若いJ-ROCK・バンドのインタヴューを読んでいると、今、Dさんが言ったように、フェスが戦いの場になっているというか、そこで機能する武器をつくるような感覚で曲をつくっているバンドが多いんだなぁと思うんですが、RHYMESTERは4半世紀のキャリアを持っているにも関わらず、彼らと同じステージで競っている感じがあるんですね。

Mummy-D:「何故、ラップ・アクトの中でも特にRHYMESTERがフェスに呼ばれることが多いのか」って考えたときに、やっぱり、オレらはライヴ・バンドなんだろうなって思うんだよね。楽器が後ろにあるわけでもないのにバンドっぽいから、フェスと親和性が高いんじゃないのかな。あと、最近、ファンク系のアーティストとセッションすることも多くて、やりながら、RHYMESTERは、楽器が出来ない、歌も歌えない人達が組んだバンドなんだって思った。ヒップホップ・グループっていうよりは、ライヴ・バンドへと進化してるのかなっていう感じもする。

――「a DJ Must Be a Band」(DJはバンドである)のように昔からよく言われることではありますが、それを、現代の日本のフェスで改めて思い知るというのも面白いですね。JINさんもフェスみたいな大きな舞台に出る中で、パフォーマンスに関する意識が変わったんじゃないですか?

DJ JIN:昔はDJっていうと、「黙して語らず、針先から出る音でメッセージを伝えるもんだ」みたいなストイックなイメージがあったけど、やっぱり、色んなステージを経験して色んなジャンルのひとと絡んでいくと、やってる側からどれだけ波動みたいなものを出せるかが凄く大事だと思うようになったね。出音はもちろん、ライヴ・アクションも意識するようになったというか。ミュージシャンもDJも、〝良い〟って言われる人たちって、絶対に特徴的な動きや顔があるじゃない。だから、そういうことが自然に出来ていないとダメだなと。ちょっといじられるぐらいのさ(笑)。

宇多丸:パソコンでDJをやるのが主流になって、どんどん動きが小さくなっていく時代においては〝やってますよ〟感が大事っていうか。

――特にEDMのひとの〝やってますよ〟感は凄いですからね。

宇多丸:いや、本当。ステージ・パフォーマンスで持っていく要素が増えているかもしれない。

DJ JIN:音がいいことは大前提としてね。

――宇多さんは95年に「ヒップホップのどこがリアル? それは現場 つまりここにある」(『EGOTOPIA』収録曲「口からでまかせ」より)と歌っていますし、「人間交差点」でもまた、人と人が出会う〝現場〟を歌っているわけですが、95年の〝現場〟がクラブを指していたとしたら、「人間交差点」がフェスのテーマ・ソングであることが象徴するように、15年の〝現場〟はフェスだったりもすると。

宇多丸:でも、現場も拡散してるわけだからね。

――ネットが現場になっている人もいるし。
 
宇多丸:そうだね。オレらの「ONCE AGAIN」だって、ちょうどTwitterの浸透期と重なったからこそ話題になったっていうラッキーさもあったもん。

――Youtubeにも色んなラッパーのリミックスが上がってましたよね。

宇多丸:だから、さっきの「自分たちの曲が鳴っている場所」を想像するっていう話で言えば、曲をつくって拡散していくっていう過程を考えた時、そこに、ネットが入ってくるのも確かだし、それも今や〝現場〟だろうし。

――宇多さんのラップを聴くと、ネットの現場をかなり意識してるんだなとは思います。アカウントを持ってないのに、Twitterのことをちょくちょく歌ってますよね。

宇多丸:だって、見てるもん。 

Mummy-D:パトロールね(笑)。

宇多丸:でも、それは意識してるというよりは、今どきの会話に出てくる範疇だから使ってるってことだよ。Twitterやってなくたって、〝リツイート〟ぐらい分かるでしょ。

――Dさんはあまりネットを見てなさそうな印象があります。

宇多丸:ははは。

Mummy-D:オレだってネット見てるって。LINEもやってるよ。あと、iPhoneのSmartNewsってやつで、色んなことを知ってる。そこにReal Soundの記事もいっぱい出てくる。

宇多丸:iPhone持ちたての上司の話を聞くみたい(笑)。

――今、RHYMESTERが〝現場〟=「自分たちの曲が鳴っている場所」を想像すると、〝クラブ〟ではなく、〝フェス〟と〝ネット〟が挙がってくるというのは興味深い話です。

宇多丸:ただ、ネットで聴いているひとに曲が刺さるためには、フェスとはまた別の回路があるよね。最初にDが言ってたような、「ヒップホップ・タームをなるべく使わずに」みたいなこととは違って、むしろ、もうちょっと掘りたくなる要素をつくっておいた方がいいというか。

――〝検索ワード〟を散りばめるってことですか?

宇多丸:うん。何か深読みさせる要素があった方がいいときもある。

――RHYMESTERの曲ではなく、宇多さんとK-DUB SHINEの共作ですが、「物騒な発想(まだ斬る!!)」(14年)はそういう意味ではかなり話題になりましたよね。

宇多丸:あそこまでいくとは思わなかったし、今だとこうなるんだなぁって。

――宇多さんもK-DUBさんもこれまで散々物議を醸すようなことをラップしてきてるわけですが、それがたまたまネットの現場にハマるとあそこまで一気に拡散するんだなと。

宇多丸:だから、良くも悪くも外へ向うというか、ああいう刺さり方もある。あと、やっぱり、ネットではラップそのものではなく歌詞を拡散して、字面で解釈するひとも多いんだよね。RAP GENIUS(ラップの歌詞の解釈を書き込むことが出来る、歌詞版ウィキペディア)じゃないけど。でも、それによって、複雑な歌詞っていうか、ダブルミーニングみたいなものが喜ばれる素地が出来ているような気もする。

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「ただ年を取っていくだけじゃ、格好良いジジイにはなれないからね」(Mummy-D)

――なるほど、ネットでは、〝エモい〟表現とはある意味で真逆の、複雑な表現が受け入れられる可能性もあると。ちなみに、Dさんは、「シーンを意識して何かをやるタイプではない」と言っていましたけど、最近のラップは聴かないんですか?

Mummy-D:いや、聴いてるよ。ほら、さっきも買いに行ってたし(タワーレコードの袋からCDを大量に取り出す)。

宇多丸:また、〝CD〟っていうのがおじさんぽいからさぁ……。

――おお、ケンドリック・ラマー、キッド・インク、YG……新譜ばっかりですねぇ。

Mummy-D:でも、やっぱり、ケンドリック・ラマーが良かったなぁ。

――今、ラップ・ミュージック全体のモードでいうと、詰め込むよりは抜いていく感じだと思うんですよ。でも、「人間交差点/Still Changing」はBPMが早いこともありますし、相変わらずバッキバキに畳み掛けていきますよね。ケンドリックも、ある種、モードに対抗するようなテクニカルなタイプですが、それに刺激を受けるところはありますか?

Mummy-D:刺激も受けるし、「ちゃんと構築しちゃっていいんだ」「もっと頭使っていいんだ」って安心もするね。オレとしては、ゆるゆるな、ノリ一発で歌うみたいなやつにも憧れるんだけど、自分がそういうタイプとは違うからこそ、ケンドリックを聴くと「ああ、歌詞って一生懸命書いていいんだ」って。エミネムにもそれを感じるんだけど。

――「Still Changing」の、久しぶりに会ったガールフレンドが結婚していて、動揺して吃る箇所がエディットみたいに聴こえるところとか、Dさんは必ずラップ好きが「おおっ」と思うようなテクニックを挟んできますよね。

Mummy-D:何か、一箇所は「おじさんも頑張ってるよ」ってところを見せたいというのはあるかな。全部の曲で出来てるかどうかは分かんないけど。

――では、「人間交差点/Still Changing」は移籍、新レーベル設立、初のフェス主催と、節目に発表されると同時に、「ONCE AGAIN」から始まった、〝エモい〟表現だったり、ヒップホップの外を意識したスタイルだったりを引き継いだシングルでもあると思うのですが、RHYMESTERがいま持っているヴィジョンはどんなものなのでしょうか?

Mummy-D:変わっていくところもあるし、変わらないところもあるんだけど、やっぱり、押し出したいのは勇気を持って変わっていこうということかな。例えば、移籍もそうだし、デザインを変えるのだって、今まで組んでたチームが良ければ良いほど、勇気がいることだし。やっぱりね、おじさんは攻めないとダメなんだよ。ただ年を取っていくだけじゃ、格好良いジジイにはなれないからね。

(取材・文=磯部涼/撮影=竹内洋平)

■リリース情報
RHYMESTER 移籍第一弾両A面シングル
『人間交差点 / Still Changing』
初回限定盤A(CD+BD) 
VIZL-828  ¥4,167(税抜)
初回限定盤B(CD+DVD)
VIZL-837 ¥3,426(税抜)
通常盤(CD)     
VICL-37050 ¥1,100(税抜)

1.人間交差点
2.Still Changing
3.人間交差点 (Instrumental)
4.Still Changing (Instrumental)
5.人間交差点 (A cappella)
6.Still Changing (A cappella)

初回限定盤A&B 収録映像作品
「KING OF STAGE VOL. 11 THE R RELEASE TOUR 2014 AT ZEPP TOKYO」

1. The R~Walk This Way
2. 午前零時~Once Again
3. The Choice Is Yours
4. K.U.F.U.
5. サバイバー
6. ちょうどいい (Piano Session With Kan Sano)
7. It’s A New Day (Piano Session With Kan Sano)
8. Pop Life (Piano Session With Kan Sano)
9. After The Last~そしてまた歌い出す
10. Just Do It!
11. 付和Ride On
12. Hands
13. ザ・グレート・アマチュアリズム (Piano Session With Kan Sano)
14. ゆめのしま (Piano Session With Kan Sano)
15. ラストヴァース
16. This Y’all, That Y’all (Session With SCOOBIE DO)
17. 余計なお世話だバカヤロウ

副音声:宇多丸・Mummy-D・DJ JINによる元祖・生(ビール)コメンタリー

■RHYMESTER presents 野外音楽フェスティバル 
「人間交差点 2015」

2015年5月10日(日)
お台場野外特設会場(ゆりかもめ・青海駅スグ)
開場 9:30 / 終演 20:00
チケット ¥7,500(税込)
リストバンドとの交換で会場への入退場自由
小学生以下は保護者同伴のもと、入場無料

<出演>
RHYMESTER
スガ シカオ / スチャダラパー / レキシ / KGDR (ex.キングギドラ) / Mighty Crown / SOIL & “PIMP” SESSIONS / SUMMIT (PUNPEE, GAPPER, SIMI LAB, THE OTOGIBANASHI’S) / SUPER SONICS / 10-FEET

特設サイト
http://www.nkfes.com/

RHYMESTERオフィシャルサイト
http://www.rhymester.jp/

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