アイルネ、ベルハー、ブクガ、凜音……アイドルショーケース『IDOL NEWSING LIVE1.5』の熱気

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3番手のBELLRING少女ハート。

 3番手はBELLRING少女ハート。もし彼女たちの単独公演だとしても、代官山LOOPは狭いと思わせるほどの動員力を誇るグループだ。2月をもって仲野珠梨と美月柚香が脱退したが、10日間連続脱退ライヴ『Shigeru充』の5日目(2月23日)の光景は鮮烈だった。渋谷Gladの2段目のフロアから、1段目のフロアめがけてヲタが突然飛び込んだのだ。こいつらは死ぬ気だ。そう震撼した。BELLRING少女ハートがライヴ活動を開始して約1週間後のステージを私は見ているのだが、その時代はまさに緩くて牧歌的なライヴだった。それが『Shigeru充』の頃には、すっかりステージアクトにおける緩さは消えうせて、ヲタの熱狂とともに非常なソリッドなものに変わっていた。

 BELLRING少女ハートは新メンバーとして、甘楽、藤城アンナ、そしてまだ名前が決まっていない「仮ちゃん」を迎えた。私が新体制のBELLRING少女ハートを見るのはこの日が初めてだったが、始まる前からプロデューサーの田中紘治が出てきて、前の柵に圧縮をかけないように注意をうながす状況だった。

 7人体制となったBELLRING少女ハートは、人数の多さと黒い衣装により、黒い塊が目の前に現れたかのようだった。ヲタの声は、音量レベルが早くもレッドゾーンに。1曲目の「Karma」では声を潰したかのようなコールが入り、フロアのヲタがひとつの肉塊のように左右に揺れる。「Crimson Horizon」でのヘドバンは、新メンバーも全力だ。

 「男の子、女の子」は、バックトラックがメンバーの肉声のみで構成されている。まさに田中紘治の狂気の産物だ。ベースもドラムも入っていない楽曲なのに、メンバーが意外なほど激しく踊る光景は、何度見ても異界を垣間見ているかのような気持ちになる。

 「rainy dance」は旧メンバーの4人のみによるステージだった。宇佐美萌や柳沢あやののパートで何人もがリフトされる、なかなかの地獄絵図。クラウドサーフも起きていた。「UNDO」では新メンバーが戻ってきて、爽やかなギターロックになったかと思いきや、上半身裸のヲタがリフトされる。些細なことで出禁にしない現場ほど素敵なものはない。最後の「the Edge of Goodbye」では、ヲタがフロアでウォール・オブ・デスを形成してモッシュを展開していた。BELLRING少女ハートは最後に「みんなのファンをいただきます」といつものセリフを言って去っていったのだが、「BELLRING少女ハートのヲタが一番多いよ!」とツッコミたくなるような状況だった。

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トリを務めたアイドルネッサンス。

 BELLRING少女ハートとヲタが暴れた後にトリとして登場したのは、アイドルネッサンス。ソニー・ミュージックアーティスツ初のアイドルグループだ。

 2014年末に発表されたファン投票イベント『第3回アイドル楽曲大賞2014』の「インディーズ 地方アイドル楽曲部門」で、アイドルネッサンスの「17才」が1位と発表され瞬間、コメンテイターとして壇上にいた私は思わず絶句した。ソニー・ミュージックアーティスツに所属するアイドルネッサンスは、オリジナル曲を持たずにソニー関連の過去の楽曲を歌うラディカルなコンセプトのグループだ。アイドルネッサンスの「17才」もBase Ball Bearのカヴァーである。それが1位になって私が絶句した理由は、「そこまで大人の思惑に乗ってしまっていいものなのか」という気持ちによるものだった。可処分所得が多い世代を狙い撃ちにする戦略にも複雑な心情を抱えていた。

 ステージに登場したアイドルネッサンスは白い衣装。BELLRING少女ハートの黒い衣装と見事なコントラストを生んでいた。まず歌われたのは、チャットモンチーの「シャングリラ」、ユニコーンの「PTA~光のネットワーク」、大江千里の「YOU」、Base Ball Bearの「恋する感覚」、THE イナズマ戦隊の「ドカン行進曲(己編)」。続くUNISON SQUARE GARDENの「ガリレオのショーケース」では、イントロから狂騒状態になり、メンバーとファンが拳を突きあげるなど、楽曲をアイドルネッサンスのものにしていた。

 「17才」では、楽曲の大きなアクセントになっているクラップが快感だ。メンバーのダンスのキレを見ていると、ノスタルジアとは別の次元でアイドルネッサンスが現場を形成していることも実感した。歌とダンスの力量を見ていると、オリジナル曲がないのはもったいないとも感じたが、「17才」やアンコールで歌われた岡村靖幸の「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」のような青春感のある楽曲は、実にアイドルネッサンスに似合っていたのも事実だ。

 こうして約2時間半に渡って展開された『IDOL NEWSING LIVE1.5』。終わってみると、「アイドル」と言っても出演した4組のスタイルや方向性はまるでバラバラだ。そうしたアイドルたちのショーケースとして機能していたのが『IDOL NEWSING LIVE1.5』だった。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

■セットリスト
・吉田凜音
1.SE
2.恋のサンクチュアリ!
3.テンセイリンネ 〜 GONG! GONG! GONG! 〜
4.忘れないPlace
5.リロード
6.真夏のBeeeeeeaM.

・Maison book girl
1.SE
2.film noir
3.ラストシーン
4.眠れる森(ポエトリー)
5.bath room
6.夢の中へ(カバー)
7.マイカット

・BELLRING少女ハート
1.Karma
2.c.a.n.d.y.
3.ボクらのWednesday
4.Crimson Horizon
5.男の子、女の子
6.rainy dance
7.UNDO
8.サーカス&恋愛相談
9.the Edge of Goodbye

・アイドルネッサンス
1.シャングリラ
2.PTA〜光のネットワーク
3.YOU
4.恋する感覚
5.ドカン行進曲(己編)
6.ガリレオのショーケース
7.17才
EC1.あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう

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