初単独ライブ直前インタビュー
「ラップとポエトリーの融合の究極形ができた」自閉症とともに生きるハタチのラッパー、GOMESS登場
基盤にラップのリズムやグルーヴがあるポエトリーを目指した
--そして2ndアルバム「し」が先月リリースされました。これは全体的にはどんなアルバムですか?
GOMESS:もっとポップなものを作りたくて。元々キングギドラも、Dragon Ashも、RIP SLYMEも、J-POPも好きだしっていうタイプだから。
--どういう内容を目指しましたか?
GOMESS:1stを出した後にしんどくなっちゃったんですよ。欲しかったものを全部手に入れちゃった気がして。友達と、友達と遊ぶ時間、笑う・泣くっていう感情、家族が仲良くなるっていうこと、自分の新譜を自分のお金で買うとか。全部叶っちゃって、夢がなかったら生きる活力がないって、病んだんですよね。CDのギャラを貰って、なんか怖くなっちゃって、周りに現金で配ったりしちゃったんですよ。バカですよね(笑)。今思えばあれでMacとか買えば良かった。そんな時期に「し」というアルバムを作ろうと思いました。日本ってみんな今はネガティブだから、自然な内容かなと思います。オレが無理してハッピーミュージックをやってる方が不自然だし。
--ラップ的にも変わりましたよね。
GOMESS:作り始めた時はもうちょっとラップっぽくなる予定だったけど、かなりポエトリーリーディングっぽくなりました。ラップ的なフロウのつけ方って、あくまでリズムの取り方であって、ラップ的なリズムを重視するかどうかなんですよ。今回は感情の込め方を重視しての表現を考えたアルバムになりました。
--自己分析すると、何故そっちに行ったんだと思いますか?
GOMESS:単純に飽きたっていうのと、誰もやってないことをやりたかった。ポエトリー寄りなんだけど、でも基盤にラップのリズムやグルーヴがちゃんと常にあるっていうのを。
中原中也の「盲目の秋」でポエトリーの良さに気づいたんです
--具体的に曲について聞せて下さい。「LIFE」はリリック的に「人間失格」の続きの曲なんですよね?
GOMESS:そうですね。それは最初から決めてました。トラックは、元ライムベリーのプロデューサーのE TICKET PRODUCTION(桑島由一)です。ライムベリーのサウンドがすごく好きだったので。桑島さん、センスいいですよね、構成のつけ方とか。でもこの「LIFE」のトラックを自信なさげに持って来たんですよ。「たぶんGOMESS君のイメージと全然違うものができちゃったから、気にいらなかったら全然いらないって言ってね!」って。すごすぎるし、いらないわけないじゃないですかっていう(笑)。 構成も最初から完成してて。
--「笑わないで」はサクライケンタ(元いずこねこ、現Maison book girlプロデューサー)さんのトラックです。サクライさんの曲に言葉を乗せるのって苦労したんじゃないですか?
GOMESS 苦労しました。普通のラップを乗せるテンポの速さじゃないんですよね。試行錯誤した結果、あのスタイルを見つけて。あれは結構ラップとポエトリーの融合の究極形だと思うんですよ。リズムは完全にラップなんだけど、歌ってる内容やアクセントのつけ方はポエトリー。あれは結構斬新なはず。日本語ラップファンは、好きになるかどうかはおいといて「へー、こんなのやってるんだ」って思ってくれるんじゃないかと。気づいて欲しい、この曲の違和感に!ボーカルのいな(QQIQ)さんは元々好きだったので、一緒にやれて嬉しかったですね。もう1曲作りたい。次はしっとりとした曲を。
--「海月」はミスiD出身の木村仁美さん、「KEEP」は姫乃たまさんと、アイドル畑の方がフィーチャーされています。
GOMESS 木村さんはTwitterの文章が人を癒す力のある言葉をチョイスをするなって思ったのと、ミスiDのステージでバレエを踊っててカッコ良かったから。姫乃さんは、心の根っこにある暗闇が似てるって思って。だから詞は、2人で会話してるようにも、自分と会話してるようにも取れるような、あやふやなものにしました。こういう自問自答のような曲にできたのは、姫乃さんだからだと思います。
--「盲目の秋」は中原中也の詩がそのままリリックになってるんですよね。
GOMESS 中原中也記念館と山口情報芸術センター(YCAM)とのコラボレーション企画でできた曲なんですけど、これがきっかけでポエトリーの良さに気づいたんですよね。元々ポエトリーリーディングって好きじゃなかったので。人間って、感情的になればなるほど、基本的に早口になるじゃないですか。バースワン、バースツーは普通に読んで、トラックに文字数がきっちりはまるんです。でもバーススリーって、普通に読むと文字量が多いんですよ。ただ実際やってみると、バーススリーで感情のスイッチが入って、自然と早口になって、トラックにもちょうど入って。面白かったですね。
--「ゆうかい」にはBOKUGOさんがボーカルでフィーチャーされています。
GOMESS 普段ノイズミュージックとかをやってる、10代の子です。外で録ったんですけど、iPhoneで曲を聴かせて、アドリブで歌って貰いました。彼女の歌ってるところはたぶん日本語じゃなくて、何語でもないです。「BOKUGO=僕語」ってことなんだろうと思います。
--ラストの「箱庭」はこれまでの曲の流れをブチ壊すような、ヘビーな曲調と内容ですよね。
GOMESS 一番最初に完成した曲で、初めから一番最後の曲って決めてました。「鳥が食べれるんなら、人も食べれるでしょ」「鶏はダメでインコはダメなの?」「おかしくない?差別じゃない?」っていう。自分が差別されて、こじらせた結果の思考ですね。オレはそんなに綺麗な人間じゃないから、っていうのを最後に見せておきたくて。