成馬零一〈笹口聖誕3億周年記念企画『笹祭』〉レポ
笹口騒音ハーモニカ『笹祭』の壮大なスケール感 “笹口尽くし”の総決算ライブを観た
3月9日、新宿LOFTにて、笹口騒音ハーモニカのバースデーライブ・笹口聖誕3億周年記念企画『笹祭』が開催された。
登場したのは、笹口騒音ハーモニカ、笹口&ニューオリンピックス、笹口騒音(さわね)、うみのて、笹口騒音オーケストラ、太平洋不知火楽団と、最初から最後まで笹口が出ずっぱりという凄まじいもの。ライブ前の物販では笹口が直接、お客さんとやりとりしており、ライブ終了後は、本邦初公開となる笹口が監督した映画『三億年生きた笹口』の先行試写会が行われた。まさに、どこを切っても笹口尽くしのイベントだった。
当日は月曜の夜で、映画終了は深夜0時近くなるというハードなタイムテーブルだった。そのため、どれくらいの観客が集まるのか心配だったが、昨年の5月にライブ活動を休止していたうみのてが、久々に登場するということもあってか、多くの人々が駆けつけた。
新宿LOFTのステージは二つに分かれていて、観客が往復することで楽しむ形式となっている。オープニングを飾ったのは笹口騒音ハーモニカ。
始まる前に笹口は、笹祭を行った理由について、現在、自分の活動について迷いの中にいて、一度、今までの活動を清算しておこうと思った。と、説明した。
印象的だった曲は「うるう年に生まれて」。8月15日に死んだあいつと生まれたあいつ。9月11日に死んだあいつと生まれたあいつ。同じ日に生まれた人間と死んだ人間のことを交互に歌うことで、無数の始まりと終りが繰り返されることで、容赦なく迫ってくる時の流れが歌われる。
現代の戦争や少年犯罪について歌うため、社会派という印象が強い笹口だが、同時に彼の歌には、現在をマクロな時間軸から捉え直そうとする壮大なスケールを感じさせる。
つまり、地を這うような現代性と宇宙の果てから俯瞰するような幻想性が同時に存在しているのだ。
ステージを変えて、次に登場したのは笹口&ニューオリンピックス。
2020年の東京オリンピックをモチーフにしたロックバンドだ。歌詞は社会風刺というよりはナンセンスなもので、演奏はとてもカッコよかったが、評価は今後の展開次第という感じだった。とりあえず、2020年までは続けてほしい。
笹口さわねは、笹口の妹という設定の女子高生ミュージシャン。MCで「きゅるきゅる~」と言って、エロい言葉を連呼するささねちゃんは、大森靖子や後藤まり子のパロディのようで楽しかったが、ふつうの女の子に戻ると宣言し、残念ながらこのライブで卒業。激しいライブが続く中、いい箸休めとなった。