きゃりーぱみゅぱみゅと小泉今日子の歌詞の共通点とは? 作詞家・zoppがヒット曲を読み解く

「テイラー・スウィフトと同じ路線を歩もうとしている」

――「もんだいガール」は歌詞の切り口も話題になっていますが、同じ書き方をしている過去の名曲はありますか。

zopp:僕は小泉今日子さんの「なんてたってアイドル」(作詞:秋元康)を連想しました。この2曲を並べて聴くと、時代性がすごく出てるなと思ったんです。小泉今日子さんは、同時代のアイドルのなかでは比較的に奔放なイメージで、同曲では恋愛スキャンダルを題材に「レポーター」とか「ミュージシャン」という言葉がピンポイントで出てくるんです。これは当時のリスナーにとってかなりインパクトの強いものでしたが、「もんだいガール」も同じように機能するし、きゃりーさんのほうは相手が一般も含むメディアというか、大勢なんですよね。Twitterでのやりとりなどを思わせるフレーズなどもあったりするので、テレビや新聞で言ってること、やってることがすべてという当時の風潮との違いがハッキリ見てとれます。いまはテレビに対する不信感が高まり、ネットの情報のほうがリアルという意見が多いですよね。様々な事件やスキャンダルを見ていても、メディアより一般の人たちの力が強くなってきてる。このふたつの作品を比べると、それがすごく象徴されてると思います。

――同じ恋愛スキャンダルを題材にしても、ここまで違いが出るのかと。

zopp:「なんてたってアイドル」のサビに<恋をするにはするけど スキャンダルならノーサンキュー イメージが大切よ 清く正しく美しく>というフレーズがあるんですけど、これって良い意味で当時のアイドルにとって等身大であり舞台裏の感じを表現しています。一方、きゃりーさんは「わたし、問題あるんだもん。加味してよ、その辺は」というスタンスで面白かったです。海外アーティストの話になりますが、テイラー・スウィフトもそうですよね。彼女も当時付き合っていたワン・ダイレクションのハリー・スタイルズくんのことを隠さずに歌っていたりする。デビュー当初のテイラーは、“綺麗な子が現代っぽいアレンジでカントリーミュージックを歌っている”という切り口でブレイクしましたが、そこからセレブとのスキャンダルなどもあり、プライベートをオープンにしたことでイメージを転換、良い意味で人気に拍車をかけていったと思うんです。その時々で報じられる相手との実体験を自分の歌に落とし込んでくるから、歌っていても、それがちょっとしたワイドショーになるし、小さなバズが沢山起こる。きゃりーさんの「もんだいガール」はこういった系譜のうえにある曲にも思えますし、いち聴き手としてはこの路線を開拓していってほしくもあります。

(後編【秋元康と中田ヤスタカの作詞術はどう違う? プロデューサーが生み出す言葉を読み解く】へ続く)

(取材・文=中村拓海)

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