シーンを活性化するカリスマの系譜ーーAcid Black Cherry・yasuの求心力の源とは?

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 いつの時代においても、音楽シーンに刺激を与えてきたのはカリスマ性を持ったロックバンドのフロントマンだった。矢沢永吉(キャロル)、忌野清志郎(RCサクセション)、氷室京介(BOOWY)、甲本ヒロト(ザ・ブルーハーツ)。共通しているのは、独創的なボーカルスタイル、独自の価値観、美学に貫かれた生き方によって、熱狂的なファンを生み出し続けていることだろう。現在は大人数のダンスボーカルグループが多いが、強烈な個性を持ったバンドのフロントマンも続々と登場し、シーンを活性化している。

 たとえば1月にニューアルバム『Tree』をリリースしたSEKAI NO OWARIのFukase。精神病院の閉鎖病棟に入院するという壮絶な過去を隠すことなく、繊細で危うい精神性とファンタジックな世界観を共存させた音楽性によって、瞬く間に日本のエンターテインメントシーンのトップにまで上り詰めた彼の存在は、10代~20代を中心に強く支持されている。また新作『35xxxv』で世界標準のモダンヘビィロックを提示したONE OK ROCKのTaka、昨年12月に横浜アリーナで男限定ライブを成功させるなど、同性からも支持されているUVERworldのTAKUYA∞も強力なカリスマ性を持ったフロントマンだ。そして、Acid Black Cherryのyasuもまた、個の力でコアなファンを引寄せ続ける、きわめて稀なアーティストと言えるだろう。

‘07年、Janne Da Arcのボーカリスト、yasuのソロプロジェクトしてスタートしたAcid Black Cherry(以下ABC)。その魅力の中心はもちろん、yasu自身の類まれな存在感と特異なアーティスト性だ。まず注目してほしいのが「ルックス、ファッションは完全にビジュアル系なのに、ライブでは関西弁でおもしろトークを連発」というギャップ。以前インタビューした際も「“ヘンにカッコつけたり、狙っていないのになぜかカッコいい”という人が好き」という趣旨のコメントをしていたが、まさにその通り。クールで危うい佇まいと“気置けない関西のお兄ちゃん”のアンバランス感も、yasu本来の生まれ持った魅力なのだろう。

 ジャンルレスとしか言いようがない音楽性もまた、ABCの大きな武器だ。ビジュアル系ど真ん中のルックスから聴かず嫌いしている人もかなりいると思うが、yasuの音楽性の幅は本当に広く――ヘビィメタル、ジャズ、ポップスから歌謡まで――質の高いポピュラリティを備えているのだ。その中心にあるのはどこか憂いを帯びたメロディ。歌謡曲のテイストを感じさせる彼の旋律が(ビジュアル系のファンだけではなく)より多くのリスナーに訴求したことが大きいのだと思う。

 もうひとつ記しておきたいのが、yasuの優れた客観性だ。何度か取材させてもらうなかで、いちばん強く印象に残ったのは「この人は自分のことをよくわかっている」ということだった。自分のアーティスト性、ファンが求めていること、世間からのイメージなどを見定め、タイミングとバランスを図りながら、もっとも効果的な活動に結びつける能力を持っているのだ。

 たとえばABCが昨年8月、「a- nation stadium fes.」(東京・味の素スタジアム)に出演したときのこと。この日のヘッドライナーはBIGBANGで、目測でも観客の7~8割方はBIGBANG目当てだと思われた。いわゆるアウェイ状態だったわけだが、yasuはここでも優れたバランス感覚を発揮。「見てのとおり、ザ・ヴィジュアル系です。どうもすいません(苦笑)。Acid Black Cherryは略すとABC。“元気よかったヴィジュアル系のABCっていうのがいたな”と覚えて帰ってもらえたら嬉しいです」と屈託のない笑顔と、圧倒的なパフォーマンスとのギャップでオーディエンスを惹きつけてみせた。この冷徹なプロデュース・センスがyasuの求心力の源になっていることはまちがいないだろう。バンドのボーカルのソロプロジェクトとしては、ライブの動員・CDのセールスはすでにトップクラスで、Acid Black Cherryは現代の音楽シーンで稀有な存在であると言える。
 
(文=森朋之)

■リリース情報
『L-エル-』
発売:2月25日(水)

01. Round & Round
02. liar or LIAR ?
03. エストエム
04. 君がいない、あの日から…
05. L-エル-
06. Greed Greed Greed
07. 7 colors
08. ~Le Chat Noir~
09. 黒猫 ~Adult Black Cat~
10. versus G
11. 眠れぬ夜
12. INCUBUS
13. Loves
14. & you

4th ALBUM「L-エル-」Special Site

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