トライセラ和田×バイン田中が語る、ロックバンドの美学(前編)「お互い違う場所で切磋琢磨してきた」

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「常に新鮮な空気を入れ替え続けるのがいちばん重要なんじゃないかな」(田中)

――その頃、10年後や15年後にバンドがどんな風に続いていくかのイメージはありましたか?

田中:それはなかったな。正直、10年とか続くことをあまり想定するもんじゃないでしょ、バンドっていうもんは。いや、もちろん続くんであれば続くに越したことはないけれど、実際思い描けるもんじゃないですよ。

和田:でも、俺はあったな。ロックは歳とってやってもいいんだっていう意識があったし、できることなら長くやりたいなと当時から思ってました。それはロックの歴史的にストーンズがいたからかもしれない。もし70年代だったら40になってロックをやってる自分たちの想像がつかなかったと思うんです。でも、当時ですでに50代のローリング・ストーンズも見てたから。

田中:そうね。バンドスタイルで長く転がるっていうのは、ストーンズみたいにいい見本がいますからね。これはこれで究極にカッコいいことだと思う。でも、僕らは特別具体的な目標を持たなかったですね。武道館とかドームとか、そういうことを思ったって仕方がないとは思ってました。

――結果的に今に至るまでバンドが続いてきたわけですけれど、やはり平坦な道ではなかったわけですよね。

和田:そうですね。危機だって何度もありましたよ。

田中:まあ、あるもんやろうな。

和田:ずっと仲良しなバンドもいるけれど、俺らはそうではなかったですね。そのへん、GRAPEVINEはどういう感じなんだろうと思って。

田中:僕らは僕らで、仲良しグループで集まったバンドじゃないんです。もともと全員の間に最初から距離があるんですよ。あんまり干渉しない。おそらくそのバランスが良かったんだろうとは思う。

和田:ああ、わかる。近すぎる人たちがだいたい解散するから。

田中:あと、エゴが強い人はいない。「俺が、俺が」という人があんまりいなかった。お互いの意見を尊重し合うというか、自分の意見が全てではないとみんなわかってる。そういう感じのバランスで進んできたんですよね。

――バンドの危機はありました?

田中:もちろん、ありましたよ。ウチの場合、いちばんの危機はベーシストが抜けた時。あの時はマジで解散も選択肢の中にありました。

和田:けっこう前だよね。今の体制になってから長いもんね。

田中:そう。それも10年以上前。なので、今はこのままバンドで転がっていこうということにあたっては、どうやって刺激を得るかが問題になってきたりもしていて。モチベーションの維持というか、常に新鮮な空気を入れ替え続けるのがいちばん重要なんじゃないかなと思ってますね。

――そのあたりはどうやって対処しているんでしょうか。

田中:俺らは自分らでやることももちろん大好きなんですけれども、やっぱり人から刺激をもらうことが多いですね。今回はレーベルを移籍したんで、そのことによって出会った人たちの意見を踏まえて作ったりしたし。何かしら窓を開けて空気の入れ替えをすることによって新しいチャレンジをしてきたと思います。あとは、メンバーの脱退と共にサポートメンバーに入ってもらったり、人との出会いによって助けられてるところは大きいかもしれない。

和田:僕らはメンバーチェンジがないですからね。

田中:それを見てると、トライセラはいったいどうやってるんだろうってよく思う。大変だろうなっていう気がするし。

和田:そうだな……田中くんは作曲って今どのぐらい関与してるの? 作曲の名義がGRAPEVINEになってる場合は?

田中:あれは基本的にはみんなで何気なくジャムりながら作ってくんですよ。メロに関しては俺が歌う。で、コード進行とか展開はその場でできたりできなかったりなので、それを後からちゃんとまとめていく。

和田:そういうやり方なんだ。

田中:そう。うちの場合は、一応全員曲を書くので。といっても亀井くんの負担が大きいんだけど。そう思うと、トライセラの場合は唱くんひとりの負担やね。

和田:そうそう、そうなんですよ。だからそういう曲作りにおいてのチームワークは羨ましいなって思う。でもまあ、ウチは二人が信じてついてきてくれてるんだと思います。

――和田さんはTRICERATOPSというバンドを続けてきた原動力はどういうところにあったと思いますか?

和田:僕らも移籍は多かったですし、環境の変化は常にありましたね。あとはまあ、「これやめたらどうするんだ」っていうのもありましたよ。他にすることもないし、他のことで認められたこともない。自分が音楽という武器を手にしてこの世界に飛び込んだ時に「ようやくこれで評価してもらえる!」みたいな思いがあった。「何としてもこれだけは続けなきゃいけない」って気持ちが強いんでしょうね。たぶん、それが原動力だと思いますね。

田中:立派なもんだ(笑)。

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