アイドルはなぜ名曲をカバーする? TPD、アイドルネッサンスの躍進から分析

 アイドルネッサンスの場合は、むしろオリジナル曲がないことが売りともいえる。例えば、12月14日に開催された「スマイルネッサンスvol.2」のセットリストは次の通り。1.太陽と心臓(東京スカパラダイスオーケストラ)2.PTA〜光のネットワーク〜(ユニコーン)3.Good day Sunshine(SAWA)4.シャングリラ(チャットモンチー)5.Lucky(スーパーカー)6.One Night Carnival(氣志團)7.あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう(岡村靖幸)8.17才(Base Ball Bear)。これらの楽曲を7人の少女がエモーショナルに歌い上げることで原曲とはまた違った魅力を引き出しているのだが、日本の音楽好きなら、どこかしら興味を引かれる曲が上のセットリストの中に入っているのではないだろうか?

 アイドルというのは基本的にはクリエイターではなくパフォーマーであり、誰かの作った曲を歌ったり、誰かの書いた脚本でお芝居をしたり、そういった中で自らを輝かせるものだ。だとしたら、必ずしもオリジナルの楽曲にこだわることはないのではないか? むしろ豊富な楽曲資産を活用できる立場にあるグループであれば、すでに楽曲としての強度が認められた曲を再利用した方が高いパフォーマンスに繋がるのではないか?

 新人のアイドルグループが、自身のオリジナル楽曲の数が揃うまで、先輩グループの曲をカバーするのはよくあることだし、そうしたカバー曲をきっかけに原曲を歌っていたアイドルのファンが新しいアイドルに興味をもつということもよくあることだ。ただ、カバー曲にはもっと積極的な活用の仕方があるのではないか? 今回紹介した2組は、そうした可能性を感じさせてくれる。

■岡田康宏
編集者、ライター、カメラマン、評論家、コラムニスト、WEBプロデューサ。得意分野はサッカーとアイドル。著書・共著に『アイドルのいる暮らし』『サッカー馬鹿につける薬』『グループアイドル進化論』など。Twitter:@supportista

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