アイドルがアイドルを辞めるときーー姫乃たまが“卒業”を考える

 私は地下アイドルを経験することによって、こうした文章や、モデルの仕事をさせてもらえるようになりました。自分の能力を考えると、いきなりライターやモデルになることは不可能です。何の能力も技術もないのは今も変わりませんが、唯一、人に何かを披露することには慣れました。何年か地下アイドルとしてライブ活動を積み重ねてきた結果だと思います。

 他の職業への途中経過であり入門であるという点で、アイドルは大学に似ているなあと思います。大学に通いながら、地下アイドルとは何なのか考えていたせいかもしれません。

 最終目標の声優や女優になった時がアイドルからの卒業だと考えると、私生活を見直すための活動休止は大学でいう休学という感じでしょうか。様々な分野の職業について学びながら、興味の深いものは実習したり研究したりして、最終的な就職、進路先を見つける大学生の姿はアイドルに似ています。

 中でもやはり卒業は大きな節目で、希望の職業に就けた場合はいいですが、そのまま辞めていく人も多くいます。私も高校卒業の節目に地下アイドルを辞めようと決めましたが、再びあっという間に大学卒業の年になりました。そういえば周囲のアイドルでも長期間、活動を続けている人は、生活が安定している人が多いなあと最近よく思います。

 イベントまで足を運んでくださる熱心なアイドルファンの方々は、そのことによく気づいているようです。学生のアイドルを応援している方は年度末になると、そわそわしているのを見かけます。私もここ数か月ファンの方から、なんとなくそわそわした雰囲気をよく感じるのです。

 まだ来年度からの自分がどうなるかわかりません。しかし、本来なら自分とは何かを考える年齢を、地下アイドルとは何かを考える期間に充ててしまったため、地下アイドルは自分から切り離せないテーマになっています。このまま永遠に猶予期間を過ごすのは怖いですが、次は苦痛が原因ではない、最高のアイドルからの卒業を考えたいと思います。

■姫乃たま
1993年2月12日下北沢生まれ。日本の地下アイドル。2009年より都内でライブをする傍ら、ライターとしても活動を開始。イベントの主催や、司会、モデルとしても活躍している。全曲ボーカルで参加した宅録ユニットFriendlySpoonの『フレスプのファーストアルバム』絶賛発売中。
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