宇野維正のチャート一刀両断!

竹内まりやのアルバム大記録達成と、2010年代のタイアップ考

参考:2014年09月08日~2014年09月14日のCDアルバム週間ランキング(2014年09月22日付)(ORICON STYLE)

 竹内まりや、史上初の4つのディケイド(80年代、90年代、00年代、10年代)におけるオリジナルアルバムでの1位獲得。えー、普段はこういうチャート絡みの「史上初」とか「連続1位」とかの、ものは言いよう的なニュースの見出しにはツッコミを入れることが多いのですが、これは掛け値なしの大快挙。「女性で」とか「ソロで」とか、そういう前置きなしの文字通りの「史上初」ですからね。「え? サザンオールスターズは?」とか「夫の山下達郎は?」とか思う人もいるかもしれませんが、サザンは70年代には1位をとってないし10年代にはまだアルバムを出してない(現在制作中のアルバムでおそらくこの記録に並ぶでしょう)、山下達郎は00年代唯一のオリジナルアルバム『SONORITE』が2位止まりと、確かに他には誰もいないんですよね。ちなみにビルボードのアルバムチャートでもちょっと考えてみたのですが、やっぱり思いつかない。プリンスもマドンナも長らく1位を獲れなかった時代がありますからね。オフコース→小田和正、ジャクソン5→マイケル・ジャクソンみたいなバンド/グループとソロを合体した記録では他にもいるにはいるんですが。

 本人稼働のプロモーションはラジオと雑誌が中心にもかかわらず、やすやすと初週に約12万枚売ってしまう相変わらずの絶大なるブランド力。アルバムタイトルの『TRAD』はいわゆるトラッドミュージックのことではなく、「時代や流行に流されない普遍的な音楽」という意味だそうですが、自分自身の音楽のことを堂々と「TRAD」と呼べてしまうのも、竹内まりやならではとしか言いようがありません。もっとも、収録曲15曲のすべてが何かのタイアップか、他のアーティストへの提供曲。「内なる魂の叫びを音楽に」みたいなところから最も遠いところで長年音楽を作ってきたのは夫の山下達郎同様ですが、こうしたタイアップ集的な作品を(それこそ)トラディショナルな意味での「オリジナルアルバム」と呼んでいいかどうかについては一考の余地があるでしょう。

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