嵐・二宮和也の歌詞はなぜ女性目線? ソロ曲から恋愛観を読み解く

 一方、「虹」と同じく女性目線で書かれた「Gimmick Game」(2008年『Dream "A" live』収録)は、男女の浮気をテーマにしており、次のような痛烈なフレーズが散りばめられている。

どうしてだろう/あなたの指が/ワタシだけには/汚く見えてるの
だからお願い/そのキタナイ指で/私のカラダそんなに/なでないで

 相手を「キタナイ」と非難するフレーズもさることながら、同曲が衝撃的なのは、ラストの方で主人公もまた浮気をしていることが発覚することだ。男女の騙し合いを辛辣な言葉で表現していることからは、二宮の潔癖な一面が伺える。

 一際ユニークな恋愛ソングは、2010年のアルバム『僕の見ている風景』に収録された「1992*4##111」であろう。同曲は、恋人へのメッセージを暗号にして伝えるという内容で、最後までその暗号の意味が明かされないことから、想像力をかき立てられる一曲となっている。

もし…例えばの話/そんなガラじゃないけど
僕の人生最後の言葉は/笑って言う“1992*4##111(コレ)”なんだ

 このように暗号を使うのは、あえて女性目線で作詞するのと同様、二宮自身にある種の“照れ”があるからかもしれない。けれども歌詞全体をじっくり味わうと、恋愛とは二人だけの共通体験を重ねることだ……という含意を読み取ることもできる。

 「虹」や「それはやっぱり君でした」で理想的に語られるように、ストレートに好意を伝え合うような関係性を望みながらも、作詞家としての二宮はあえて間接的で、遠回りするかのような表現方法を取っている。彼の歌詞は実体験を元にしたものではないとされるが、その凝ったフレーズの向こう側には、ひとりの青年の純朴で一途な恋愛観が見え隠れしている、と言えるのではないだろうか。

(文=松下博夫)

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