柴那典「フェス文化論」第6回
ミュージシャン主催型フェスの先駆け NANO-MUGEN FES.2014徹底レポート
ASIAN KUNG-FU GENERATIONが主催するロックフェス「NANO-MUGEN FES. 2014」が、7月12日(土)・13日(日)、横浜アリーナにて開催された。
今年で11回目を迎えたNANO-MUGEN FES.には、ストレイテナーやthe HIATUSなどフェス常連の「盟友」とも言えるバンド、元ウィーザーのマット・シャープ率いるTHE RENTALSやOWL CITYなどの海外アーティスト、ユニコーンや東京スカパラダイスオーケストラなどキャリアあるバンドからフレッシュな新人まで、2日間で計16組が出演。当日までタイムテーブルが明かされない独特のスタイルながら、オーディエンスの盛り上がりが絶え間なく続く2日間となった。
アジカンのデビュー前から企画され、現在と同じく横浜アリーナで開催されるようになってからも7回目を迎えるNANO-MUGEN FES.。ここ数年で増えてきているいわゆる「ミュージシャン主催型のフェス」の中でも先駆け的な存在だ。そして、アジカンの後藤正文は、フェスを主催することでキュレーターとしての役割も果たす、いわば「メディア人」としての才能を持ったミュージシャンの代表格。NANO-MUGEN FES.は、バンドの音楽活動にとっても大きな意味を持つものになってきている。
では、今年のNANO-MUGEN FES.は、バンドにとって、そして今の日本のロックシーンにとって、どんな象徴となっているのか? フェスの光景から見えてきたことを分析していこう。
ポイントは二つある。一つ目は「アジカン・チルドレン」と言うべき下の世代のバンドやアーティストが頭角を現し、世代を継承しつつあること。代表格は一日目のトップバッターに登場したKANA-BOONだ。いまや現ロックシーンで最も勢いのある若手バンドと言える彼らは、アジカンに憧れてバンドを結成し、「キューン20イヤーズオーディション」の優勝を経て2012年にアジカンのオープニングアクトを務めたことから頭角を現した経歴の持ち主。初の同フェス出演となった今回も「ないものねだり」や「フルドライブ」など代表曲を連発してフロアを沸かせていた。そして、KANA-BOONを目当てに集まったような若い世代のファンにとって、このNANO-MUGEN FES.は海外アーティストのライヴに触れる貴重な機会になったはずだ。
また、後藤正文が運営するレーベル「only in dreams」に所属し、最新アルバム『回転体』では後藤がプロデューサーをつとめているthe chef cooks meも、世代は近いが「アジカン・チルドレン」と言えるバンド。彼らも「ハローアンセム」など祝祭感あふれるポップナンバーを連発し、熱くエモーショナルなパフォーマンスで沢山のオーディエンスの心を掴んでいた。
他にも、今年から新設されたKen’s CAFE「Sunday in Brooklyn」のステージには、アジカンのベーシスト山田貴洋が楽曲プロデュースを手掛けた気鋭の女性シンガーソングライター片平里菜が登場。レーベル「only in dreams」所属の岩崎愛、後藤正文のソロツアーにサポートとして参加していたYeYeなど、出演陣に世代を超えた「ファミリー感」のようなものが生まれているのは大きな特色と言っていいだろう。