柴那典「フェス文化論」第6回
ミュージシャン主催型フェスの先駆け NANO-MUGEN FES.2014徹底レポート
そしてもう一つのポイントは、洋楽アクトの盛況だ。特筆すべきは、THE RENTALS、そしてUK出身のエレクトロニック・デュオTHE YOUNG PUNXのステージ。どちらもくるりやユニコーンなど邦楽の人気バンドの出演時と同じくアリーナをきっちりと埋め、オーディエンスの熱狂を生み出していた。
これまで、NANO-MUGEN FES.に限らず邦楽主体のロックフェスに海外アーティストが出演した際には、ファン層の違いから苦戦を強いられるような状況が数多くあった。NANO-MUGEN FES.でも、2005年にASHが登場した際にはアウェーの雰囲気が色濃くあった。しかし今年のTHE RENTALSやTHE YOUNG PUNXは、むしろホーム感ある盛り上がり。どちらも2006年から同フェスにたびたび出演してきたアーティストであり、継続してフェスを行ってきたからこその成果と言えるだろう。
そして二日間のヘッドライナーとして出演したのはホスト役でもあるASIAN KUNG-FU GENERATION。二日目のステージのMCにて、後藤正文は「いろんな価値観がわかれちゃって、モーゼみたいになってた」と、フェスを立ち上げた頃の状況を振り返っていた。そして「溝を埋めようと思って続けた」「毎年、空気がよくなってきてる」と、開催し続けてきた中で得た手応えを語っていた。
アンコールでは、アジカンの4人に加えてTHE RENTALSのマット・シャープにサポートを務めていたASHのティム・ウィーラーが登場し、ウィーザーの名曲「Say It Ain't So」をカバー。さらに、ラストは東京スカパラダイスオーケストラの面々をゲストに迎え入れ「迷子犬と雨のビート」を披露。スペシャルな共演で二日間を締めくくった。
こうして、今年のNANO-MUGENが見せたのは、アジカンを中心に広がる世代も国境も超えた音楽好き達による「繋がり」の結実だった。そのことが、他に例のない幸福なフェス空間を生んでいたのだ。
■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」/Twitter