福島出身の21歳・片平里菜が目指す女性シンガー像「アヴリルのように芯が強い女性に憧れる」

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現在は東京を拠点に活動をしている。

――いずれプロになろうという意識があった、ということですね。

片平:はい。ただ、そう決めてからオリジナル曲を作り始めるまではけっこう時間がかかりました。当時も自分を表現したいっていう欲求は根っこにあったけど、とりあえず歌いたいっていう欲求の方が強かったので、曲を作るまで考えがいかなかったんですね。そうして、オーディションを受けたり、歌の勉強をしているうちに、周りの人から曲作りとかライブをすることを勧められて、家にあったギターを取り出して曲を作り始めました。高校3年生、震災の少し前から始めた感じですね。

――その翌年には『閃光ライオット』のファイナルステージに出場して、デビューまでトントンと行った感じですね。でも、デビュー後も地元の福島を拠点としていました。

片平:今は東京に引っ越してきました。でも、住むところはどこでもいいなと思っていて、震災以降に地元の良さも悪さも改めて知ったし、私は地元が好きなんだなっていうこともやっとわかった。そこで無理して急いで東京に出ることもないなって思って、それが長く地元に留まるきっかけになりました。

――里菜さんにとって福島とは。

片平:広大な土地なので、小さい頃は山や公園をかけまわって過ごしていました。人々も温かくて、良い意味で世話焼きです。おじさんやおばさんに道で会ったりすれば、「これ食べな。あれ食べな」って、食べ物を差し出してくれたり。そういうところが良いなって思うんですけど、逆にその優しさに浸かりすぎちゃうと、自分がダメになってしまうっていう気もしました。つい甘えてしまうんですよね。地元の音楽シーンとかも、仲間内で満足しちゃうというか、東京と比べると競争心が全然違う。だから東京と福島と行ったり来たりしていたのが、私の場合はバランスが良かったんです。

――福島のルーツがありながら、どんな場所でも通じるポピュラリティを持っているのが、里菜さんの音楽の面白いところだと思います。

片平:リリースイベントで九州から北海道まで回るんですけど、こんな遠くまで自分の歌が浸透しているんだっていうことにはいつもびっくりします。自分が知られていることに対するプレッシャーももちろんあるんですけど、いろんな地方にしっかり根付いているっていうことは励みにもなります。

――両A面となっている「あなた」は、ラブソングにも聴こえるし、家族への歌にも聴こえます。これはどんなきっかけで作った曲でしょう。

片平:これは震災からちょっと経ってから作った曲なんですが、あの時、たくさんの人が失ってからでなければ気づけない、儚さだったり人間らしさを実感したと思います。私自身も改めて自分にとって本当に大事なものってなんだろうとか考えて、実はそんなにいっぱいあるわけではないことに気づかされて、それについて考えさせられた時期だったんですね。震災直後で、いろんなことが混沌としていたので、ひとつのことに焦点をしぼれなかったというか。だからこそ、恋人とかだけではないし、家族や親とかだけでもない、誰にでも当てはまる曲を作りたいと思ったんです。だけどひとりひとり、自分自身が大事にしている人がちゃんと思い浮かんでくる、そういう曲にしたかったですね。

――それが「あなた」という言葉になっていると。震災の経験は、里菜さんの音楽にどんな影響を与えましたか。

片平:なんのために音楽と向き合うのか、その根本は昔から全然変わってなかったんですけど、震災が起こってから物事がより明白になった感じがしました。いろんなことが浮き彫りになっちゃったじゃないですか、良い意味でも悪い意味でも。その一方、アーティストとしてはいろんなことがクリアになっているから、表現がしやすくなった部分もあるかもしれません。

――今後、どのようなアーティストを目指したいという目標はありますか。

片平:私はもともと内向的な性格で、うまく周りにとけ込めず、苦しみから音楽にのめり込んでいった面がありました。でも、音楽を通して救われたので、自分も音楽を通して誰かを救いたいなっていう思いは、中学校3年の頃から変わらずにあります。だから、自分の表現したいことをずっと表現し続けて、それでかつての自分のような人を勇気づけることができるようなアーティストになりたいですね。
(取材・文=編集部/写真=若原瑞昌(D-CORD))

■リリース情報
『Oh JANE / あなた』
発売:4月30日
価格:¥1,200+税
【初回封入特典】(初回プレスのみ)弾き語りコード譜
【予約購入特典】片平里菜 “片思いのCD”

〈収録曲〉
1. Oh JANE
2. あなた
3. 小石は蹴飛ばして
4. あの場所で偶然

片平里菜オフィシャルサイト

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