青木優が8年ぶりの日本公演をレポート

ストーンズは“ロックの果て”まで来た――東京公演を期に振り返るバンドの功績

初来日から24年、ローリング・ストーンズの東京ドーム公演。写真:(C)Mikio Ariga

 

 最高! という言葉しかなかった。ローリング・ストーンズの東京ドーム公演。今回、僕は全3夜のうち、初日と最終日の2回を観に行ったのだが、すべてひっくるめて、最高のロックンロール・ショーだった。

 日替わりのセットリスト(とくに、オープニング曲は毎回変更された)、ファンからのリクエスト、「無情の世界」での日本のコーラス隊の参加。さらに、ミック・ジャガーは日本語MCを連発と、サービス満点。披露される曲はもちろんストーンズ・クラシック、いや、ロック・クラシックばかりで、ことに60年代後期の『レット・イット・ブリード』に代表される名アルバムからの曲に宿る魔力というか妖気のようなものには、今回も激しい緊迫感を覚えた。そして、熱狂のロックンロール・ナンバーの数々。こうした世界を今なおストーンズが表現しきるエネルギーをキープしていて、それを生で体感できただけでも、観に行った価値はあった。

 また、最終日のリクエスト曲「リスペクタブル」ではバンド側の声かけで、布袋寅泰が参加。彼がストーンズからの誘いを受けた時の感動を綴ったブログ(参考:THE ROLLING STONESからの招待状)も、思わずジーンとくる内容である。

The Rolling Stones - 14 ON FIRE - First night back at the Tokyo Dome!(東京初日)
The Rolling Stones - 14 ON FIRE - Second show at the Tokyo Dome(東京2日目)

 ただ、わかっていたことではあったが、客席に若いファンの姿は本当に少なかった。そんなのは超々ベテラン・バンドだから当然だし、ゴールデンサークル席(ステージ中央からの花道のそば)の8万円はともかく、ドームのS席が1万8千円という高価格では仕方がないとも思う。すでに報じられているように、会場には日本のミュージシャンたちも多数来ていたようだが、彼らも大人といっていい世代が中心。客層の主流は明らかに40代以上で、若い子といえば、親と一緒に来た小学生や高校生を見かけた程度だった。

 そんな会場を歩いていて思い出したのは、数年前に売っていた「ストーンズバー」というアルコール飲料のことだ。これはサントリーが権利を取得して発売したものだが、記憶に残っているのは商品自体よりもテレビCMである。一昨年の後半に何度もオンエアされたこのCMには、マスター役のCharを筆頭に、仲井戸麗市、JUN SKY WALKER(S)の寺岡呼人、ザ・コレクターズの加藤ひさしと古市コータロー、SCOOBIE DOのオカモト"MOBY"タクヤ、THE BACK HORNの松田晋二、SPECIAL OTHERS、ザ50回転ズ、モーモールルギャバン、在日ファンク、黒猫チェルシー、OKAMOTO'Sなどなど、ストーンズ大好きなミュージシャンたちが大挙出演。ディレクターは箭内道彦氏である。もっとも、この商品は若年層にアピールできなかったことを理由に、程なくして発売が中止になるというオチがついている(参考:サントリー「ストーンズバー」販売終了へ 若者に浸透せず…売り上げ目標半分)。というか、CMの出演者自体、若者率が高くなかったわけだが。

 この2月の最終週には、ストーンズ公演の主催のひとつであるフジテレビが、短時間のスペシャル番組を連日深夜にOA。ここでストーンズの魅力について話したのは、奥田民生×吉井和哉×山崎まさよし、The Birthdayのチバユウスケ×THE BAWDIESのROY、ミッキー・カーチス×ムッシュかまやつ……などの顔ぶれ。やはり圧倒的に大人なのだ。

 今の若い世代に、もはやストーンズはリアルではない。それはそうだろう。だけど、ポップ・ミュージック史上の重要なバンドであることは間違いない。今回はストーンズの歩みを反芻しながら、彼らが、とくにこの日本の音楽をはじめとした分野にどんな影響をもたらしてきたのかを考察してみようと思う。

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