石川さゆり&椎名林檎で改めて注目 演歌とポップミュージックのコラボ史

 また、同書では2000年代に入ってから「昭和歌謡」という新語が現れたことも指摘。これは「昭和の時代に存在した歌謡曲を指すのではなく、何らかの仕方で「昭和」を感じさせる音楽スタイルを持った、新たな若い音楽家の音楽を指す語として用いられている」として、その代表格に椎名林檎の名を挙げている。音楽的特徴においては「過去の日本の音楽スタイルを直接的なモデルとするものはむしろ少数で、概してスウィング・ジャズやラテン、ボサノバ、ソウルの影響を受けた『非ロック的』あるいは『前ロック的』な外来の音楽要素を用い、日本語で歌うスタイル」と目している。しかし現在では、椎名林檎は数多くのジャンルのミュージシャンとコラボレーションを果たし、独自の地位を築き上げている。2013年に、「熱愛発覚中」という楽曲で中田ヤスタカとコラボレーションを果たしたことは記憶に新しい。

 石川さゆりもまた、演歌歌手でありながら、近年は奥田民生やTHE BOOMなどとコラボレーションを行うなどして、長年かけて生まれたポップミュジックの一スタイルである演歌に、新たな風を吹かせてきた。今回、幅広い音楽性を持つ椎名林檎とタッグを組むことにより、演歌界にまたひとつ、新たな可能性を提示しそうだ。
(文=松下博夫)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる