『アイドル楽曲ディスクガイド』出版イベントレポート
ザ・ピーナッツからBABYMETALまで……11人の論者がアイドル楽曲の43年史を語る
フクタケ「ブルーオーシャンはミュージカルや舞台」
●2010年代初頭(ももいろクローバー、東京女子流、9nine、乃木坂46、でんぱ組.inc、BABYMETAL、BiS、アップアップガールズ(仮)、天野春子「あまちゃん」etc)
ピロスエ:他の時代に較べて多様性がありますね。
宗像:「潮騒のメモリー」は2013年を意識した80年代オマージュとしてよくできている。
フクタケ:ロコドルやアジアといった中心じゃないところから、いいものが生まれている。その一方で、中央が空いていてドーナツ化現象が起きている。
岡島:地方にいてもいい作品が作れる環境が整った。ロコドルでもアジアでも場所に関係なく、いいものが出てくる。
坂本:それと引き換えに音楽が安く作られているという問題もある。売れるもの程、多様性がなくなっている。
宗像:今は現場が多い。スケジュールカレンダーを見ないと、自分の好きなアイドル以外の動向がわからなくなっている。
●全体 まとめ
坂本:楽曲が流行りものの形態に規定されているのを感じる。カラオケや着メロの影響によって楽曲の作り方が変わってくる。
栗原:カラオケ以降、コミュニケーションツールとしての役割が強くなっている。
岩切:お金がないとできることとできないことがある。昔の歌謡曲やアイドル楽曲のレコーディングはお金があるからできたことがたくさんあった。それは大きい。
宗像:ずっと見ているとアミューズの大里会長は怖い。そのアミューズがソロアイドルの武藤彩未を売り出しているということはグループからソロへというゆり戻しの流れが来くる兆候かもしれない。
フクタケ:ブルーオーシャンはミュージカルや舞台。新生TPDや乃木坂46がやっているけど、その流れができてくれればと思う。
岡島:BABYMETALがビルボードのチャートに入ったけど、接触なしでも、他と差別化されたコンセプトを固めてコンテンツがしっかりしていてライブが楽しければ受け入れられる。AKB、ももクロがブレイクして、ハロプロに勢いが戻りつつあり、BABYMETALらも後に続いている。要はアイドルの市場がそれだけ拡大し、安定し始めたということ。今後も握手会は安価で始められるので基本として進んでいくのだろうが、楽曲のバリエーションは、これからも増えていくと思う。さっきの多様性の話と繋がるけれど、CDの売り上げ自体の落ち込みが進む中では、チャートの上位曲だけを見ていてもアイドル楽曲全体のシーンは把握して行けなくなる。ライブアイドルはCDの売り上げだけでなく、ほとんどはチェキや握手を含む物販で回しているから。ビジネスとして最低でも数年は回っていたり、数百人規模のワンマンができるグループであるなら、無視はできないはず。そうしたグループが無数に出現して行けば、単に個人で「アイドル楽曲シーン全体を把握すること」が難しくなるだけで多様性は進んで行くし、もう既にその流れは始まっている。
フクタケ:運営の母体の基礎体力が重要になってきている。育成も含めて時間をかけられるところが残っていく。ロコドルは、やっている方の情熱で回っている側面もあるけど、ビジネスにならないという所は引いてきている。
宗像:不景気だけど、アイドルのマーケットは金を使うので、なんでも有りの盛り上がりがある。ただ、チャートに見えているのは上澄みの部分で、ライブの方はもっとグチャグチャなことになっている。アングラで揉め事が起きているのを見ていると、バンドブームの末期に似ている。とはいえ、バンドブームの時よりはマーケットが固まって広まっている。この本が出るのもその証明で、そこまで悲観的になる必要はないと思う。
ピロスエ:まとめとしては、「俺達の戦いはまだまだはじまったばかりだ!」ってことで。個々のヲタ活をがんばってきましょう。
(取材・文=成馬零一)
■書籍詳細情報
ピロスエ・編『アイドル楽曲ディスクガイド Idol Music Disc Guide 1971-2013』
発売日:2014年2月27日
発行・発売:株式会社アスペクト
判型:A5判(オールカラー256ページ)
定価:2500円+税