『アイドル楽曲ディスクガイド』出版イベントレポート
ザ・ピーナッツからBABYMETALまで……11人の論者がアイドル楽曲の43年史を語る
岡島「おニャン子がいろんなものを壊した」
●80年代前半(松田聖子、松本伊代、伊藤つかさ、薬師丸ひろ子、原田知世、岡田有希子、中森明菜、小泉今日子 etc)
栗原:前年の79年は暗黒の時代だった。誰一人残ってない。
岩切:中森明菜は山口百恵のフォロワー。
栗原:レコード業界は百恵的なものを売り出したかったが、松田聖子の登場で空気がガラッと変わった。
さやわか:今まで百恵的なものだったアイドルが聖子のぶりっ子的なものに傾いた。
栗原:薬師丸ひろ子や原田知世は角川映画の女優。
岩切:だから角川の雑誌「バラエティ」が独占していた。
栗原:角川春樹は映画とテレビと全部使って、本を売ろうとしていた。メディアミックスの走り。しかし、角川映画にとって、アイドルは副産物だったのではないかと思う。
さやわか:小泉今日子の「なんてったってアイドル」(作詞:秋元康)でアイドルがメタ化。そして、おニャン子クラブで素人化。この二つがこの時期に同時進行している。
●80年代後半(オールナイターズ、おニャン子クラブ、斉藤由貴、南野陽子、浅香唯、中山美穂、森高千里etc)
栗原:おニャン子で「もう、いいや」と思った。今までのアイドルは親衛隊文化(ヤンキー)だった。おニャン子以降、ファン層がヤンキー的なものからオタク的なものになっていった。
岡島:おニャン子がいろんなものを壊した。おニャン子から入った人と離れた人がいる。
さやわか:うしろゆびさされ組はアニメ『ハイスクール!奇面組』とのタイアップ。『スケバン刑事』(斉藤由貴、南野陽子、浅香唯)、『ママはアイドル』(中山美穂)などテレビ番組主導になっていて、アニソンやテレビドラマの番組タイアップが増えていく。
ピロスエ:南野陽子は、今の楽曲派の人たちにも評価されそうな感じがありますね。
栗原:森高千里の「17才」(南紗織のカバー)で歴史が一巡する。ただ、当時はアイドルとは思っていなかった。
岩切:森高は系譜としては太田裕美に近い。
栗原:Winkや森高千里は現代アートみたい。昭和の終わりで時代の変わり目。小泉今日子以降、アイドルがメタ化して、ベタなアイドルは成立しない。80年代後半はメタアイドルの時代。
岩切:音楽史的には作家がそろった時期。ロック系の人が増えた。おニャン子にはライダーズ系が入っている。楽曲的には豊かで小室哲哉も出てくる。みんな面白いことをやろうとしていた時代で、お金もあった。
●第一部 まとめ
岩切:アイドルポップスはなんでもあり。80年代までは、日本の景気と並走している。
さやわか:その後、経済とエンタメは反比例していき、社会の動きとシンクロしなくなっていく。これ以降、音楽産業はバブルを迎えることになる。