星野源が俳優賞受賞 なぜ彼は多ジャンルで才能を発揮できるのか

 そして星野の才能はそれだけにとどまらない。自身が主宰する映像制作ユニット「山田一郎」が制作したSAKEROCKのMVは、SPACE SHOWER Music Awardsでベストコンセプチュアルビデオ賞を受賞。アニメ映画『聖☆おにいさん』では主人公の声を担当し、声優に初挑戦。また自身の著書も2作品発表しており、数々の雑誌で連載を抱える文筆家でもある。とにかく様々な活動で、自身の個性を発揮し続ける希有な表現者なのだ。

 映画監督であり、演出家の大根仁は自身のブログで星野について「役者をやりながら音楽をやる人は、そりゃたくさんいる。マルチな才能を使い分けて様々な表現をする人は、そりゃたくさんいる。個人的にも何人か知っている。が、星野君の表現スタイルはどう考えてもニュータイプだと思うのだ。(中略)バランスが良いとかそういうことではなく、音楽的才能と役者的才能が生まれつき同じ分量で備わっている」と語っており、さらに「これは世代的なことが大きいのだけれど、変な自己主張やがっつきが無いこと。『俺、なんでもやれちゃうもんねえカッコ良いだろう』という邪気がまったくない。実にサラリと冷静にふるまいながら、廻りの状況を判断し、それでいて表現は『HOT』という理想的な表現者であるのだ。(中略)それでいて、ココロの根っこの部分にはドロドロとしたマグマが煮えたぎっている」と、星野が多方面で活躍できる理由について解析している。それは星野の音楽作品についても全く言えることで、とても優秀なポップスでありながら、淡々としたなかに描かれる歌詞の世界はただのポップスというにはあまりに生々しい。星野の成功はそんな確かな作家性と情熱に加え、大根氏が云うところの星野の各々の活動における“フラットさ”が、今の時代性にフィットした結果ともいえるのかもしれない。

 本格復帰し、2014年も幅広い活動が期待される星野源。表現者の新しい形を体現する星野は、これからも多くのファンに胸が弾む作品を届けてくれることだろう。
(文=岡野里衣子)

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