壇蜜が演技と音楽を語る「FNS歌謡祭で歌った後、私は日本で一番震えている女だった」
SMからSFへ。そんなキャッチコピーのもと、これまでSM映画に出演してきた壇蜜が、『いかレスラー』などで知られる鬼才・河崎実監督の最新作『地球防衛未亡人』で主役(ダン隊員)を演じている。本格的な特撮場面とセクシー場面が交錯する映画内容に加え、Only Love Hurts(元面影ラッキーホール)が主題歌を手がけるなど、音楽面でもディープな話題を提供する本作。先日の『FNS音楽祭』では谷村新司と妖艶なデュエットを披露して話題を呼んだ壇蜜がインタビューに応じてくれるとあって、リアルサウンドでは音楽に関する質問を忍ばせて取材場所に向かった。
――主演作『地球防衛未亡人』は、「SMからSFへ」というキャッチコピーがまずもって秀逸ですね。
壇蜜:河崎監督は、SMとSFには共通して「どこかにあってもおかしくない」というある種のリアリティを感じていらっしゃるようで、現実とフィクションの狭間を楽しんでほしいという思いから、そういうキャッチコピーを付けたそうです。ご本人は「どこに出しても恥ずかしい監督」なんて謙遜していらっしゃいますが、とても才能のある方で、私はとても尊敬できました。
――作品では、政治への風刺といった現実的側面と、妄想たくましいフィクションが織り混ざっています。
壇蜜:そうですね。どこかみんな現実を見ながらも『こうだったらいいな』っていう世界を抱いている。それで妄想が膨らんで、でも現実って糸はちゃんとあるというイメージですね。だからどっちに転んでも楽しければいいんじゃないかなって。ただ、河崎監督のファンはきっと作品に対する思い入れが深い人が多いと思うので、その世界と、壇蜜っていう色物のブランドが対立しないようには気をつけました。
――特撮パートなどフィクションの部分を演じるのは、どんな体験でしたか。
壇蜜:地球防衛はやっぱりSMの世界より荷が重かったと思います(笑)。でも、正義の味方と怪獣がいて、世界を守るために戦うっていうわかりやすい世界だったので、ある意味では没頭できたと思います。私は女優業とか役者業には、自分でも向いていないと思っていて、役柄と自分にある程度の共通点が見いだせないと演じることができません。私はわかりやすいものが好きなので、そういった意味でもやりやすかったです。
――自身を投影しながら、フィクションの世界に入っていく。
壇蜜:そうですね。私はO型で、正義感が強いなんてよく言われてきて、そんなのはジンクスだって思っていたんですけど、意外とそういう一面もあるんだなって思いました(笑)。やっぱりどこかに怒りを感じてきたというか、腑に落ちない経験に会ってきたことが生きたのかもしれないですね。無理なお願いをされて、『無理です』って言いきれなかった自分の弱さであるとか、自分らしさを貫く力がなかったこととか、前の仕事で上司とぶつかってしまったこととか……。どうしても忘れられない、悔しい出来事を何回も体験していますから。落としどころがちゃんと見いだせなかった自分の弱さをなんとかしたいと思っていたときに、こういう役に出会えたので、その思いが強く投影されていると思います。
――演技をすることについては?
壇蜜:向いていない、の一言に尽きると思うんですよ。自分でそう思っていますから。ただ、幸か不幸か恥知らずな面があるので、恥ずかしくないっていうのはなんとなく武器になっている気がします。思い切ってヌードもやったし。ドラマだったり映画だったりっていうのは、ある意味すべて思い切りなんだろうなっていう部分もありますから。だから、向いてはいないけれど、度胸という面においては、自信を持って出せるんじゃないかなって思います。度胸と実力が兼ね備えられれば、もっといいんですけどね。