レディー・ガガは大成功した今も、なぜ奇抜な格好をし続けるのか?

 ファンの呼称からもそのことが伺える。ガガは自分自身を「マザー・モンスター」、ファンを「リトル・モンスター」と呼んでいる。「モンスター」という言葉からは、人間社会に馴染めない「怪物」という意味を読み取ることもできる。日本に限らず、世界中に、周囲にあわせることができずに辛い思いを抱えている人は多いはずだ。でも、ガガほど突き抜けて奇抜になってしまえば、それは逆にエンターテイメントになる。勇気づけられる。ガガの奇抜なファッションを見て思わず笑ってしまう、というのも実は重要だ。実はガガは「笑えるほど格好いい」という意味で、いわゆるロックスターの条件も兼ね備えているのである。

 昨年5月の来日公演では、ガガは最後のMCで「私を愛するためにじゃなくて、自分自身を愛するためにショウに来てほしいの。それが、私にとって世界を変えるということ。いつか落ち込んだ時、どうしようもなくなった時に、思い出してほしい。私はやり遂げたって!」――と語り、ステージを去っていった。それはとても感動的な光景だった。

 そして、新作『ARTPOP』の内容も、『Born This Way』から地続きのものになっている。日本盤の特典DVDに収録されたインタヴューで、ガガはこう語っている。

「『ARTPOP』では、『Born This Way』の勝利を祝いたかったの。『Born This Way』が深く密接にファンに届いたことは、私にとって勝利だった。だから今度は、みんなが踊り、『Born This Way』で流した涙をふき取り、紙ふぶきを撒いて、キスして、お互いを称え合うことができるようなアルバムを作ったの」

 新作はガガの言う通り、ハイテンションで開放感ある方向性の一枚。特にアルバム後半の「Gypsy」から「Applause」は迫力満点の流れになっている。現代アートの重要人物ジェフ・クーンズの手掛けたアートワークや、アンディ・ウォーホルの「ポップアート」を踏まえてそれを逆転させたコンセプトも話題を集めているが、とはいえ、小難しいことを考えなくとも楽しめるアルバムになっている。それにしても、やはり驚くのはこれが3枚目、27歳の作品である、ということ。

 やはり、レディー・ガガは21世紀のもっとも刺激的なアーティストだと思う。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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