『おかえりモネ』藤竜也の龍己がとにかく格好いい いぶし銀の存在感でドラマ支える

藤竜也、『おかえりモネ』を支える存在感

 『おかえりモネ』(NHK総合)のヒロイン、百音(清原果耶)は震災のときに島を離れて何も出来なかった無力感に苛まれ、「島を離れたい」と自分を追い詰めるほどの後ろめたさを感じていた。

 そして、祖父・龍己(藤竜也)の昔からの知り合いであるサヤカ(夏木マリ)を頼って百音は登米の森林組合に就職。登米で仕事をしているときに気象予報士の朝岡(西島秀俊)と出会い、気象予報士は未来を予測できる仕事だと知り、気象予報の世界へと進み始める。東京にある気象情報会社に就職するため、今度は登米を離れると、再び祖父・龍己のつてを頼って築地にある古い銭湯「汐見湯」をリノベーションしたシェアハウスに下宿した。

 こうやって振り返ると、祖父の龍己は迷える百音を陰でずっと導く存在だということに気づく。純粋すぎるゆえ、ある意味無計画で行動する百音は、住む場所も仕事も用意せず心のまま動いてしまう。そんな百音の幼さや見通しの甘さを責めることもなく、大人の包容力で守ってくれる龍己を演じる藤竜也が、とにかく格好いいのだ。

 第19週「島へ」では、竜巻の被害で龍己のカキ棚に大きな被害が出て、実家も窓ガラスが割れるなどしたため、百音は橋を渡って帰ってきた。そんな百音の心配をよそに家族だけでなく、島の人たちが集まってカキ棚の修復作業や家の片付けをしてくれていた。龍己は、鍛えられた海の男で働き者とはいえ、年齢のせいか時々よろけ、自分でも「俺はまぁ、それなりに弱ってるよ。年取ってっからさ」と冗談半分に言う。

 百音が「カキ棚がだいぶ壊れてた」と心配すると、「大したことねぇ」と繰り返す龍己。「あん時に比べたら本当に大したことねぇ」と震災のつらい経験を乗り越えた力強い笑顔を見せる。作業をする家族も島の人たちも悲壮感はなく、明るい。強がりを言っているようには見えない自然な様子に、「強いね」と百音がつぶやくと、「強いんじゃねえんだよ。何つうかな……しぶといんだな」と言うのだが、彼が発する“しぶとい”の意味を考えずにはいられない。困難にあっても簡単に諦めず、へこたれない。意気消沈することなく、前向きに黙々と作業をする龍己のような人の言葉には説得力がある。

 過去に、山と海がつながっていることを幼い百音と未知(蒔田彩珠)に教えたのも龍己だ。百音は7歳のとき、妹の未知とともに龍己に連れられて登米を訪れ、苗木を植えた。「その山の葉っぱさんたちが海の栄養になんのさ。山は海とつながってるんだ。何も関係ねぇように見えるもんが、何かの役に立つっていうことは、世の中にいっぺぇあるんだよ」と幼い姉妹に伝えていた。

 また、登米の森林組合で百音が働いていたときにも、帰省した百音に昔の船乗りはみんな木に詳しかったと龍己は話してきかせた。かつては船も漁具も木製で、漁師はいい木を持っている山主を大事にしてきたという。何かあると疎外感から自分の無力さを感じてしまう百音だが、何気ない会話からも広い視野を持つよう、龍己は自分の経験から伝えてくれているのだ。

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