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『THIS IS US 36歳、これから』が熱狂を呼んだ理由 全米大ヒットの背景を読み解く

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 実は、『THIS IS US 36歳、これから』の主要エピソードの脚本と監督は、その『ラブ・アゲイン』とまったく同じ組み合わせである。「笑い」と「泣き」のバランスは二つの作品で異なるものの(『ラブ・アゲイン』は「笑い」に、『THIS IS US 36歳、これから』は「泣き」に重点がある)、群像劇の中ですべての主要キャラクターに活き活きとしたリアリティを吹き込む、その手際の見事さは共通している。ピクサー&ディズニー仕込みの精巧なストーリーテリングと卓越した演出力。テーマはシンプルだが、異なる時間軸や地理的距離のある登場人物たちが平行して描かれる、重層的な物語の構造を持つ『THIS IS US 36歳、これから』は、現在のアメリカのエンターテインメント界における最前線、最高峰の叡智が注ぎ込まれた作品なのだ。

 映画との関連性において、もう一つ、興味深い指摘をしておきたい。『THIS IS US 36歳、これから』で描かれる親世代、子世代の家族が体現しているのは、ジェンダーにおいても、人種においても、アメリカの西海岸及び東海岸で生活する人々に典型的なリベラル的価値観と言っていいだろう。ドナルド・トランプが大統領に就任して以降、映画界では『スリー・ビルボード』、『ローガン・ラッキー』などを筆頭に、アメリカの中西部(ラストベルトなどとも呼ばれている)や南部に住むブルーカラー層に焦点を当てた秀作が続いている。言うまでもなく、ハリウッドのマジョリティはリベラル層だが、だからこそ、自分たちとは異なる価値観を持つ保守層(トランプに投票した人々)をフィクションの力を借りて理解しようとする動きが目立っているのだ。

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 『THIS IS US 36歳、これから』は、いわばその逆方向からの検証だ。つまり、「トランプの時代」だからこそ、トランプ的価値観と対立している自分たちの足元をもう一度見つめ直すこと。アメリカ都市部のホワイトカラー層においてリベラル的な価値が当たり前になっていった親の世代(80年代)から現在にかけて、自分たちは何を見落としてきたのか? 何を切り捨ててきたのか? 2時間の映画ではなく、1シーズン10エピソード前後の作品が多いケーブル局やインターネット配信サービスのドラマでもなく、ネットワーク局のテレビドラマならではの週に1回というペース、1シーズン18エピソードというボリュームで、『THIS IS US 36歳、これから』はじっくりとそのことを問いかけていく。きっとそれは、時に苦々しさに満ちたものでもあるだろう。アメリカの視聴者が『THIS IS US 36歳、これから』にこれほど夢中になっているのは、まさにそこに「自分たちの姿」(≒THIS IS US)を見出しているからなのかもしれない。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「文春オンライン」「Yahoo!」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。Twitter

■放送情報
『THIS IS US 36歳、これから』(全18話)
海外ドラマ専門チャンネルAXNにて、全18話を一挙放送!
5月3日(木・祝)~6日(日)連日12:00スタート
※第1話~3話はスカパー!無料放送
詳しい視聴方法はこちらをご覧ください 

また、字幕版を日本初放送!
字幕版:5月12日(土)22:00スタート
二カ国語版:5月13日(日)23:00スタート

企画・脚本・製作総指揮:ダン・フォーゲルマン
出演:マイロ・ヴィンティミリア、マンディ・ムーア、ジャスティン・ハートリー、クリッシー・メッツ、スターリング・K・ブラウン、スーザン・ケレチ・ワトソン
(c)2016-2017 NBCUniversal Media, LLC. All rights reserved.
公式サイト:https://www.axn.co.jp/programs/this_is_us

      

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