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『クソ野郎と美しき世界』は稲垣×香取×草なぎの決意表明だ 喪失感から生まれた“愛の映画”

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 そして唯一、草なぎだけが実名とは異なる役名で登場するエピソード3『光へ、航る』。尾野真千子とともに“工藤”夫妻を演じた。監督・脚本は太田光。ラジオ番組で「頑張れよ」とメールをもらったと話していたあの人がチラつくが、きっと筆者の思い込みだろう。もともと普通のサラリーマンだった工藤オサムのキャラクターを任侠に変えたのは太田のアイデアだったという。そのオサムが「組を抜ける」という表現には、大きな組織を卒業した3人に近いものを感じる。さらに、息子の腕の居場所を探してさまよう妻の裕子が頼りにするのは母と子の本能的なつながり。小さなころから彼らを見続けてきたファンとの絆を彷彿とさせるシチュエーションだ。

 そして、エピソード1で登場した大門がニオイを嗅ぎつけ息子の腕と再会するストーリーに、形がなく限りなく不明瞭だけれど確かに存在する何か……つまり愛こそが再生の糸口であるというメッセージを感じ取れる。知らぬ間に遠く離れてしまっても、何が善意で何が悪意かわからなくなっても、きっと求め続ければ愛のある形に収まる。それは『72時間ホンネテレビ』にも駆けつけ、こうして映画監督としてもとことん彼らに付き合う太田が、そしてこの映画を見つめる多くの人が抱く一縷の望みなのではないだろうか。


 エピソード1〜3をまとめて1本の映画として成立させたエピソード4は、絶望の先に見えた小さな希望が瞬くミュージカル。慎吾は軽やかに踊り、のびやかに「新しい詩」を歌う。ゴローはフジコと仲睦まじく、野球ボールを持つ工藤の小指は継ぎ接ぎだらけでもつながっている。小指は約束を交わす指。これからもエンターテインメントの世界でファンを喜ばせていきたいという、彼らの決意表明にも見えた。アイドルという概念を更新してきた彼らにとって、この作品も映画の新しいカタチ。現実とフィクションを行き来しながら、携わった人々の生き様が息づく。人生そのものが映画になったようだ。彼らがこの映画を作った意味。クリエイターがその船出に手を貸した覚悟。“今”観るからこそ様々な味わいを醸し出すナマモノだ。2週間限定公開、迷っている暇はない。

(文=佐藤結衣)

■公開情報
『クソ野郎と美しき世界』
2週間限定全国公開中
出演:浅野忠信、満島真之介、馬場ふみか、でんでん、神楽坂恵、野崎萌香、冨手麻妙、スプツニ子!、稲垣吾郎/中島セナ、古舘寛治、香取慎吾/尾野真千子、新井浩文、健太郎、草なぎ剛/クソ野郎★ALL STARS
監督:園子温/山内ケンジ/太田光/児玉裕一
企画:多田琢、山崎隆明、権八成裕
製作・宣伝:新しい地図
制作:ギークサイト
配給協力:キノフィルムズ
(c)2018 ATARASHIICHIZU MOVIE
公式サイト:kusoyaro.net

      

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