岡本玲、『わろてんか』の中で最も“変化”したキャラクターに 楓役で見せた成長

岡本玲、『わろてんか』が代表作に

 明治後期からスタートした『わろてんか』(NHK総合)も、昭和初期に入った。華やかな着物を身に纏っていたてん(葵わかな)も、戦争の影響によって時局を考慮した質素な色の着物へ。孫の藤一郎(南岐佐)が生まれ、祖母となったてんは第2週の17歳の頃と比べると、メイクだけでなく喋り方や仕草にも老いを随所に感じさせる。

 第24週で映画の企画会議をするてん、トキ(徳永えり)、楓(岡本玲)が『忠臣蔵』に登場する“赤いしごき帯”が表す男女の恋愛について盛り上がる場面は、井戸端会議をする主婦のようでもある。今ではすっかり北村笑店の文芸部として定着した漫才作家の楓も、かつては藤吉(松坂桃李)の許嫁、てんの恋敵という立場であった。

 第4週より登場する楓は、大阪・船場の不愛想で気の強い娘。結婚に愛情は不要と啄子(鈴木京香)が決めた藤吉との結婚を受け入れるものの、てんとの出会いによって歌人になりたいという夢を追いかけ、一時は物語から離れる。てんとの嫁合戦では意地悪な言動が目立つ、藤吉相手にも笑顔を見せない自分勝手なキャラであったが、風鳥亭が寄席として成長した頃、楓は新聞記者として再登場。

 文筆の才能を買われ、文芸部部長・万丈目(藤井隆)の下で漫才を執筆していく。第25週「さらば北村笑店」では、暗い世相を笑い飛ばそうと漫才を書き続ける万丈目が倒れ、彼の仕事を楓が引き継いでいくこととなる。

 初登場の頃の、そっけなく勝気な楓の面影はなく、丸メガネにゆったりとした口調は、てんとともに年齢を重ねてきたことを物語っている。印象深いのは、第25週、142回で思い出の詰まった寄席の引っ越し作業を始めるシーン。昔の台本が入った木箱を抱え「社長、これうちが預かってもよろしいですか?」とてんに言い寄り、ぺらぺらと台本のページをめくってはニカッと笑みを見せるシーンは漫才、そして風鳥亭を愛した一人として、『わろてんか』の相関図に欠かせないピースへと成長を遂げた楓の存在を改めて感じさせる場面だ。てんを演じる葵わかなの“老けメイク”にも注目が集まっているが、本作の中でもっとも年齢による変化、キャラクターの月日の歩みを体現したのは岡本演じる楓といっても過言ではないだろう。

 楓を演じる岡本玲は、2012年放送の『純と愛』以来、2度目の朝ドラ出演となる。ヒロインの夫の妹・誠は、マスクを着けた一風変わった役柄だった。12歳でティーン向けファッション誌『ニコラ』のモデルとしてデビューした岡本は、17歳で『ニコラ』を卒業し本格的に女優の道へ。『フリーター、家を買う。』(フジテレビ系)、『最高の人生の終り方〜エンディングプランナー〜』(TBS系)など、多くのドラマ、映画、CM、バラエティーに出演する一方で、彼女は舞台でも活躍の幅を広げてきた。2014年に主演を務めた舞台『売春捜査官』は、役者として生きる覚悟を決めたターニングポイントとの作品だったという(参考:「産経WEST」より )。

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