『トドメの接吻』は過去の恋愛ドラマとどう違う? 山崎賢人を取り巻く多角関係の異質さ

恋愛ドラマと一線を画す『トドメの接吻』

 「キスなんて所詮、ただの道具だ。偽りの愛を振りまいて、俺は成り上がる」。これは『トドメの接吻』(日本テレビ系)第1話で、旺太郎(山崎賢人)がためらいなく放ったナレーション。だが第7話で「あなたの役に立つ道具になる」と伝えた宰子(門脇麦)に返したのは、「俺はお前のこと道具だなんて思ってない」というセリフ。愛を知らなかった旺太郎に、変化を見た瞬間だった。

 ドラマの初回、突然トイレから出てきて「あなた、死ぬ」と、旺太郎にキスをした宰子。「男に嫉妬した女が自分の口に毒を塗り、キスで男を殺した」ニュースというミスリードもあり、『トドメの接吻』は恋愛ドラマとはほど遠く完全なるホラードラマだった。それが、ここに至るまでに切なさまでをも詰め込んだ恋愛ドラマへと転身。とはいえ、『トドメの接吻』には、今までのラブストーリーの型に当てはまらないおもしろさがある。その異質さは、一体どこにあるのか。

山崎賢人、門脇麦/『トドメの接吻』第4話より (c)日本テレビ

 旺太郎が一貫して手に入れたいと願うのは、並樹グループの令嬢“100億の女”こと美尊(新木優子)。物語は、この美尊との結婚=巨万の富を得るために、宰子とのキスを使ってタイムリープを繰り返しながら進んでいく。

 ドラマでは、その美尊を巡る旺太郎と尊氏(新田真剣佑)、そして旺太郎を想い始めた宰子の4人の恋愛模様が描かれてきた。ホストで鍛えたモテテク、さらにはタイムリープをも駆使した旺太郎に落ちない女などいるはずもなく、初めは嫌悪感を示していた美尊も「やっと本当の愛を見つけた」と旺太郎と人生をともにすることを決意する。

 一方の宰子は、旺太郎に唇のカサカサを指摘されて以来、健気にリップクリームを塗るなど彼に恋心を抱き始めていた。第5話では、旺太郎の母親を助けるためにキスをするのだが、そのとき彼女の手は彼の背中にまわるなど、ホラー感満載だった“ハジメの接吻”とは何もかもが違っていた。だが宰子は、旺太郎が幼いときに巻き込まれた海難事故で、自分を助けたために弟を失った少年だという事実を知る。そして、旺太郎の幸せを願い自分を犠牲にする覚悟を決めるのだった。 

山崎賢人、門脇麦/『トドメの接吻』第8話より (c)日本テレビ

 一般的な恋愛ドラマの三角関係は、どちらかが“あざとい女”であることも多く、「主人公はこっちを選ぶべき」とわかりやすい。けれども、旺太郎を愛するのは、彼が財産目当てであることに気付かない純粋なお嬢様・美尊、そして自分の気持ちを抑えながら、旺太郎が幸せになれるようにとキスを繰り返す宰子。どちらもピュアな少女であり、そこに旺太郎の本音と過去が複雑に絡むことで、観る者の中にやるせなさが募っていく。

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