眞島秀和、北村匠海に優しく寄り添う 『となかぞ』が描く“同性カップルの見えざる苦悩”

『となかぞ』が描く“同性カップルの苦悩”

 「わたるんはね、世間には公表していない、いわゆるクローゼットなわけ」。様々な悩みを抱える家族を描いた『隣の家族は青く見える』第3話で、青木朔(北村匠海)は恋人・広瀬渉(眞島秀和)について、五十嵐奈々(深田恭子)にこう打ち明けた。“クローゼット”とは、自分の性的指向や性自認を公表していないことを指す言葉で、朔は奈々に、渉がゲイであることは触れないでほしいと優しく頼む。

 自身がゲイであることにオープンな朔は、自身と真逆である渉のポリシーを尊重していたが、2月8日に放送された第4話で事態は一転。朔は、渉の意に反する大胆な行動に出てしまった。

「世の中は、ゲイをファンタジーだと思っている」

 第1話で半ば強制的に同棲を開始させた朔は、これまでずっと渉と2人で外出することを夢見てきた。しかし、渉が“クローゼット”なゆえ、その願いは叶わず。とはいっても、渉が朔に「他の住人と関わるな」と言っていた引っ越し当初に比べれば、コーポラティブハウスの中庭まで2人の行動範囲は広がり、微々たる変化ではあるが徐々に外の世界と触れ合うようにはなってきていた。そんな矢先、渉にとって屈辱的な事件が起こった。

 「建築士広瀬渉は同性愛者」「ゲイカップルの家」と書かれた紙が、コーポラティブハウスの玄関や渉の職場に大量に届いたのだ。張り紙を発見したインスタ主婦・小宮山深雪(真飛聖)は、コーポラティブハウス内にゲイが住んでいることに発狂寸前。そんな深雪を横目に、奈々は必死に張り紙を剥がす。

 憤りを感じた奈々と夫の大器(松山ケンイチ)は、渉に直接相談へ。朔と暮らし始めてから、世間は思っているより寛容なのかもと思い始めていた渉はこの一件で、現実の厳しさを実感したと語り、「本音を言えばほっといてほしいんですよ。別に受け入れてくれなくていいから、そっとしといてくれと」と、五十嵐夫婦にこぼす。

 ちょうど、2月4日に放送された同局のドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』では、性転換をした僧侶・柴谷宗叔氏を追っていたが、世間には“LGBT”の頭文字の区別すらついていない人が存在することや、「男で生んだのだから、男として生きてほしい」と願う柴谷氏の母親の本音が浮き彫りにされていた。渉&朔カップルは“G”にあたるため柴谷氏とは別だが、世間の“LGBT”に対する不寛容さはドラマ内だけでなく現実にまだ強く根付いていることがわかる。

 「世の中のほとんどの人がゲイって存在を自分とは関係ないファンタジーか何かだと思ってるし」と朔が言う通り、自分の身近にセクシャルマイノリティーの人がいないからこそ、“寛容なつもり”でいるのではないかと、自問自答したくなるような言葉が第4話には詰まっていた。

 その後、犯人が判明せぬまま、再び玄関に張り紙が。「心のやさしいゲイカップルの家です。どなたでもおいでください。おいしいつまみがございます。ワインも冷えてございます」と、以前とは打って変わった文言の直筆の案内が貼られている。

 渉は再び訪れた理不尽な仕打ちに激怒するが、今回は朔の仕業だったことが明らかに。“クローゼット”な渉にとって朔の行動は精神的な苦痛を与えてしまい、渉の生活を、自分が押しかけてきたことにより狂わせてしまった責任を感じた朔は、「俺たち、出会わなきゃよかったね……」と捨てぜりふを吐き、シングルベッドにふて寝してしまう。

 “クローゼット”とはいえ、約40年間生きてきた中で、朔が最長の交際期間だという渉は、横になっている朔と同じ形になり抱きしめ、「今さら出会ってなかったことになんかできないよ……したくない……」と思いの丈を語る。世間へ公表するか否かで反発する2人だが、お互いを想う心はぴったりと寄り添っていた。

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