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蒼井優、掴みどころのない役が似合う理由 『ハロー張りネズミ』霊媒師役で見せた“たくさましさ”

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 最近のことだが、蒼井優はぱっと物語に出てきて、その場を持っていく女優なのだと実感させる作品が多いように思う。きっかけは、『ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編』だったが、『ハロー張りネズミ』でその思いを確実なものにしてくれた。

 『ハロネズ』で蒼井が演じたのは、謎の霊能者である。事の発端は、ゴロー(瑛太)の務める、あかつか探偵事務所に人気漫画家から、家に幽霊が出るという相談がもちかけられたことだった。ゴローはサンライズ出版の社長で、さまざまな事情に詳しい南(リリー・フランキー)に相談すると、かつてオカルト雑誌を編集していたときに知り合った霊媒師を紹介される。それが、蒼井優演じる霊媒師・河合節子だったのだ。

 南は、ほとんどの霊媒師はインチキだったが、節子のことだけは「ひとりだけとんでもねーのがいたよ。あれだけは本物だったな」と思い出す。

 しかし節子は、雷の鳴る中傘を差しながらの登場シーンこそ神秘的だったが、口を開くと普通っぽさがあり「意外とフレッシュな人が来たなと思って」とゴローも安心する。それを聞いた節子は「もっといかにもな感じのおばちゃんが来るの思った? 宜保愛子みたいな」「なめんなよ」と間髪入れずにすごむ。

 終始こんな感じで、節子は、人を安心させたかと思えばすごんでみせたり、はっとさせるような発言を繰り返し、ジェットコースターのように感情の落差が激しい。そんな節子の態度にゴローはペースを乱されてしまう。

 また、節子は下ネタも、古いギャグも連発で、おじさんのような部分も多いのだが、そうかと思えば、幽霊を退治した後、「疲れんのよー(ソファーまで)運んでー」と甘える顔も見せる。そんな姿にも嫌味がない。

 節子は本物の霊媒師であるから圧倒的に仕事ができる。絶対に立ち向かいたくないような強い霊にも果敢に挑み、ゴローは節子の背中に隠れて守られっぱなし。またある朝には、恐ろしい霊のいる家で普通に朝ごはんを作って食べてもいる。そんなシーンを見ていると、この世代の女優でこんなにどっしりした安心感を出せる人は他にいるだろうかと思えてくる。そんなキャラクターがふっと気を抜いた姿は、誰が見てもちょっと惹かれてしまうところがあるのではないかと思うのだ。

 思えば、蒼井優にはずっとこうした掴みどころのない役が求められてきたと思う。記憶に新しいところでは、『オーバー・フェンス』でも、ころころと表情を変える、やはり落差の激しい役を演じていた。しかし、その役の根底にあるのは脆さや弱さのほうだった。

 しかし、『ハロネズ』の節子も、『ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編』の郡山に住むシングルマザーも、根底にあるのは脆さよりも、たくましさであるように見えた。

      

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