テレビ東京とNetflixはなぜタッグを組んだ? 『100万円の女たち』五箇公貴Pインタビュー

『100万円の女たち』五箇インタビュー

プロデューサーとしての考え方

ーーそもそも五箇さんは、なぜテレ東のプロデューサーになったのですか?

五箇:もともとドラマとか舞台とか大好きで、大学も演劇学科でしたので、自然とテレビ局を目指すようになりました。でも、最初はドラマ部ではなく事業部というところに配属されて、舞台やイベントをやっていましたね。ようやく番組に関わるようになっても、ゴールデンのバラエティのADで、自分の好きなことにはなかなかたどり着かなかったです。2003年に弊社の伊藤隆行と佐久間宣行が『大人のコンソメ』という深夜のお笑い番組をやり始めて、そこで伊藤に拾われてから、だんだんと風向きが変わりました。テレビ東京もそこから、『ゴッドタン』や『やりすぎコージー』などのヒット番組を出すようになっていって。僕自身もその後、大根仁監督に企画書を持って行って、2004年に『30minutes』というドラマを手がけてから、深夜ドラマの世界に入ることができました。もし伊藤に拾われなかったら、会社を辞めていたかもしれません。

ーーゴールデンの番組は肌にあわなかった?

五箇:できないんですよ、本当に。だから深夜番組をコツコツやっているんです。会社から見たら「あいつは良い歳して、好きなことばかりやって」って思われているはず。でも、こないだ松田龍平君とも話したんですけれど、好きなことをやり続けるにもちゃんと方法論を確立しなければいけないんですよね。コンテンツ収入で、視聴率じゃないところで価値を生み出したからこそ、僕らも深夜番組でいろんなチャレンジをすることができた。メインストリームとは別のところで、自分たちで予算の管理もしながら好きなことをひとつのプロジェクトとしてやれるようになったんです。そこに今度は配信ビジネスがきているので、まだ深夜ドラマには可能性が残されている。もちろん、テレビ局の収益構造はゴールデンあっての僕らではあるので、そこにはいつも感謝しております(笑)。

ーー地上波であっても、DVDであれ配信であれ、放送以外でも収益を出していくのが大切になってきていると。僕が所属するスペースシャワーTVも同じですね。個人的なキャリアを考えても、ただ毎週番組を作って、こなしていくだけでは生き残れないのではないかと不安になります。それで他社と協力して映画を作ったりしているのですが。

五箇:僕らはもう40過ぎなので、ただ番組を作るだけじゃなく、新しい収益方法を考えて実践していかなくてはいけないですよね。だから今度は、海外に発信できるコンテンツを作っていこうと考えていて。テレビ東京で作れて、海外でも需要がありそうな作品というと、これはもうJホラーしかないかなと。コワさは言語を超えるといいますか。海外のドラマファンにも受けるように『Xファイル』に近いイメージで、オムニバス形式でありながら、横軸で一本、連続するストーリーもあるような。でも、怖さとストーリー性って、うまく繋げるのが大変なんですよね。連続ドラマの横軸って、結局のところ登場人物の心理の変化に寄り添うようなものだから、新奇性が必要なホラーと相性が悪いんですよ。どうしても“慣れ”の問題が出てくる。その調整に試行錯誤しています。あと、あっと驚く方がゲスト監督で参加してますので、そちらもお楽しみに。この人がドラマ撮るの!?って誰もが思うはずです。

ーーものすごく面白そうですが、企画を通すのが大変だったのでは?

五箇:テレ東もおかげさまで、本当に良い俳優やスタッフが集まるようになったので、逆にハードルが上がっているところがあって、簡単に企画が通るわけではないです。でも、番組に付加価値を付けるということに関して、テレ東は意識的ですし、配信ビジネスが主流になっていく中で海外向けのコンテンツを制作するのは、先を見据えた上で理に適っているので、通すことができました。

ーー五箇さんの発想は、まさにプロデューサーならではのものですよね。

五箇:学生時代は演出サイドに憧れたこともあったけれど、結局自分はプロデューサーが一番向いているじゃないかと思います。当時、蜷川幸雄さんの制作会社でバイトをしたことがあって、そのときのプロデューサーが蜷川さんをアングラからメジャーに引き抜いた人で。そこでプロデューサーという職業を知ったんですけれど、自分で演出をするよりも、好きな人やものを集めて作品にして、プロデューサーとして世に送り出していったほうがずっと効率が良いし、いろいろな作品に携われるなと思えたんです。今は自分の企画が通って、それが始動するときの快感は代え難いものがあります(笑)。第一話が仕上がったくらいのタイミングが快感のマックスですね。考え方によっては、プロデューサーは監督よりも好きなようにモノ作りができる。ビジネスモデルも含めて、一番最初にビジョンを描くわけですから。一方で、プロデューサーはトラブル処理も大きな仕事ですが、その点に関しても向いていると思います。変な言い方ですが、あまりにも怒られ慣れちゃうと、ふと気を失っているみたいな時があるんです(笑)。そういう鈍感なところも、ある意味ではプロデューサー気質といえるのかもしれません。

(構成=松田広宣)

■高根順次
1973年生まれ。大学卒業後、AVEXD.D.(現・AvexGroup)入社。半年間のAD生活で社会の洗礼を受けた後、スペースシャワーTVへ転職。フリーペーパー『タダダー!』の立ち上げに始まり、『スペチャ!』『爆裂★エレキングダム』他、数多くの番組をプロデュース。現在はライブ動画をウェブ上にアーカイブするプロジェクト『DAX』やヒップホップ番組『BLACKFILE』を担当。一方で『フラッシュバックメモリーズ 3D』をきっかけに映画製作に乗り出し、以後、『劇場版 BiSキャノンボール2014』、『私たちのハァハァ』、『劇場版 BiS誕生の詩』,『WHOKiLLEDIDOL? SiS消滅の詩』と、2017年春までに4本のプロデュース作を劇場公開している。2017年4月に『PRODUCERS' THINKING』を上梓。

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(C)青野春秋・小学館/「100万円の女たち」製作委員会

■放送情報
木ドラ25『100万円の女たち』
配信日:Netflixにて4月7日(金)より独占配信
放送日時:テレビ東京にて4月13日(木)スタート 毎週木曜深夜1:00~1:30
主演:野田洋次郎(RADWIMPS)
原作:青野春秋『100万円の女たち』(小学館ビッグスピリッツコミックス刊)
脚本:山田能龍(劇団山田ジャパン主宰)、室岡ヨシミコ、中園勇也
監督:藤井道人、原廣利、桑島憲司
プロデューサー:五箇公貴、堀尾星矢
チーフプロデューサー:大和健太郎
共同プロデューサー:Julian LAI-HUNG、上木則安、坂本和隆
コンテンツプロデューサー:小林史憲、滝山直史
In association with Netflix
制作:テレビ東京/イメージフィールド
製作著作:「100万円の女たち」製作委員会
Netflix:https://www.netflix.com/jp/

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