『ばけばけ』トキがヘブンに伝える初めての怪談 『鳥取の布団』のあらすじを解説

いよいよNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の第12週「カイダン、ネガイマス」で、トキ(髙石あかり)がヘブン(トミー・バストウ)に怪談を読み聞かせるシーンが登場する。2人が心を通わせ、二人三脚で暮らすきっかけにもなる、物語の中でも重要なターニングポイントだ。
トキは金縛りにあって眠りにつくことができないヘブンのために、大雄寺に連れていってお払いを受けさせる。そこで、住職(伊武雅刀)から寺に代々伝わる怪談『水飴を買う女』を聞かされることになるのだが、ヘブンは初めて聞く怪談に興味津々。これまで日本に滞在した旅行記をまとめる上で、“ラストピース”を探し求めていたヘブンにとって、怪談はまさに恰好のテーマだったのだろう。

そして、誰よりも怪談に詳しい人物が、ヘブンの何よりも身近に存在していた。住職とヘブンの会話に登場した「怪談」という言葉にいち早く反応して、後ろから熱い目線を送っていたトキだ。
実際、ヘブンが「ゼヒ、ネガイマス」と住職に告げたとき、彼女の口元は緩みきっており、怪談話を聞きたくてウズウズする気持ちをまったく隠せていなかった。初めて聞く怪談に興味を持ったヘブンに、幽霊や妖怪の類が大好きで怪談オタクでもあるトキが自宅で怪談を教えることになるのは、なんとも自然な成り行きと言えるだろう。

さて、トキがヘブンに初めて読み聞かせる怪談が、これまでにも登場した『鳥取の布団』。第11話で鳥取からやってきたトキの最初の婿・銀二郎(寛一郎)からトキに伝えられたこの怪談は、悲しくも切ない2人の幼い兄弟の物語だ。
小さな宿屋を始めた主人は、最初の客として旅の行商人を受け入れる。大部分は古道具屋から調達していたものの、清潔な部屋とおいしい料理や酒の数々でもてなしたことから、客は大満足して床に就く。しかし、布団に入ってほんの少し眠ると、部屋の中から小さな子供の話し声が聞こえてくる。「兄さん寒かろう」「おまえ寒かろう」と尋ね合う声は、いつまでも消えることなく部屋に響いた。

行灯のろうそくに火を灯して、部屋を見回すものの誰もいない。再び、眠りにつこうとすると、また枕元からボソボソと子供の声が聞こえてくる。そのとき、声は部屋のどこかからではなく、寝床の掛け布団から聞こえてくるのだと客は理解するのだ。
酒に酔っていた前述の客だけでなく、酒を飲んでいない客にも同じ文句を言われた宿屋の主人は、思い当たる節のないクレームに憤りを隠せない。しかし、実際に掛け布団から声が聞こえてくるのを体感しては、客の言う言葉も信じざるを得ない。
怪奇現象に困った宿屋の主人は、布団を買い取った古道具屋の店主に事情を聞く。元を辿った先でわかったのは、元々、その布団は貧しい家に生まれ、両親に先立たれて身寄りもいない6歳と8歳の少年が生き延びるために家財道具や着物を売って、最後に残されたモノだということ。鳥取に大寒波が押し寄せるなか、一枚の薄い布団の下で横になることしかできない2人の兄弟。そのとき、幼い兄弟が互いに励まし合ってかけた言葉こそ、「兄さん寒かろう」「お前寒かろう」だった。
挙げ句の果てに、悪徳大家に部屋を追い出された2人は、雪が降る中で帰ることもできずに彷徨い歩く。やがて、行く当てもなくこっそりと戻った借家で抱き合いながら眠り、再び目を覚ますことはなかった。布団にまつわる話の一部始終を聞いた宿屋の主人は、お寺で経を読み上げてもらい、布団に取りついた小さな魂を供養する。以降、布団から声がすることはなかったという。
『鳥取の布団』はのちにヘブンのモデルとなった怪談作家・小泉八雲が著した『知られぬ日本の面影』に収録されることになる。本作では、鳥取からやってきた銀次郎からトキに伝えられた『鳥取の布団』が、今度はトキからヘブンへと語り継がれていくのだろう。
すっかり怪談に魅了されたヘブンと、子どもの頃から怪談が大好きなトキ。『鳥取の布団』は悲しい結末だったが、2人の距離を大きく縮める手助けとなった。非愛に満ちた物語が、国や文化を越えたつながりを生み出していくのも、またおかしみのある話だ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK























