『たたら侍』ハリウッドプレミア徹底レポ 「青柳翔は、リーダーであり、親友であり、メンター」

『たたら侍』ハリウッドプレミア取材レポ

 映画『たたら侍』のハリウッドプレミアムナイト試写会が、現地時間5月8日にエジプシャンシアターにて開催された。監督の錦織良成、エグゼクティヴ・プロデューサーのEXILE HIRO、刀匠の吉原義人、キャストの青柳翔、小林直己、AKIRAほか、総勢11名が登壇し、現地の映画人たちに作品の魅力をアピールした。リアルサウンド映画部では、現地を訪れて取材を敢行、その一部始終をレポートする。(メイン写真は左から、小林直己、青柳翔、錦織良成、EXILE HIRO、AKIRA)

 快晴に恵まれた当日、17時30分より会場がオープン。エジプシャンシアターは、1922年に建築されたロサンゼルスでもっとも古いとされる老舗劇場だ。その名の通りエジプトを思わせる異国情緒溢れる外観に、英語版『たたら侍』の横断幕やパネルが展示されていて、本作が本格的に海を渡ったことを実感させる。レッドカーペットでは、訪れた招待客が記念撮影を楽しみ、華やかな雰囲気に包まれている。

 いよいよ監督やキャストらがレッドカーペットに登場すると、拍手とともに報道陣がフラッシュを焚く。メインキャストの青柳翔、小林直己、AKIRAは、ハリウッドのレッドカーペットを歩いた感想を記者に問われ、「海外の方々が自分たちの作品を祝福してくれている感じは初めてですので、本当に嬉しさでいっぱいです」(青柳)、「本当にたくさんの方々に集まっていただいたのでうれしいですし、みなさんの反応がとても楽しみです」(小林直己)、「うれしい気持ちと楽しい気持ちでいっぱいです」(AKIRA)と、それぞれ喜びを露わにした。また、青柳は「たたら吹き(日本の伝統的な製鉄方法)を知らない方も多いと思うので、この機会に知ってもらえれば」と、本作の見どころを伝えた。

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報道陣の質問に答えるAKIRA

 舞台挨拶では、まずは『たたら侍』のハリウッド上映をバックアップした、在ロサンゼルス日本国総領事館の千葉明総領事が挨拶。「わたしの名前はAKIRAですが、この映画には出演していません」とのジョークで場を和ませた後、映画を通じて日本文化を伝えることの意義、日本のコンテンツ産業の可能性などについて語った。本作のような時代劇が日米同時公開されるのは極めて異例のことである。在ロサンゼルス日本国総領事館とLDHの取り組みについては、千葉明総領事に直接取材することができたので、後日改めてレポートする。

 続いて、監督らが続々と挨拶。HIROは、「今作は時代劇ではありますが、現代の僕らの思いに通ずるものがあると思います。本物の強さとはなんなのかというのを感じていただけたら」、青柳は、「映画『たたら侍』をこのような素敵な場所で上映させていただけることを本当に嬉しく、光栄に思います。日本の美しい景色を本当に丁寧に切り取った映画だと思うので、ぜひ最後まで楽しんでください」と語り、小林直己は流暢な英語で、「侍は戦士ではありません。侍とは精神のこと、武士道の精神を指します」と説明し、拍手喝采を浴びた。さらに、惣兵衛役を務めた笹野高史は、勢いのある英語で「Give me job!」と叫んで会場を爆笑の渦に包み、源蔵役を務めたでんでんも「ファーストネーム、ミドルネーム、ラストネーム、全部合わせてでんでんです」と自己紹介して、さらに会場を温めた。

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ハイテンションなスピーチで盛り上げた笹野高史

 LDHがどんなエンタテインメント企業なのかを紹介する映像が流れた後は、いよいよ本編上映へ。筆者は日本国内でも一度、試写を観ていたが、エジプシャンシアターの大画面で堪能する『たたら侍』は、また別格の趣きがあった。『たたら侍』は、戦国時代の島根・奥出雲を舞台に、名刀を生み出す鉄の玉鋼(たまはがね)を作る伝統技術「たたら吹き」を継承し守ることを宿命付けられた主人公・伍介(青柳翔)が、数々の困難を経て、真の侍魂に触れるとともに、自らの道を見出していく成長物語だ。伍介は生まれ育った村を守るために、家業を継がずに自ら侍となることを志すのだが、厳しい現実を前に挫折し、葛藤し、道を見失う。幼馴染みである新平(小林直己)と、たたら村を守ってきた侍・尼子真之介(AKIRA)は、伍介を導く存在だ。

 パナビジョンカメラによるフィルム撮影で切り取られた、風光明媚な日本の景色と、鮮やかに再現された当時の人々の生活は、エジプシャンシアターの大画面でも強い説得力を持つ。登場人物たちの関係性や心情が自ずと伝わる極めて明快な演出や、黒澤明へのオマージュを捧げた雨の中での殺陣シーンなどは、海外に日本的精神を伝えようとする本作ならではの特徴だろう。実際、伍介が戸惑う姿に笑いが起こったり、殺陣シーンでは歓声が上がるなど、観客たちの反応は良い。筆者自身も国外で鑑賞したことで、その演出意図がより深く理解できたのは、大きな収穫だった。ラストシーンでエンドロールが流れた途端、会場が惜しみない拍手に包まれたのは、本作へのまぎれもない評価だろう。運命を受け入れ、伝統を守るということーーその精神性は、ある意味では保守的であり、近年の娯楽映画では美徳として描かれにくい種類のものである。しかしだからこそ、『たたら侍』が伝えるメッセージには深い意義があるのではないだろうか。

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