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名優デ・ニーロ、73歳にしてキャリアぶち壊す!? 『ダーティ・グランパ』“お下劣”演技の衝撃

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ロバート・デ・ニーロ
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牛津厚信
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 今年のNHK・BSプレミアムの年越しラインナップは実に圧巻だった。大晦日の夕方から『ホビット』3部作を一挙放送したかと思うと、新年明けた瞬間の午前0時からは『ゴッドファーザー』3部作がスタート。とりわけ周囲の喧騒がようやく落ち着き出す深夜3時台には『PART II』で若かりし頃のロバート・デ・ニーロの名演を十分に堪能することができた。

 撮影当時、彼は30歳。コッポラ監督が彼を“若き日のドン・コルレオーネ”役に大抜擢するや、デ・ニーロは自ら進んでテープレコーダーを抱えてシチリアへと渡り、その風土を血肉化し、地元の人々が話し笑う表情をその目に焼き付け、吹き込んだ方言を何度も聴き返しながら完璧なイントネーションを習得。さらに『PART I』のマーロン・ブランドの演技を何度も再生して分析し、単なるモノマネにならない創造的なレベルにおいて整合性をもたらすことに死力を尽くした。

 本作におけるデ・ニーロの役へのこだわり、そして『レイジング・ブル』のストイックな体作りをはじめ、『タクシードライバー』では実際にタクシー運転手として街を流して経験を積んだり、さらには『アンタッチャブル』では自毛を抜いてハゲ頭を獲得するなど、彼が役を掴み取るまでに踏む過酷なまでの手順は“デ・ニーロ・アプローチ”として世に知られている。

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 そんな彼も今や73歳。年齢から考えて映画のメインを張る主演から助演クラスへの移行を考えても不思議ではないのに、未だに第一線で様々な自分の魅せ方を模索し続けている点は凄いと言うほかない。最近では『リベンジ・マッチ』で老体に鞭打ってトレーニングに励んでボクサーとしての身体を作り、スタローンとガチンコ対決するなどのアプローチで健在ぶりをアピールしてみせた。そう、彼の演技は、いくつになっても観客の心を震わせ、熱く魅了するもの。私はそう強く確信していた。

 しかし、である。人生のこの段階において、デ・ニーロのとんでもない、スペシャルQの演技が飛び出すとは。その発火元が6日より公開となった『ダーティ・グランパ』。まさか『ゴッドファーザーPART II』の深い感動から一週間も経たないうちに、その輝かしいキャリアをたった一作でこっぱみじんにしてしまう、これほど破壊力満点の作品に出会うとは思ってもみなかった。

     
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