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『逃げ恥』ワールドを作り出した全ての方々に拍手! 幸せに生きるためのヒント詰まった最終話

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逃げるは恥だが役に立つ
逃げ恥
野木亜紀子
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 12月20日に、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』が最終回を迎えた。さまざまな愛があふれるエンディングに、心が温まった。私たちも、自分の気持ちに素直になる勇気が持てたら、『逃げ恥』ワールドのような世界を創れるかもしれない。そんな希望さえ覚えた。『逃げ恥』が私たちに教えてくれたことを見つめ、心が満たされる日々のヒントにしたい。

人間関係は交渉が大事、愛するパートナーとの模索は続く

 夫=雇用主、妻=従業員という雇用関係としての結婚をした、みくり(新垣結衣)と平匡(星野源)。9話まで、たっぷりと時間をかけて、少しずつ距離を近づけていった2人が、ついに恋人関係に発展。お互いに“必要とされる”幸福感に包まれた。しかし、平匡のリストラ問題をキッカケに、またもやすれ違う2人。平匡は、気持ちが通じ合ったみくりなら、何があっても自分の提案を受け入れてくれるはずだと、相談なしにプロポーズをする。だが、その内容は、まるで「正式に籍を入れれば給与が生活費にまわすことができる」と無償労働を迫られているように聞こえたため、みくりは「好きの搾取である」と断固反対。結婚を素因数分解していく2人が、どのような形を築き上げていくのかが、最大の見どころだった。

 模索しながら、一緒に生きていく、ということ。2人が導き出した結論は、実にシンプルなものだった。そもそも平匡のプロポーズも本質は、みくりとどう生きていくかという、交渉のつもりだった。だが、独りよがりな提案に聞こえてしまったのは、みくりとのコミュニケーションが不足してしまったせい。平匡が発した「僕のことが好きではないということですか?」は、「僕のことを搾取をするような人間(みくりの幸せを願わない存在)に思うのですか?」という信頼関係の確認だったようにも思う。話し合うためには、お互いの幸せを願っているという、信頼関係の前提が崩れては積み上げることができない。これまでのストーリーを通じて「素直な気持ちを伝えること」が、いかに大切かを学んできた2人。プロポーズから少し時間をおくことで、改めて話し合いの場を設ける余裕もできた。そして、雇用主と従業員から共同責任経営者へと関係性を再構築。お互いを「平匡CEO」「みくりCEO」と呼び合い、経営会議と称して率直な意見を交わす。いいぞいいぞ! それでこそ、みくりと平匡! と微笑ましく見ていたが、だんだん怪しい雲行きに。

ミスで責めるべきは、人ではなくやり方

 みくりの副業(商店街のイベンターとタウン誌のライター)が始まったことにより、またもや余裕がなくなっていく2人。家事を分担で「やってくれて当然」の状態になり、相手の行動への評価(敬意と感謝)がないがしろになっていくのだった。ある日、みくりから頼まれていた炊飯を平匡が忘れてしまうミスが起きる。しかも出前や外食でごまかそうとした平匡に、イラ立ちを隠せないみくりは、ふてくされたような態度を取ってしまう。平匡は意気消沈、みくりも自己嫌悪。こんなの誰も幸せじゃない。だが、これは現実社会でもよくみかけるシーンではないだろうか。人は誰でもミスをすることがある。合理的に考えれば、ミスから学び、次に同じミスをしないように、どうするべきかを考えるのが妥当だ。しかし実際は、ミスをされた方は「期待はずれだ」と落胆し、ミスをした方は「自分ってなんてダメなんだ」と自信を失い、なかなか気持ちが切り替えられない場面が多い。では、どうすればいいのか。

 責めるべきは、その人の人間性ではなく、やり方だ。ひどい態度をしてしまったのは、余裕のない状態になってしまったから。見直すべきは、余裕がなくなってしまったやり方なのだ。信頼しているのであれば、そこを区切って考える必要がある。区切れないのなら、信頼関係を築くという前提を見直すところからやり直さなくてはならない。そうして、うまくいくやり方を模索していくしかない。そのすり合わせを、諦めずに続けていける相手かどうか。それが信頼できるパートナーということになのではないだろうか。

自尊感情が低くなるのは、自分がかけた呪縛にとらわれているとき

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 余裕がなくなり、自己評価が下がると、心のシャッターを閉ざしたくなる。これ以上、誰にも傷つけられないように、そして余裕のない態度から誰かを傷つけないように。スムーズにいかないイベントの企画、不慣れなライター業務、そして疎かになっていく家事……。やるからには、しっかりとこなしたいと思いつつも、現実は理想とは程遠く、少しずつ自信を失っていくみくり。

 「小賢しい女」みくりは、そう言われて失恋したことから、うまくいかないときにはいつもこの言葉が頭をかすめていた。彼氏に「こうしたほうがいい」と助言をしてはうざがられ、派遣先で「なぜこうしないのですか」と提案してはクビを切られた。その心の傷が、平匡にもプロポーズを素直に喜べない小賢しい女など、きっと見捨てられてしまうと、自尊感情がどんどん低くなってしまう。

 心を閉ざしていくみくりの心情は行動にも表れ、バスルームにこもるように。「集中できるので」とバスタブでパソコン作業をする姿は、これまでのみくりとはまるで別人だ。いっぱいいっぱいになると考えがまとまらず、短絡的に0か100かで解決したくなってくる。そして、みくりは平匡に「(結婚生活を)やめるなら……今です」と言い放ち、バスルームのトビラをピシャリと閉めるのだった。その姿は、いつかの平匡が「プロの独身」として自分の部屋にこもってしまうそれと同じようだった。

相手の心のトビラを開けるなら、ノックから

 固く閉じられていた心のシャッターを開けるのは、歩み寄りでしかない。平匡はみくりがしてくれた、何度も見捨てずに、ステップを踏んで、距離を縮めてくれた、これまでの日々を思い出していた。みくりが閉じこもっているバスルームのドアをやさしくノックして、「話してもいいですか?」と、ドア越しに語りかける平匡。決して無理に踏み込んだり、「開けろ」と強要したりはせず、相手のタイミングを待つこと。プロポーズの失敗、そして自分の経験を踏まえて、ありのままのみくりを包み込む平匡に、成長を感じずにはいられなかった。

 人には、それぞれ心理的にも物理的にも、パーソナルスペースを持っている。これ以上近づかれたら不快だという空間には、どんなに親しい関係の人間であっても、土足で踏み込む権利はない。相手が余裕のないときならば、なおさらだ。その個人的な空間を乱さないこと、近づくためには慎重にノックをして、相手の状況を汲み取ること。相手が招き入れる準備ができていないのであれば、その距離から語りかける配慮が必要であること。それは、一度気持ちが通じ合った相手でも同じである。「親しき仲にも礼儀あり」とは、よくいったもので、むしろ信頼している相手にこそ心のノックをする大切さを、再認識させられた。

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