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ビル・マーレイ、アフガンでロックを叫ぶ!? 異色コメディ『ロック・ザ・カスバ!』の挑戦

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 ビル・マーレイをキャスティングすることは映画を一本ヒットさせるよりも難しい。それが映画界の共通認識だ。なにしろ彼はエージェントと契約していないし、マネージャーさえいないのだ。

 となると、出演を望む大勢の製作者たちが彼の友人に助けを乞うのは当然のこと。とりわけ80年代から交流を続ける製作者であり脚本家のミッチ・グレイザーはこういった問い合わせ被害を数多く受けてきた一人だという。

 だがその見返りがあるとすれば、『ロック・ザ・カスバ!』のように自身が長く温めた企画にようやくゴーサインが出た時だろう。グレイザーは案の定、いち早く友人マーレイから出演の確約を得ることができた。それはつまり、マーレイを撮影のために遥かモロッコまで連れ出すことを意味していたわけだが(彼は出不精なことで有名だ)、これもまた、友人だからこそ成しえた快挙である。

アフガンで女性シンガーを新人発掘!?

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 というわけでロックの時間だ。ギターが高まる。ビートが大地を揺らす。熱狂したオーディエンスがステージに大挙するーーいやいや、そんな見慣れた風景などこの映画のどこを向いても存在しない。

 物語の舞台はアフガニスタン。この地で砂嵐にまみれながらマーレイが演じるのは「俺はマドンナの才能をいち早く見出したんだぜ」が口癖の自称敏腕マネージャーだ。ある日、彼は酔っ払いの軍関係者からの要請を受け、新人歌手(ズーイー・デシャネル)を伴って遥かアフガニスタンに向けた米軍慰問ツアーに出発する。しかし降り立った首都カブールですぐさまアクシデントに見舞われ、この地でどん詰まり状態に。

 そんな中、彼はひょんなことから現地の少女と出会い、その歌声を耳にした瞬間、昔の感覚がビビッときて「神様の贈り物だ!」と感じずにいられなくなる。女性が人前で歌うことが困難なこの国で、「歌手になりたい」と願うその少女。彼女の夢を叶えるべく、彼はいつになく真剣な眼差しで、久方ぶりの情熱を燃やし始めるのだが……。

豪華キャストに彩られた異色作

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 砂塵と噴煙のくすぶるカブールをさまようビル・マーレイの姿は、かつて彼がTOKYOの町並みを駆け抜けた『ロスト・イン・トランスレーション』を彷彿とさせる。アフガニスタンに舞台を移しても、マーレイが身振り手振りで相手に意思を伝え、時には部族を前に「SMOKE ON THE WATER」を熱唱してみせる姿には、見る者を「そうそう、この感じ!」と思わせるマーレイっぽさが満載である。

 そんな彼を支える共演陣も意表をつく大物ぞろいだ。強靭な腕っぷしで主人公を脅したり、時には彼を守る立場にもなったりする傭兵役としてブルース・ウィリスが出ているのにも驚かされる。彼とビル・マーレイが共演するのはウェス・アンダーソン監督作『ムーンライズ・キングダム』以来だが、こんな大物ふたりが一つの画面に同居するショットを目にすると、珍しさのあまりファンタジーを見ているような不可思議な感覚すらこみ上げてくる。

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 余談だが、実はウィリスにとってマーレイの存在はとても思い出深いものらしく、遡ること70年代、ブルース・ウィリスがTVコメディ『サタデー・ナイト・ライブ』の雑用係に甘んじていた頃、出演者の中でマーレイだけはいつも丁寧に接してくれたのだとか。確かにそんなエピソードは他でもよく耳にする。筆者が『ヴィンセントが教えてくれたこと』の主演子役ジェイデン・リーベラーにインタビューした時も、「ビルは分け隔てなく誰とでも仲良くなっちゃう人」と語っていた。マーレイの飄々とした存在感やハリウッドから少し距離を置いた仙人のような立ち位置は、映画の内でも外でも、それから本作においても間違いなく、格別な空気となって影響を及ぼしているのだ。

 他にも、ケイト・ハドソンとズーイー・デシャネルという『あの頃ペニー・レインと』で人気を博した女優陣が揃って出演している。いずれも映画界の仙人たるビル・マーレイとの共演を望む一心でオファーを受けたことは想像に難くない。

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 さらに監督を担うのは『レインマン』でオスカーを受賞したバリー・レヴィンソン。紛争の地、そしてロックの組み合わせで言うと、ちょうどレヴィンソンの監督作『グッドモーニング、ベトナム』(87)が思い出されるが、様々な要素の入り乱れる『カスバ!』に『ベトナム』と同じく少しだけ社会派の風味を香らせることができるのも、この御歳74になる名匠のなせるわざと言えるだろう。

      

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