>  >  > 女優・クリステン・スチュワートの魅力

クリステン・スチュワート、波乱の女優人生ーー色眼鏡に晒された“元・子役”はいかに評価を得たか

関連タグ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 フランスの映画賞といえば、カンヌ国際映画祭だ。世界中から一流映画人たちが集う映画の祭典であり、数多くの映画が売買される映画見本市でもある。映画界のビックイベントだといえるだろう。しかし、カンヌはあくまで「国際」映画祭である。当然ながら、フランスにはフランス国内向けの映画賞が存在する。それがセザール賞だ。近年では『アメリ』(’02)や『愛、アムール』(’13)などが、このセザール賞を受賞している。いわばフランスのアカデミー賞だと言えるだろう。そんなセザール賞に2015年、珍しいことが起きた。助演女優賞をアメリカ人女優が受賞したのである。これはセザール賞の歴史上初のことだった。この快挙を成し遂げた女優こそ、クリステン・スチュワートである。今回の記事では、クリステンをセザール賞へと導いた『アクトレス〜女たちの舞台〜』(’14)のBlu-ray/DVD化を記念して、同作を含む彼女の転機となった2014年を軸に、弱冠26歳にして人生の酸いも甘いも味わった彼女の足跡を振り返っていきたいと思う。

 クリステンのキャリアは、まさに俳優一筋、バリバリの叩き上げである。芸能一家に生まれたクリステンは、子役としてテレビドラマの脇役からキャリアをスタートさせ、十代になるとデヴィッド・フィンチャー監督の『パニック・ルーム』(’02)や、ジョン・ファヴロー監督の『ザスーラ』(’05)など、ハリウッドの一流監督たちとの仕事をものにする。子役上りは不幸な結末を迎えるものも多いが、クリステンはそうはならなかった。しかし、そのまま堅実に若手実力派女優として成長していくかと思われたが、突如として人生を一変させる「大波」がやってくる。美形吸血鬼と少女が恋に落ちるヤングアダルト小説『トワイライト』シリーズの主役に抜擢されたのだ。

 小説版は既に若い女性を中心に熱狂的なファンを獲得していたが、実のところ予算的には到底超大作とは言えない小規模なもので、興業的にはそこそこに収まるだろうというのが大方の見方だった。しかし、いざ蓋を開けてみれば映画は凄まじい大ヒットとなり、ファンが熱狂のあまり失神するほどのフィーバーぶり。映画は瞬く間に社会現象となり、現在の『ハンガーゲーム』『メイズランナー』シリーズなどのヤングアダルト小説映画の先駆けとなった。こうしてクリステンは若干18歳にして大ブレイクを果たしたのだった。しかし……『トワイライト』は破格の成功をクリステンにもたらしたが、それは危険な諸刃の剣であった。

 人気シリーズの主人公、いわゆる「当たり役」務めた俳優は苦労するという。『007』シリーズの主演俳優たちは、いずれも「○代目ボンド」という色眼鏡で見られて、そこからの脱却に苦労したものだ。『トワイライト』も例外ではない。むしろ、もっと強烈だった。同シリーズは興行的成功を受けて、1年に1本のペースで続編が公開されるハイペースぶり。近年最大のフランチャイズ映画であるマーベル映画ですら(キャラ同士のゲスト出演はあれど)同キャラの冠タイトルは数年の間隔があく。それを考えると、同一キャストによる毎年公開は、ほとんど『ハリーポッター』シリーズや、日本でいうと『釣りバカ日誌』のようなものである。しかも、その全てが全世界規模で大々的に公開される大作映画なのだ。イメージが付くなという方が無理であろう。

 また、『トワイライト』は原作ファンの熱狂的な支持により興業的には成功したものの、批評的には成功とはいいがたかった。この結果、クリステンの役者としての評価はブレまくることになる。分かり易い例として、ティーン向けの映画賞であるMTVムービーアワードでは『トワイライト』シリーズは各賞によく顔を出したが、それと同じくらい、最低の映画を決めるラスベリー賞でも常連となっていた。あっちでは最高の女優と絶賛され、こっちでは最低の女優と酷評される。なんとも奇妙な状況だが、当時のクリステンはそういう捻じれた状況に置かれていた。叩き上げの実力派であるはずのクリステンが、その実力までも疑問視されるようになったのである。そういう状況にあったせいか、このころからクリステンは『トワイライト』 シリーズに続投しながら、一方で役者として挑戦的な役柄を増やしていく。セックス&ドラッグ&ロックンロースな青春劇『ランナウェイズ』(’10)、ヒッピー・カルチャーの代名詞ジャック・ケルアックの『路上』を映像化した『オン・ザ・ロード』(’12)。クリステンの演技は光っていたが、『トワイライト』ほどのヒットにはならず、既存のイメージからの脱却や、再評価にはつながらなかった。

 そして2012年、おりしも『トワイライト』最終作が公開されたこの年、クリステンは一大スキャンダルを起こしてしまう。自身の主演作『スノーホワイト』(’12)の監督と不倫騒動を起こしたのだ。しかも自分には『トワイライト』の主演ロバート・パティンソンという交際相手がいて、おまけに相手にも妻と子が……事態は最悪だった。クリステンは連日ゴシップ記事を賑わせることになってしまう。

 こうしてクリステンは「当たり役」「非実力派」「スキャンダル」……この三つの色眼鏡で見られることになってしまったのだ。2013年、クリステンは大学へ進学する。この年には1本も出演作がなく、99年にデビューしてから初めて、1年間の空白期間が空いてしまう。しかし、クリステンは静かに牙を研いでいた。2014年、クリステンは凄まじい飛躍を見せる。

 まずは米軍による収容者虐待事件で有名なグァンタナモ基地を舞台にした『レディソルジャー』(’14)に主演。アクション映画的な景気のいい邦題がついているが、実際はアクションシーンは皆無であり、ほぼ全編が収容者と米兵の会話のみで成立しているストイックな人間ドラマである。ここでクリステンは「ツバを吐きかけられる」「人糞を投げつけられる」「セクハラを受ける」などの苦難に耐える米軍の新兵を好演。過酷な状況を完全に目が死んだ顔で流していくクリステンは非常に印象的で、同作はサンダンス国際映画祭でも高い評価を受けた。続いてジュリアン・ムーア主演作にしてアカデミー賞レースにも絡んだ『アリスのままで』(’14)に出演。認知症によって記憶を失っ ていく母(ジュリアン・ムーア)に葛藤する娘を演じ、こちらも高い評価を受けた。さらにクリステンはヨーロッパ映画へと進出する。それがスイスを舞台に、大女優の葛藤を描いた『アクトレス 女たちの舞台』(’14)だ。

      

「クリステン・スチュワート、波乱の女優人生ーー色眼鏡に晒された“元・子役”はいかに評価を得たか」のページです。の最新ニュースで映画をもっと楽しく!「リアルサウンド 映画部」は、映画・ドラマ情報とレビューの総合サイトです。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版