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『ハウス・オブ・カード 野望の階段』連載企画 第1弾

デヴィッド・フィンチャーのターニングポイント、『ハウス・オブ・カード』の画期性について

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 この春、Netflixが最新のシーズン4世界同時配信を含め、全シーズンの配信をスタートさせたデヴィッド・フィンチャー製作総指揮、ケヴィン・スペイシー主演のドラマシリーズ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』。あのオバマ大統領までもが配信開始(シーズン2)前日に、《Tomorrow: @HouseOfCards. No Spoilers, please》(明日はハウス・オブ・カードの配信日。ネタバレ厳禁でよろしく)とツイートするなど、世界中で『ハウス・オブ・カード』中毒者を続出させている本作。これまで日本では、その評判は耳にしてきたものの、シーズン3が本国で配信されてから1年以上経っても観られなかったり、全エピソードをまとめて観る方法がなかったりで、機会を逸してきた人もきっと多いだろう。ここでは、そんな『ハウス・オブ・カード』が世界のエンターテインメント界においてどれほどエポック・メイキングな意義を持つ作品であったかについて、改めてフィンチャー監督のこれまでの歩みを踏まえながら解説していこう。

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 90年代以降のアメリカ映画をリードしてきた鬼才(というか、今や巨匠と言ってもいいですね)デヴィッド・フィンチャーと名優ケヴィン・スペイシーの組み合わせといえば、多くの映画ファンはフィンチャーの大出世作となった1995年の『セブン』を思い出すことだろう。あの作品でスペイシーは血の通った人間とは思えないような卑劣で残酷なサイコパスの犯人を演じていたが、その後もフィンチャーとの盟友関係は続いていて、2010年のフィンチャー作品『ソーシャル・ネットワーク』では、スペイシーは製作総指揮にも名を連ねていた。スペイシーによると、その『ソーシャル・ネットワーク』の撮影現場に製作総指揮という立場で訪れた際に、フィンチャーから「また役者と監督という立場で一緒に仕事がしたい」と『ハウス・オブ・カード』への出演の打診を受けたという。

 スペイシーはこうも語っている。「役者にとって最も興味深いプロット、最も興味深いキャラクターというのは、90年代まで映画の世界にあった。でも、現在周りを見渡してみて、それがあるのはドラマの世界なんだ」。それはまさに、ハリウッド映画界のトップ・ディレクターであるフィンチャーが『ハウス・オブ・カード』でドラマの世界に本格的に参入した一番の理由でもある。特に2010年代に入ってからのハリウッド映画界は、“中国やインドなど新興マーケットも見据えた超ビッグ・バジェットの娯楽大作”と“インディペンデント映画出身の若手監督や売り出し中の役者を抜擢してのスモール・バジェット作品”に二極化してしまった。フィンチャー、あるいはスティーブン・ソダーバーグのような、世界的な評価を確立し、大物俳優とのコネクションも強く、充実したキャリアを築いてきた“製作費と製作時間を贅沢に使った大人向けの刺激的なエンターテインメント”という本来は映画界の最前線であるはずの場所に立っていた先鋭的な監督が、これまでのようにそのクリエイティヴィティを思う存分に発揮できる機会が狭まってきたのだ。

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 そんな状況の中で、『ソーシャル・ネットワーク』が公開された翌年の2011年、フィンチャーは『ハウス・オブ・カード』でドラマシリーズへの参入を発表した。この発表は二つの点で大きな驚きをもたらした。

 一つは、フィンチャー自身がシーズン1の最初の二つのエピソードを監督すること。過去にもスティーブン・スピルバーグやリドリー・スコットやロン・ハワードといった映画界のトップ・ディレクターたちがテレビドラマに“製作”や“製作総指揮”のポジションで関わる機会はあったが、フィンチャーはそこで本業の“監督”としても乗り込んでいくとアナウンスしたのだ。デヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』といった前例はあるものの、フィンチャーはリンチのようなアート系のアウトロー的な映画作家ではなく、その時点で(そして今も)アメリカ映画のメインストリームのど真ん中に立つ映画作家だった。「あの極端な完璧主義者でギャラもトップクラスのフィンチャーがドラマを撮るって?」と、当時は誰もが耳を疑った。

      

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