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『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』真田広之インタビュー

真田広之が語る自身の役者キャリア、そして『Mr.ホームズ』出演を通して気づいたこと

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 これまで数々の映像作品が製作され、「最も多く映画化されている主人公」としてギネスブックに認定されている“名探偵シャーロック・ホームズ”。3月18日に公開される『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』も、シャーロック・ホームズが主人公のミステリー映画だ。死を前にしたホームズが、引退の原因となった未解決事件に再び挑むという、一風変わった原作小説の映画化作品で、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ、『X-MEN』シリーズのイアン・マッケランが、現役のホームズと引退後のホームズを演じ分けている。メガホンを取ったのは、マッケランとは『ゴッド・アンド・モンスター』でタッグを組み、『ドリームガールズ』『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン』シリーズなどの大ヒット作も手がけてきたビル・コンドン監督。そして、日本に訪れたホームズを案内する日本人ウメザキ役で、『ウルヴァリン:SAMURAI』『47RONIN』など、現在ハリウッドで活躍する真田広之が出演している。リアルサウンド映画部では、真田に電話取材を行い、今回の作品に出演することになった経緯、撮影現場でのマッケランやコンドン監督とのやりとり、そして俳優としての今後の展望などについて話を訊いた。

「イアン・マッケランと一緒に仕事をして、老いることへの憧れが強まった」

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(c)Agatha A Nitecka / SLIGHT TRICK PRODUCTIONS

ーー今回の作品では、年老いたシャーロック・ホームズが描かれていますが、脚本を読まれたときどのような感想を抱きましたか?

真田広之(以下、真田):これまでのシャーロック・ホームズのイメージをひっくり返すような面白さを感じましたね。フィクションの中に生きる存在なのに、帽子を被らないとかパイプを持たないとか、既存のイメージを否定してしまう。原作のアイデアの勝利かもしれませんが、まるで実在の人物を描いているかのように錯覚してしまう面白さがありましたね。それをまたイアン(・マッケラン)が見事に演じていて。ヒーロー像やカリスマ性はそのままに、人間味のある弱い部分もさらけ出されていて、非常に親しみを覚えました。

ーーシャーロック・ホームズは過去に数々の映像作品が製作されていますが、これまでどの程度関わりがあったんでしょうか?

真田:シャーロック・ホームズは、数あるヒーローの中でも、何本の指かに入るキャラクターだと思います。演技をする上で抑えておきたいキャラクターのひとつだったので、子どもの頃というよりは、この仕事をするようになってから、クラシック作品を観たり、新作が公開されると観に行くようになりましたね。

ーー今回の出演の決め手は?

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(c)Agatha A Nitecka / SLIGHT TRICK PRODUCTIONS

真田:新しいホームズ像と、脚本の素晴らしさですね。この役をイアンが演じて、ビル・コンドン監督が撮るとどうなるんだろうというワクワク感があって。そして、シャーロック・ホームズの長い歴史の中で、よくぞ日本人の役を書いてくれたなと。また、自分に声をかけてくれたのが非常に嬉しかったですね。やはり英国ならではの作品ですから、まさか日本人の役がホームズの歴史の中に書かれるとは思ってもいませんでした。出たいと思っていたわけではないですけど、最初からありえないと思っていたんです。なので、最初にこの話がきたとき、どういう絡み方をするんだろうと興味が湧いてしまって。そして脚本を読んでみると、老いたホームズに深く関わる役で。友人のワトソンのフィクションを否定し続け、真実を追求し続けたホームズが、後悔や老いとの戦いの末に、最終的にウメザキのために人生初のフィクションの手紙を書くという。自分はそこまで関われるんだという喜びを感じましたね。

ーーイアン・マッケランとビル・コンドン監督は、『ゴッド・アンド・モンスター』(98)に続き、2度目の主演・監督タッグですね。

真田:彼らの素晴らしいチームワークの中に飛び込んでいく感じだったので、僕としては非常にやりやすかったです。すでに空気感ができあがっているところに自分が絡んでいくという、安心感がありました。実際に現場で監督とイアンの信頼関係を目の当たりにして、2人が同じものを目指しているんだなというのがすごくわかったことがあって。何度もテイクを重ねていろんなパターンを撮っていく中で、イアンは僕がいけたと思った時に、親指を立ててウインクをしてくれるんです。その姿は監督には見えていないんですが、イアンが親指を立てた時、必ず監督からOKの声がかかるんですよ。それを目の当たりにして、2人が必要としているものがまったく一致しているんだなと思いましたね。僕との共演シーンでのイアンは93歳の設定で、毎朝1時間半〜2時間かけてスペシャルメイクをしていたんですが、もうメイクをして衣装を着た瞬間にホームズになるんです。ずっとその空気感でいらっしゃったので、そこに老人のホームズがいると思うと、自分もただウメザキでいればいいんだと。当然、“サー・イアン・マッケラン”のオーラはあるんですけど、威圧感とかはまったくなくて。お互い役として向かい合っていればいいんだ、どんと飛び込んでこいよ、というような空気感だったので、非常にやりやすかったですし、さすがだなと思いましたね。

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(c)Agatha A Nitecka / SLIGHT TRICK PRODUCTIONS

ーーイアン・マッケランから学ぶことはありましたか?

真田:年齢を重ねられて体力的には大変になっていくとは思うんですけど、心のキャパシティはどんどん広がっていくんだなと思いましたね。技術を身につけ、地位も築き、キャリアを重ねても、決して情熱を失わない素晴らしさですよね。たまに子どものようにチャーミングな笑顔を見せたり、子どものような行動をしたりするんです。いろんなことに対する興味や感受性、遊び心といったものを失っていない。そのあたりは非常に魅力的でした。どのようにシワを刻んでいくかというのは、昔から課題だなと思っていて。年に抗うのではなく、ちゃんとその歳その歳、外見的なシワはもちろん、心のシワも刻んでいく。どうやったらあんなに素晴らしい歳の取り方をできるんだろうという先輩方が、周りにいっぱいいたり、一緒にお仕事をさせていただいたりもするので、イアンと一緒に仕事をして、ますます老いることへの憧れが強まりましたね。

ーー撮影中に話をすることも多かったんですか?

真田:撮影が始まる前や撮影後、みんなで食事をするときなどは、役とはまったく違う、面白いジョークも言うポップなお兄さんという感じで、すごくお茶目な姿も見せてくれたんですが、撮影中は役に入り込んでいたので、あまり話をしなかったんですよ。撮影が終わって、映画が完成して、ニューヨークやベルリンのプレミア、いくつかのパーティを終えたあとに、彼が僕に「現場で会っていたときは、ウメザキそのものだと思ってた」と言ってきたんです。実際に僕がそういう人間だとしか思っていなくて、撮影が終わってパーティなどを重ねていくうちに、まったく違うことに気付いたと。「誤解してたよ。現場では完全に役を演じてたんだね」と言ってくれたのが非常に嬉しかったですね。

     
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