杏と長谷川博己の“おかしな関係”が織り成す世界ーードラマ『デート』スペシャル版に寄せる期待

 今年1月から3月にかけて、フジテレビの「月9」枠で放送されたドラマ『デート~恋とはどんなものかしら~』。そのスペシャル版が、9月28日(月)、夜9時から放送されることが発表された。その情報を目にしたとき、思わず「わっ!」と声を上げてしまった。だって、あれほど毎週観るのが楽しみだったドラマなんて、ホント久しぶりのことだったから。

 他人の感情を察したり、空気を読むことができず、何事も論理的で理路整然としていなければ納得のいかない超理系女子、藪下依子(杏)。そして、自らを“高等遊民”と称し、働きもせずに母とふたりで実家で暮らしながら、自室で文学、映画、漫画、アニメなど、趣味の世界に浸ることを最大の喜びとするオタク男子、谷口巧(長谷川博己)。親を安心させるため、そろそろ結婚を考え始めるものの、恋愛どころか他人とのコミュニケーションすらおぼつかない、欠陥だらけのアラサー男女が出会い、互いに惹かれ合う――どころか、水と油のごとく反発し合い、毎回「デート」をするたびに、激しい口喧嘩を繰り広げるという「あらすじ」を書いてみたところで、まったくラブストーリーとは思えないこのドラマ。

 しかし、口喧嘩をするたびに、そこに居合わせた人々を置き去りにして、ふたりの世界に入ってしまうほど互いにヒートアップしてしまうこの関係って、一体何なのか。えっ、これが恋ってやつなのか? とまあ、近年の日本では珍しいほど痛快な、いわゆる「ラブコメ」ドラマだったのだ。杏と長谷川博己という、パッと見は確かにおかしな感じだけれど(あくまでも役柄の話です)、よくよく見ればどこか可愛らしさのある主演ふたりの魅力もさることながら、ふたりを取り囲む人々――依子の父親(松重豊)と母(和久井映見)、依子に恋心を抱く好青年・鷲尾君(中島裕翔/Hey! Say! JUMP)、そして巧の母(風吹ジュン)と巧の幼馴染の兄妹である宗太郎(松尾諭)と佳織(国仲涼子)が、いずれもちょっとおかしいけど、どうにも愛おしくてたまらいのだ。特に、主人公ふたりに密かな恋心を寄せる、鷲尾君と佳織の切ないこと!

 毎週観るのが楽しみだったのは、物語の続きが、ふたりの恋の行方が気になったから――だけではない。むしろ、依子と巧を中心に、上記の人々が織りなす、“『デート』の世界”そのものに触れることが、とにかく楽しかったのだ。そんなドラマって、結構珍しい。だけど、数年前の「最高の離婚」同様に、こうして特に高視聴率だったわけでもないのに「続き」が作られるドラマは、そういうものなのかもしれない。あの世界に、また触れたい。とはいえ、その「作り」の部分――膨大な台詞が書き込まれた脚本と、おかしみのなかに巧みな仕掛けを毎回用意している演出も、とにかく見事だった。

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