ORESAMAがメジャー1stアルバムで表現したこと「楽しさも切なさもポップスに昇華できる」

ORESAMA、メジャー1stALでの表現

 ORESAMAが、4月11日にメジャー1stアルバム『Hi-Fi POPS』をリリースした。同作はORESAMAが再メジャーデビューして以降のシングル3作『ワンダードライブ』『Trip Trip Trip』『流星ダンスフロア』を含むアルバムとして、アニメタイアップを経てさらに進化した2人の音楽を楽しむことができる。

 リアルサウンドでは2人にインタビューを行い、アルバムの制作秘話やシングル3作を経験したことで掴んだ新たな表現、アルバムに“連れて行けた”楽曲群のエピソードなどを語ってもらった。(編集部)

「リード曲は『私が原作なんだ』と気合いを入れた」(ぽん)

ーーメジャー1stアルバム『Hi-Fi POPS』は、ORESAMAのこれまでを大事にしながら、再メジャーデビュー以降のチャレンジも詰め込んだ作品になっています。

ぽん:2015年にインディーズで1stアルバム『oresama』を出していたので、アルバムとしては2枚目ですが、メジャーとしては初めてですし、タイアップの楽曲でORESAMAに興味を持ってくださった方がアルバムを聴くときに、明るくて楽しくてポップな一面だけではない部分も見てもらえる、自己紹介のようなアルバムにしようと思って作り始めました。

小島:アルバムは名刺代わりってよく言われますが、まさにそんな一枚だとと思っていて。もちろん『oresama』もそうなんですけど、数年経てば名刺の役職も変わるじゃないですか。アップデートというか、アップグレードというか。昔がこうだったから今回はこうというより、今できることを詰め込んだ作品になりました。

ぽん:そんな作品で3曲目に「cute cute」を持ってきたのは、私たちにとっても挑戦だったと思います。1曲目が「Hi-Fi TRAIN」で、2曲目が「流星ダンスフロア」というのは自分たちの中でも間違いないだろうと思っていたんですが、新しい部分も早い段階で見せたかったので。

ーー「cute cute」には驚きました。ジャズ・スウィングの要素を取り入れた楽曲ですが、サックスは生音ですよね?

小島:この曲は、武田真治さんに、サックスを吹いていただいたんです。以前に武田さんのラジオに出演させていただいたことがあって、是非演奏して頂きたいとお願いしたら快く引き受けていただけて。

ーーこの曲もそうですし、今回のアルバムは生音の要素が要所でいいアクセントになっていると思います。これまでのORESAMAにはない立体感が備わったというか。

小島:それも「ワンダードライブ」以降できるようになった新しい挑戦ですね。「SWEET ROOM」のピアノとエレピ、「cute cute」のサックスもそうですし、アナログシンセもメジャーデビュー以降は実機のもので入れるようになりました。インディーズ時代からある「綺麗なものばかり」と「銀河」はギター以外全部打ち込みだったんですけど、今回はアルバム用のアレンジとして、アナログシンセを足していたりもします。

ーーアナログシンセを使うことなどに関しては、「流星ダンスフロア」でTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの3人と一緒に曲を作り上げたことが一つの到達点になっているような気がします。

小島:たしかに、僕としてもこの曲以降はアナログシンセやドラムマシンを想像しながら曲を作るようになっています。プロデューサーの佐藤(純之介)さんがアナログシンセの好きな方で、「ワンダードライブ」からアナログシンセに差し替えてもらうようになって、楽しさや良さを知ったんですけど、「流星ダンスフロア」でアナログシンセだけでなくSimmonsのドラムマシンなどを入れていただいたりもしました。もちろん、打ち込みには打ち込みの良さもありますけど、実機も実機で違う味を持っていて、この曲はその2つがうまく融合して、サウンド面でこれまでにない新しい曲ができたことが大きかったんだと思います。

ーー「Hi-Fi TRAIN」もベースが生音ですよね?

小島:はい。田辺トシノさんが弾いてくれています。

ーーfhánaのレコーディングでもおなじみの田辺さんですね。ギターもいつもと違ったアレンジ、アプローチに聴こえるのですが、これはどういった工夫を?

小島:アルバムの中でこの曲だけ、fhánaのyuxuki wagaさんにリアンプをしてもらったんです。自宅PCでライン録りしたものをスタジオのギターアンプに流し込んで、そこから鳴っている音を録音するという手法を教えてもらいました。アンプの空気感とかリバーブ感まで収録できるので他の曲と違って聴こえると思います。最近はwagaさんとギターの話をよくするようになったんですけど、あれは沼ですね(笑)。

ーー機材好きのレーベルメイトが多いですからね(笑)。「ワンダードライブ」以降といえば、テンポ感もかなり幅が広がりましたね。

小島:BPMについてはかなり鍛えられました。速い曲を作るということが今までなかったので。

ぽん:「SWEET ROOM」くらい遅いのもありますし。

小島:そう。BPMが鍛えられたことで曲にも幅が生まれて、ライブにも緩急がついてきたので。

ーー先日のライブでも、はっきりとしたバラードパートがありましたね。ぽんさんとしては、音がより立体的になったことで歌い手としての意識も変わったのでは?

ぽん:歌の意識とは違うかもしれませんが、いま、すっごく楽しいんですよ。小島くんが別のユニットや楽曲提供での経験も踏まえてどんどん新しい扉を開いていて、「Hi-Fi TRAIN」や「流星ダンスフロア」のような素敵な楽曲も生まれてきて、私自身の刺激にもなるし、色んなテイストの楽曲を歌えることが純粋に嬉しくて。「流星ダンスフロア」は、これほど私たち以外の人が楽曲の中に入ってきたことはなかったので、やりたいことがやり切れたなという印象でした。これを作ってから「Hi-Fi TRAIN」ができたというのは、自分たちのなかでも大きかったです。

ーー作詞の面ではどんなことを心がけましたか?

ぽん:シングル3枚はすべてORESAMAとアニメ作品との出会いを経て作られた楽曲なので、映像的にもイメージがしやすいんです。その曲たちを引き連れたリード曲を作るということで、「私が原作なんだ」と気合いを入れて取り組み始めました。そのぶん時間も掛かって、歌詞の書き直しも今までで一番多いんです。どうやったらこの曲をもっと映像的に伝えられるのかとすごく考えましたし、だからこそ書き上がったころには可愛くてしょうがなくて。

ーー「Hi-Fi TRAIN」の歌詞が難産だったということもそうですし、アニメと関わったことでORESAMAとしての表現にも違う視点が加わったんですね。

ぽん:タイアップをいただいて歌詞を書くときは、その作品と自分との重なる部分を拾い集めると決めていて。アニメ作品のための曲だけど自分たちの曲でもあるので、そこを絶対に変えたくはなかったですね。たしかに、今までとは違う視点というか、気づきのようなものはすごく増えていると思います。

ーーそういう意味で歌詞の変化をすごく感じ取れるアルバムにもなっているなと感じました。ポップであることはORESAMAの通底するコンセプトとしてあったと思いますし、その枠からは大きくはみ出してはいないんですが、大人っぽい表現や切ない・悲しいものもトータルでポップに表現できているような気がして。

ぽん:「ねぇ、神様?」を作ったときに、自分の明るいとはいえない部分を掘り下げつつ、ORESAMAのなかで自分を表現していくことに手応えを感じたのは大きいですね。それ以前にも、自分の弱い部分やずるい部分、嫌われたくないと思う部分とも徐々に向き合い始めた時期があって、その時は歌詞を書いては小島くんに送っていて。そのなかでできたのが「綺麗なものばかり」と「誰もが誰かを」の2曲でした。今のORESAMAは、楽しさも切なさも前向きな気持ちも、小島くんの作る踊りだしたくなるような曲に乗せるとポップスに昇華できるんだって気づいたんですよね。

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