ラックライフは“あなた”のための音楽であり続けるーーリキッドワンマン公演を振り返る

ラックライフ、リキッドワンマンレポ

「音楽だけをまっすぐやっています。あなたに刺さって抜けない音楽を! ブッ続けていきます!!」とPON(Vo/Gt)は叫び、ギターを力強くかき鳴らした。

 2008年に結成、愚直なまでに真摯な言葉と音を、大阪は高槻発の4人組バンド、ラックライフは約10年にも渡り紡ぎ届けて続けてきた。それは年間100本以上にも及ぶステージを積み重ねたインディーズ期、『文豪ストレイドッグス』のテーマを手掛けたことで、より多くのリスナーに彼らの歌が届き始めた2016年5月のメジャーデビュー以降も変わらず、彼らの音に触れた人全ての耳に寄り添い続けている。

 そんな彼らにとって、2017年はエポックと言える一年であった。3月15日の結成日に発売されたメジャー1stアルバム『Life is beautiful』は彼らがこれまで築き上げてきたグッドメロディと人生讃歌が高いレベルで結実した1枚に仕上がり、春開催のロングツアー『生きてるだけで丸儲け』では各地で満員御礼状態。そして荒々しさと生々しさが混然一体となった4thシングル『リフレイン』で次なる扉を叩き、日々進化の一途をたどりつづけた。

PON(Vo/Gt)

 そして、昨冬から今年1月18日にかけて開催されたツアー『Change The World』は、ラックライフ史上最大の挑戦となった。2018年、結成10周年イヤーの幕開けを飾る会場は恵比寿LIQUIDROOM。昨年2月にワンマンを行ったShibuya WWWから約2倍のキャパを誇る会場だ。取材時、PONは「夢のよう」と素直な驚きをもって語ってくれた、彼らにとって高き壁。「どうなるか?」と4人はSNSで期待と不安を交互に綴っていた。して、蓋を開けてみればチケットは即完売。扉を開けると、眼前にはフロアに足場がないほどの人で埋め尽くされている。

 暗転していく場内。SEが鳴り響く中静かに現れるメンバー……一人、モニターに足をかけ、フロアを煽りまくるLOVE大石(Dr)を除いて。

LOVE大石(Dr)

 「一人ひとりに向け、声を枯らして歌います」という全力宣言から「風が吹く街」で幕を明ける。その後も「ブレイバー」「フールズ」とファストナンバーで一気に、ステージとフロアとの心の距離を縮めて行く。中でも「フールズ」では<一緒にやってくれる人がいる>のフレーズ後に「アンタらのことやで」と、“ニクい”一言。場内に集まった全員へ向けた、彼らなりの歓待だ。

ikoma(Gt)

 たく(Ba)と、大石のリズム隊は、複雑なビートを生み出すも決して見せびらかすこともなく、涼やかにバンドのダイナミズムを支える。ikoma(Gt)もソリッドでありながら温かみを感じさせるメロディを響かす。彼らが生み出す虚飾を取り払った驚くほどにストレートな音が、PONの言葉を際立たせていく。PONは曲毎にフロアにいる一人ひとりの“あなた”に向け、時には優しく時には力強く、生きる意味と幸せを投げかけていく。言葉には言霊が宿るというが、まさに彼の言葉には“生”が宿る。PONが言葉を発するだけで会場が躍動するのだ。ラックライフのライブに派手な演出やギミックはない。剥き出しの音と言葉、たったこれだけで十分なのだ。

たく(Ba)

 しかし、タイトな演奏とは裏腹に、PONとikomaによる夫婦漫才を観ているかのようなやりとり、そのやり取りを隣で優しく見守るたくの朴訥とした人柄、とにかくイジり倒される大石と、ユルさの極まりのようなMC。飾らないにもほどがある彼らの人柄、だからこそ裸の心を唄う歌に一層の説得力をもたらすのかもしれない。

 序盤戦のハイライトを運んできたのは、身もふたもないほどのダンスミュージック「ラブリープリティーミュージック」。サビで巻き起こる<ダンスダンス踊りはしないが>のコールアンドレスポンス。しかしこの日は多くの初ラックライフ体験者が集まったようで、照れからか中々声が場内に響かない。業を煮やしたPONは「僕は悲しい! 今日はありがとう、帰ります!!」とイジワルな煽り。自分たちは真剣に“あなた”と向き合っているから、あなたも真剣にラックライフに向き合ってほしい、という彼なりのお茶目(?)な試練。この一言に刺激されたのか、徐々に熱を帯び始める場内はラストのレスポンスで大声援を送る。曲終わり「よくできました」の一言に、場内中から笑顔がこぼれた。間違いなくこの瞬間にラックライフは会場中の世界を“変えてしまった”。

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