シングル『リフレイン』リリースインタビュー
ラックライフ PONが語るアニメ『最遊記』楽曲に込めた思い「伝えたいものがある、だからこれからも続けていく」
かつて、ここまで“重い”ラックライフは聴いたことがない。今春発売となったメジャー1stアルバム『Life is beautiful』で人生讃歌を高らかに謳った彼らが、『最遊記RELOAD BLAST』(AT-X、TOKYO MXなど)のエンディングテーマとして起用された今年初となるシングル『リフレイン』で描いたのは、自分の弱さをありのまま曝け出し、必死にもがき葛藤する己の姿だ。その言葉につられたのか、サウンドも今までにないほど荒々しい仕上がりに。そして同時に封入された楽曲も、生きることの重みを切々と歌い上げる楽曲が揃った。ラックライフいち“重い”作品である3rdアルバム『my contents』でも聴かれなかったほどシリアスだ。
なぜここまで剥きだしの重さを歌おうとしたのか? ラックライフのフロントマンであるPONに直撃。彼から返ってきたのは、歌への覚悟、怒り、そして“世界”というキーワードであった。(田口俊輔)
「こんなにドロドロとした感情は表に出すべきではないと思っていた」
――『最遊記RELOAD BLAST』のエンディングテーマとして起用されると聞いた時、どう思いました?
PON:マジか!? ってなりましたよ。小中学生の頃、兄弟で『最遊記』にハマってましたから。決まったとき「お前、スゲーな!」って、お兄ちゃんからLINEが来ましたもん。まぁ、無視しましたけどね(笑)。
――なぜ!?(笑)。
PON:「スゴイやろぉ?」と、羨ましがらせたくて(笑)。
――(笑)。小中学生の頃にハマったアニメの主題歌を、自分がまさか手掛けるなんて夢のようですね。
PON:ガキんちょの頃の俺に教えてやりたいですよ。「お前、『最遊記』のエンディング歌うねんで」って。きっと、信じないやろうなぁ。
――ちなみに、思い入れのあるキャラは?
PON:昔は猪八戒やったんですけど、今観てみると沙悟浄がメッチャかっこいい。小さい頃は一歩引いて冷静なキャラがカッコいいんですけど、今は悟浄みたいなアホで色んなものに振り回されるんやけど、ピュアなところに惹かれるんですよ。歳を重ねて、キャラの魅力が変わってくるのもええなぁと。
――タイアップのお話はいつ頃聞いたのですか?
PON:これは言っていいかわからないんですけど、タイアップの話があるかもしれへん、という噂を小耳にはさんで。なんの作品やろ? と気になりすぎて、一人勝手にネットで夏放送アニメ一覧を調べて。いろんなアニメがバーッ! と並ぶの中に『最遊記』あるやん! と気づき、『最遊記』やったらメッチャええなぁと妄想していて。そうしたら「タイアップが決まりました。『最遊記』です」と。もう、子どもかと思うぐらいに、はしゃぎまくりましたね。(笑)。
――「リフレイン」はどのように作られていったのでしょうか?
PON:「リフレイン」は、「いつかこんなことやりたいね」と思って、骨組みだけ作りかけておいたストックの中の一つで。実は『最遊記』のタイアップとして提出しようと思っていたのは2曲目の「存在証明」の方で、「リフレイン」はカップリングにする予定やったんです。それで、2曲とも詰めていくうちに、「リフレインの方がええんちゃう?」と「リフレイン」に決まって。思ってたんとは違うけど、そう言われればピッタリかもと納得。なんで、決まってからは、大急ぎで2曲とも歌詞を書き直しました。
――全く違う内容だったんですね!
PON:もう全然。原型がない。最初の「リフレイン」は「もう、こんな自分ダメだ~……」と、弱気な自分の足掻こうとする姿を歌った内容でした。「存在証明」は音に関してはビジョンが固まっていたんですが、歌詞に関しては、途中まで書いたものの全然先の展開が思い浮かばなくて。なので「『リフレイン』が表題に決まりました!」となった瞬間に、「よし、好き放題書ける!」と己を解き放ちまして、ようやく「存在証明」は形にできました。
――歌詞作りの際、「リフレイン」はどういった部分を作品世界にリンクさせていったのでしょうか。
PON:さっきも言ったように、元々は「理想の自分になりたいのに、なれない。頑張りたいのに……」という弱気な気持ちを綴っていて。でも『最遊記』は、三蔵一行はもちろん、敵までみんな超強気でキレまくるキャラばかり(笑)。中でも、三蔵はメッチャカッコ良くて「俺は死ぬまで俺の味方だ!」と衒いもなく言えちゃう。これは弱気な俺を歌っていたら全然合わんなぁと思い、“強さ”に繋がる部分を探って。俺の中の強さ=自分の意地でも曲げたくない部分。その曲げたくないものって音楽しかない。俺は歌を作る時には、こんな気持ちを届けたいという強い信念があって。色々な声が届くけど、それに折れず信念を曲げずに自分の気持ちを歌い続けること。これが強さになっていくなぁと思い、俺の歌に対する決意みたいなのを込めたらきっと繋がるんやないかな? と思って。
――その強さは後半やサビで大爆発しますが、多くの部分では元の歌詞のように“弱い自分”との長い葛藤がつづられています。
PON:ここまでカッコイイこと言いましたけど、やっぱ否定の意見を聞いたらメッチャ落ち込みますので(笑)。でも、奮起して「なにくそ!」と思い続けていられるからこそ、今でも歌っていられるんやないかな。
――“なにくそ!”精神は、<散々ですが、ふんばって>というフレーズに表れていますね。
PON:「うるせぇ、わかってるわ!」感が出まくりですね(笑)。ラックライフは基本俺が歌詞と曲作りをしていて。中でも曲作りは最初一人からのスタートで、鼻歌から始まったり河原でアコギ弾きながらできた曲を自分の中で固めて、「これは誰もが唸るんちゃうか?」と自信をもった形にしてメンバーに渡すわけです。すると「ええやん!」となる時もあれば「う~ん、それはどうなん?」と、自信を見事打ち砕かれて、ああじゃ、こうじゃ言われることもある(苦笑)。そう言いあって作業ができるのは、信頼があるからこそやし大切。それでもボコボコに言われるんはツライ。しかもメンバーがOKを出しても、その先に事務所とレーベルが待っていて、アニメのタイアップなら制作会社も絡んでくる。それら全てをクリアして、CDという形でやっと世に届けたと思ったら、今度はリスナーからの批評も待っている。もう、何かと言われ続けるのはしんどいわぁと。この先もずっと批判に晒されながら続けていくのかぁと思ったら、心が折れそうになります。それでも、自分が表現したい、伝えたいものがある。だからこれからも続けていくんやという決意が、とにかく入ってるんです。
――<もう嫌、嫌、嫌 なにが嫌?なの、かな>という二行は、PONさんの葛藤と決意が混然一体になってる。
PON:感情がグッチャグチャですよね(笑)。けど、音楽は“やらされている”ではなくて、“やろう!”と思ってやっていることですから。バンド以外の人生だってあるのに、なんで好きでこんなしんどい道を選んだんやろ? と思うことばかり。でも好きでしょうがない。そのジレンマがガッ! と込められすぎていますね。最初は、こんなにドロドロした感情は表に出すべきではないと思っていたんですけど、『最遊記』のキャラクターたちに刺激されて出てきた部分で、ならば胸張ってこれが俺の本音や! と言わなアカンと。こうして引き出しをガッと開けてくれるのが、タイアップの面白さですね。
――サウンドも今までのラックライフの音にはない“重さ”を感じます。16ビートなのに軽快さがない。
PON:最初お話をいただいた時にはザックリと「ジープが砂漠を走るイメージでお願いします」という注文が来て。「な、なんやそれ!?」と(笑)。こんだけ刻み続ける曲は今までなかったですね。新しいことは常に挑戦したいし、『最遊記』のエンディングテーマだから違うアプローチをやりたいなと。結果、荒々しいというか、怒りが込められましたね。音まで剥きだしなんは、大変(笑)。