シェネルが語る、ラブソングを歌い続けて感じたこと「言葉を超えたフィーリングで繋がっている」

シェネル、ラブソングを歌い感じたこと

 シェネルが、12月6日に『10th Anniversary ALL TIME BEST』を発売する。デビュー10周年を記念した初のオールタイムベストとしてリリースされる本作には、「Happiness」(フジテレビ系ドラマ『ディア・シスター』主題歌)、「Destiny」(TBS系金曜ドラマ『リバース』主題歌)、「ビリーヴ」(映画『BRAVE HEARTS 海猿』主題歌、「ベイビー・アイラブユー」、「君に贈る歌 ~Song For You」など、時代を超えて愛されるラブソングの数々から、2018年2月公開の映画『今夜、ロマンス劇場で』主題歌である新曲「奇跡」までを収録。シェネルの今までとこれからが詰め込まれた充実の作品に仕上がっている。

 今回リアルサウンドでは、来日中のシェネルにインタビューを行った。多忙を極めた2017年の活動の振り返りから、拠点とするLAでの生活と自身のアーティストとしての歩み方についてまで、ありのままの思いをストレートに語ってもらった。(編集部)

アーティストは、まるで「器」のようなもの

ーー2017年は『Destiny』、『メタモルフォーゼ』、そして『10th Anniversary ALL TIME BEST』と、非常に多作な1年となりました。

シェネル:クレイジーだったわ、1年の間にアルバムを3枚もリリースするなんて!(笑)。驚いちゃうくらいだけど、とっても恵まれた環境にいるという証拠だと思っています。

ーーそして、記念すべきデビュー10周年でもありますよね。振り返ってみて、どんな10年間でしたか?

シェネル:とても楽しかった! 音楽的にも様々な冒険をして自分自身も成長することができたし、今の自分は、デビュー当時とはまるっきり違う人になったようにも感じます。10年前、私はまだ23歳で、無知なベイビーって感じだった。とにかく目に入るもの全てが新しくて、めまぐるしくて、自分がやりたい音楽を模索するのに夢中だった、っていう感じ。今はもっと自分のビジョンがしっかり、ハッキリとしているの。でも、もしかしたら次の10年はまた違った自分の音楽性が生まれるのかもね。

ーー海外を拠点とするアーティストでありながら、日本でこれだけの人気を誇るシンガーもシェネルさんの他にいないのでは? と思います。

シェネル:そうね、日本のシーンでヒットに恵まれたことにはとても感謝してるの。こっちのチームは本当に素晴らしいし、すごくいい人たちに囲まれて仕事ができているなと思うわ。

ーー日本語で歌うことにも、すっかり慣れてきた?

シェネル:慣れてきたかな? 自分ではそう思うんだけど(笑)。

ーー母国語ではない日本語の歌詞に感情を込めることは、かなりの努力が必要なのではとも思うのですが、その点はどうですか?

シェネル:大半の曲は、事前に歌詞の意味を教えてもらってレコーディングに挑むんです。でも、すぐに一語一語を全て覚えられるわけではないから、理解するのが難しい時もあるわ。でも、必ずしも歌詞が重要ではないとも考えていて、それには二つ根拠があるの。一つは、メロディ自体にも、メッセージが込められているということ。だから、メロディ自体が、リリックが持つ意味を凌駕するような感覚があるわ。二つ目は、ファンやリスナーとは言葉を超えたフィーリングで繋がっていると感じていること。そこには、言葉以上に大事なものがあると思ってるの。私はアーティストだけど、アーティストって、まるで「器」のようなものだと思っているのね。アーティスト自身には人々にインスピレーションを与える力があるけど、何て言うのかな、みんなは私という存在を通り越して、フィーリングを感じてくれているっていうか……。言葉だけじゃなくて私の声やメロディを通じて、表現したいことを感じ取ってくれている。うまく説明できないけど、自分を越えたパワーで繋がっていると思っているの。

ーーもともと、ソングライターとしても活動している時期もあり、レオナ・ルイスといったシンガーにも楽曲を提供していましたよね。シェネルさんが楽曲を作るプロセスについて教えてもらえますか?

シェネル:曲によって、いつもプロセスは異なるんです。今回のベストアルバムには「奇跡」という曲が入ってるんだけど、これは多分、日本語で歌う映画やドラマのタイアップ曲としては初めて自分も作曲に参加した曲ね。完成するのに1カ月くらいかかったわ。曲を作る時は、リリックにメロディ、フィーリングや雰囲気、何もかもがフィットしないと意味がないと思っているの。それに、自分が歌っていてハッピーな気持ちにならないと、意味がないでしょ? どんな曲でも、その曲を大好きにならなきゃ歌わない、って自分に言い聞かせているんです。

ーーかつ、今年はシングル「Destiny」も各チャートで軒並み1位を獲得する大ヒットになりましたが、この曲に対する特別な思い入れは?

シェネル:もちろんあるわ! 正直なところ、こんな風に日本のシーンへとカムバックするなんて全然思ってなかったの。2015年に『シェネル・ワールド』を出した段階で、レーベルと結んでいた「5枚のアルバムを出す」という契約が終わったんです。だから、正直言ってその時は「これが日本でリリースする最後のアルバムになるかも」って思っていたの。J-POPはもう歌わないと決めていたし。だから、自分のホームであるLAに帰って、丸一年はどっぷり音楽の制作に時間を費やしていた。そうしたら、レーベルの方から連絡をもらって「「TVドラマの主題歌の話があるんだけど、興味ある?」って。「もちろん興味はあるけど、曲自体がとってもスペシャルなものじゃないとやりません」と返事をしたの。どうせカムバックするなら、日本のファンを驚かせるようなことがしたかったし、これまでと違うユニークなバイブスがないと意味がないと思って。それで、「Destiny」を聴いた瞬間……

ーー「これまでの曲と全然違うバイブスだ!」って?

シェネル:イエス! 聴いた瞬間、まるでがっちりと“Destiny(運命)”を掴んだような気持ちになって「やります!」ってすぐに答えたわ。日本にカムバックするにはパーフェクトな曲だな、と。

ーーこれまでのシェネルのシングルと比べると、どの楽曲よりも力強さを感じます。

シェネル:すごくエッジが効いていて、歌っていても楽しかったわ。

ーードラマ『リバース』の主題歌としても話題になりましたが、自分の楽曲がドラマや映画にフィーチャーされるときの気持ちって、どんな感じなのでしょう?

シェネル:それこそ、夢が叶ったという感じ。何て言えばいいのかな、テレビや劇場で自分の曲が流れてくるのは又とないチャンスだし、自分がやって来たことが報われた感じはします。説明できないくらい嬉しいことね。

ーーシングルを制作した後すぐに、アルバム『Destiny』を出そうと決めたのですか? この短期間でアルバムリリースにまで至った経緯は?

シェネル:そう、シングルを出したら勢いがついちゃって、アルバムも作りたくなってしまったの。実際、書き溜めていた曲がたくさんあったし、その中から日本語で歌いたい曲を選んでスタッフの方に伝えて、アルバム『Destiny』を制作していきました。だから『Destiny』は、これまでのアルバムの制作過程とは全然違う感じで進んでいったし、今まで以上にクリエイティブ・コントロールを任せてもらえて嬉しかったわ。

ーーしかも、ほぼ同時並行的に、インターナショナルなマーケットに向けて作ったアルバム『メタモルフォーゼ』の制作も行っていたんですよね? こちらの作品では全て英語で歌っているからか、より成熟した、リアルなシェネルという印象を受けました。J-POPのマーケットとインターナショナルなマーケットで同時に活躍していますが、それぞれの違いを感じることはありますか?

シェネル:<リアルなシェネル>という言葉は嬉しいな。『メタモルフォーゼ』は、もうちょっと成長したシェネルを表現したの。それに、普段おしゃべりをするみたいにナチュラルに自分のことを表現しているっていう感じで曲を書いたから、より素の自分に近いサウンドかな。確かに、J-POPシーンで歌っていると「本当の自分を知ってる人は少ないのかな」って思うわ。日本のファンが持っている私のイメージって多分、「ベイビー・アイラブユー」とかのスウィートなイメージだもんね。もちろん嬉しいことだけど、こういう一面もあるってことも知ってくれたらいいなと思います。でも、日本のチームとは今でも一緒に仕事をしてるし、みんなのことは心から信じているの。J-POPシーンのことを熟知しているプロデューサーたちと組むのは、音楽的にも本当に勉強になるし、そうすることで、私の表現方法と彼らのアイデアをミックスすることができるでしょ? だから、二つのシーンで活動するってことは私にとってもすごく重要なこと。日本のファンとだって、今もずっと繋がっているわ。

ーー海外向けのアルバムに関して付け加えると、<メタモルフォーゼ(自然力による変形・変容)>というタイトルもぴったりだと思いました。

シェネル:まさに次のキャリアへの移行期間という感じを表したかったんです。これまでの10年間は、次の自分へと変わっていくトランスフォーム期間だと思っていて、その気持ちをよく表現しているのが、このアルバムね。J-POPシーンとも距離を置いて、一人のアーティストとして自分のやりたいことに集中して作ったわ。

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