シェネル『Destiny』にこめられたR&Bシンガーとしての決意 “アップデート”されたサウンドを聴く

シェネル新作にこめられた“決意”

 ラブソング・プリンセスとしても名高いシンガー、シェネルが最新アルバム『Destiny』を発表した。約2年半ぶりとなる8枚目のアルバム。そして今年、2017年は彼女にとって歌手デビュー10周年目にあたるアニバーサリーイヤーだ。その意気込みの大きさは、まず表題曲でありリードシングルにもなった「Destiny」に最も顕著だろう。プロデュースと作詞を松尾潔、そして作曲とアレンジを川口大輔が手がけるという、この上ないコンビネーションによって完成した本曲は、TBS系金曜ドラマ『リバース』の主題歌にも起用され、配信チャート34冠の大ヒットを記録した。ストリングスとハイハットがミステリアスな雰囲気を増幅させ、冒頭から<傷つくことには慣れているけど/かなしむ人を無視できるほど器用にはできてない>とアンビバレンスな感情を吐き出すシェネルには思わずドキッとする。この曲で<It’s my destiny>と歌うのは、予期していたものとは異なる恋愛の現実と、それに抗おうとする彼女の希望であり、まごう事なき“大人のラブソング”だ。すっかり成熟したシェネルの歌声が、さらに楽曲へ説得力を持たせている。アルバムのリード曲なら、もっと明るく幸せな雰囲気に包まれた王道R&B楽曲も予想できたかもしれないが、トリッキーでクセのある(だからチャートを制した訳であるが)楽曲を選ぶところに、普通のポップシンガーではなく、R&Bシンガーとしての彼女の決意を垣間見た気がしたのだ。

 そしてその決意は、アルバムジャケットにも表れているようにも思える。近作はどれも柔らかでアンニュイなイメージを踏襲した、いわばアイドル然としたジャケット写真だったのが、『Destiny』ではそのイメージを刷新するように、クールな目線でこちらを見下ろすシェネルの姿が写る。

 この本作、何より驚かされるのは、そのサウンドのアップデート感でもある。西海岸のファンク・サウンドを思わせる「Heartburn」は、シカゴのサウスサイド出身、現在はLAを拠点とし、これまでにThe Black Eyed Peasからメアリー・J.ブライジ、クリス・ブラウン、ジョン・レジェンド、ニッキー・ミナージュなどそうそうたるアーティストのプロデュースに携わって来たキース・ハリスがプロデュースを担当。ダイナミックなボーカル・アレンジが映える「Remember My Name」はf(x)やEXOら、K-POPアーティストに楽曲を提供してきたジョン・メイジャーがプロデュースに携わる。他にも、フューチャリスティックな「Miracle」や扇情的な「Love Sick」、ダイナミックに歌い上げる「Love You Like Me」などは、実際にシェネルがUSのビートメイカーたちとともに作り上げた楽曲であり、これまで以上に思いっきり“攻める”シェネルの姿勢が感じられる。また、序盤に収録されている「Fun」はブルーノ・マーズあたりを彷彿とさせるディスコ・ブギーなビートに仕上がっており、それをしっかり乗りこなすシェネルにも脱帽だ。そして、本作に唯一のゲスト・ボーカルとして参加しているのは、日本が誇るレゲエ・プリンセスのMINMI。まるで昨今のカルヴィン・ハリスやリアーナあたりを思わせるトロピカルなトラックが特徴的な「Outta Love  feat. MINMI」では勢いあふれる二人のデュエットが楽しめ、真夏に向けてボルテージが上がる一曲に仕上がっている。もともとマレーシア生まれのアイランド・ガールであるシェネルにとっては、トラックとの抜群の相性を見せる、アルバム中のもう一つのハイライトとも言えるかもしれない。

 このアルバム全体のトーンを作り上げているのは、シェネルのボーカル・スキルはもちろん、歌詞の端々にも読み取れる彼女の強さだ。男女の出会いに関しても、ファンタジー目線で恋心を歌うだけではなく、「Miracle」では<欲しいなら欲しいと言って>と相手に迫るシーンを歌ってみたり、MINMIとの「Outta Love  feat. MINMI」では<君となら(wanna play)/しちゃってよくない?(いけないことも)>と、正直に感情をあらわにしてみせる。本稿冒頭で書いた通り、彼女は“ラブソング・プリンセス”としても知られる存在だが、本アルバムでより“ラブソング”の幅を広げて表現している姿にはとてもワクワクさせられたし、こうした感情表現のスキルこそ、世界基準の中で活動しているシェネルが最も得意とするところなのかもしれない。世界基準といえば、本作品の一部はビヨンセやアデル、ジャスティン・ビーバーなどの作品を手がけ、2017年4月に逝去したエンジニア、トム・コインがマスタリングを仕上げている。

 まるで万華鏡のように、シェネルの魅力が多元的に楽しめるこの作品。気分も開放的になる夏が到来する前に、ぜひ一聴されることをお勧めしたい。

■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
ブログ「HIPHOPうんちくん」
Twitter 
blockFM「INSIDE OUT」※毎月第1、3月曜日出演

■イベント概要
『LIVE FREELY LINE MUSIC 2nd Anniv. SPECIAL』
日時:2017年6月23日(金)19:00〜21:40[L.O 21:40]
会場:ビルボードライブ東京(港区・六本木)

入場料無料
出演アーティスト:シェネル and more…
MC/ゲスト:藤田琢己/こにわ

<予約方法>
イベント予約方法の詳細は、Billboard JAPAN LINE公式アカウントにて

<お友達追加方法>
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もしくはQRコード or “友だち追加ボタン”から追加

<イベント同時生配信>
イベント当日の模様をLINEのライブ配信プラットフォーム『LINE LIVE』で生配信
LINE LIVE番組『LIVE FREELY LINE MUSIC 2nd Anniv. SPECIAL』

日程:2017年6月23日(金)20:00 スタート予定

シェネルAL『Destiny』ダイジェスト映像
シェネル『Destiny』

■リリース情報
アルバム『Destiny』
発売:2017年6月14日(水)
価格:¥2,500(税別)

アルバム『Destiny』iTunes配信リンク

<収録楽曲>
01 Destiny ★TBS系 金曜ドラマ『リバース』主題歌
02 Heartburn
03 Fun
04 Fall In Love Again
05 Miracle
06 Love Sick
07 Love You Like Me
08 Outta Love feat. MINMI
09 君がいれば
10 Remember My Name
11 終わらないラブソング ~Like A Love Song

シングル『Destiny』
発売中
価格:¥1,080(税込)
 
■イベント概要
シェネル アルバム『Destiny』ミニライブ&2ショット撮影会
2017年6月18日(日)17:00〜 
東京都:ヴィーナスフォート 2階教会広場

※参加方法 :イベントの観覧はフリー。当日、教会広場城門横もしくは教会広場特設コーナーでのアルバム『Destiny』購入者対象。
※2ショット撮影会は「イベント参加券」1枚につき1回参加可。

CD販売開始時間…14:00~
CD販売開始場所…14:00~15:00頃まで教会広場城門横
15:00頃以降~教会広場特設コーナー

イベント詳細はこちら

■配信リンク
シェネル「Destiny」
iTunes
レコチョク

■ストリーミング配信リンク
LINE MUSICシェネルアーティストページ

■歌詞
シェネル「Destiny」
シェネル「君がいれば」
シェネル「Love Sick」

■関連リンク
シェネル オフィシャルサイト
シェネル YouTube公式チャンネル
シェネル オフィシャルTwitter
シェネル オフィシャルInstagram

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