藤井麻輝が語る、新たなスタイル確立したminus(-) の音楽性「延々変わらない部分が再確認できた」

藤井麻輝が語る、minus(-)の音楽性

 minus(-)の新作ミニアルバム『R』が完成した。昨年森岡賢が急逝し、藤井麻輝のソロユニットとして再出発した新生minus(-)のデビューアルバムとも言える作品だ。新曲3曲とリミックス1曲、昨年のアルバム『O』収録曲「LIVE」のリメイクが収められ、YOW-ROW(GARI/SCHAFT)、菅波栄純(THE BACK HORN)、玲里、佐々木亮介(a flood of circle)など多彩なゲストを迎え、これまでのminus(-)の路線を受け継ぎつつ、新生面を開拓した意欲作である。(小野島大)

以前のminus(-)に比べると突き詰めっぷりは数段階上がってる

ーー新作ミニアルバムが完成しました。今回なぜタイトルが「R」なんですか。

藤井麻輝(以下、藤井):今回は全部ラブソングなんですよ。でもそのまま「L」にすると、ストレートすぎる。なら「R」かなと。RIGHTとLEFTでもあるし。「L」だとなんかね「DEATH NOTE」っぽくてイヤだったんですよ(笑)。

ーー(笑)そういうことですか。で、「R」だから、らんちゅうがカバー写真。

藤井:はい。あと「R」にはRejection(拒絶、排除)という意味もあるので。そこには森岡賢がいなくなった、という意味もある。

ーーアルバム『O』のインタビューで、新作は夏ぐらいに出したいとおっしゃってたので、ほぼ予定通りですね。構想段階から完成まで、スムーズに作業は進行したということでしょうか。

藤井:いや……がっつり作り込んでいる間は、すごくいいなと思ってたんですけど、ふと気づいたら、ちょっと違うなと思って。そこからちょっとだけ方向転換して出来たのがこれなんですよ。

ーーちょっと違う、とは?

藤井:えーと……よそ様の想像するminus(-)像と乖離しすぎてた……。

ーー「よそ様」って誰ですか(笑)。

藤井:(笑)要するに僕以外。

ーー森岡さんがいたころのような音を期待する人、ということですか。

藤井:そもそも、いない人のことを期待されても困るんで。それはないんですけど。要するに……踊れる要素? 

ーーなるほど。それで4曲目(「LIVE -advanced」。『O』収録曲のリメイク)を入れたと。

藤井:それもあるし。あとはほかの曲に関しても、今までみたいな性急なビートじゃないけど、踊れる要素を入れてみたんです。

ーーふむ。今作は最初から森岡さんがいない状態で作られた最初の作品なんですが、そもそもどういうアルバムにするつもりだったんですか。

藤井:いや、全然。そもそも作る時に構想めいたものを考えるタイプじゃないから。

ーー最初に作った曲はどれですか。

藤井:全部並行して作り始めるんですよ。なので全部同時っちゃ同時。ボツになった曲を含め、3〜4曲の原型が出来た時点で、アルバムの全体像が見えてきました。

ーーリメイクの4曲目を除いて、全編スロウからミディアムのダウンビート・エレクトロニカになってますね。

藤井:うん、僕だからそうなってしまう……のかな。

ーーそれで途中で、ダンサブルなものを期待する周囲の声と乖離していると気づいたと。

藤井:うん、そうですね。僕は1曲目から3曲目でも十分踊れるんですけどね。だから、僕なりのノレる感じ?

ーー1〜3曲目みたいな感じって、これまでのminus(-)にはなかったですよね。

藤井:うん、そうですね。それにここまでちゃんと練ってなかったし。

ーー以前のminus(-)は、あえて未完成の部分を残して仕上げていたわけですよね。ライブでバージョン・アップしていくという前提で。でも今作はかなり完成度の高い音源になっていると感じました。

藤井:そうです。今回も、まだ未完成ではあるんですよ。でも以前のminus(-)に比べると突き詰めっぷりは数段階上がってると思います。一人でやってるから(笑)。

ーー(笑)また身も蓋もないことを……たった1人で、新たにminus(-)の楽曲を作るということで、なにか思うところはあったんですか。

藤井:思うところ……はそんなにないですよ。

ーーとりわけ意識することもなく自然に。

藤井:自然に、というか惰性というかルーティンワークというか。

ーールーティンワーク!

藤井:だってねえ……(笑)作品は出し続けないと生きていけないので。生業ですから。

ーーでも藤井麻輝のソロを作るのとは違う意識なわけですよね?

藤井:うん……そのへんは微妙なところというか若干の葛藤があるんですけど……でも、まあ(今作は)ソロですよ。

ーー自分のソロを作るつもりで、自分のセンスで、自分の作りたいものを作った。

藤井:基本的な考え方としては。ただ、ソロの名義をminus(-)にしたっていうところで、若干の意識の違いがあって。

ーーあ、ソロの名義を藤井麻輝ではなくminus(-)にした、ということですか。これとは別に藤井麻輝ソロがあるのではなく。

藤井:うん、そう思ってます。

ーー2人メンバーがいたバンドを1人で受け継いでいる、という意識ではない?

藤井:うん。受け継いではいるけど、受け継いだのは屋号だけ、みたいな。

ーーその屋号がminus(-)である必要はあったんですか。

藤井:うーん……そのへんはいろいろ紆余曲折があって。最初はね、名義をきっぱり変えてもいいんじゃないの、と思ったんです。これ完全にソロだし。でいろいろ相談して……。

ーーminus(-)名義の方が良かろうと。

藤井:うん。

ーーでもminus(-)という名義だと、ファンも含め周囲が期待する音楽性が出てきますね。

藤井:うん、でもそこは変化として受け止めてもらえるという自負もあるので。

ーー2人から1人のユニットになったから当然変化はある。でもこれまでのファンにも納得してもらるような作品になったはず。

藤井:……と思いますが、そこらへんは発売してみんなに聞いてもらわないと、わからないですけどね。

ーーそうですね。先日のライブでも本作の曲はやってましたよね。反応はいかがでした?

藤井:非常に良かったです。格段に過去のとは完成度が違うので、いいとは予想してたんですけど。提示したいことが提示できるポテンシャルがある曲たちだから。ただそこに、ある1人の影が見えないことに対するネガティブな意見もあるかなという懸念もありましたが、それを払拭できるぐらい評判良かったから、まあ間違ってなかったのかな、と。

ーー一応評判を気にするんですね(笑)。確かに非常に完成度は高いし、これまでのminus(-)にはない音楽性も聞ける。でもminus(-)の作品としてもまったく違和感がない。特に1曲目から3曲目の流れはすごく良かったです。

藤井:うん、そう思います。

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