HEY-SMITH 猪狩秀平が語る、ライブとの向き合い方 「使命感はしんどいけど、夢がある」

ヘイスミ猪狩が語るライブとの向き合い方

 管楽器を擁し、スカ、パンク、ハードコア、メタルを飲み込んだダイナミックでラウドなサウンドで、全国のライブハウスを沸騰させているHEY-SMITH。2006年の結成から全国で草の根のツアーを行ない、作品の力はもちろん、ライブ、ステージの力でファンを拡大してきた、文字通りライブバンドである。2014年9月にはボーカルとトランペットのメンバーが脱退し、活動休止となるも、2015年4月には新メンバーYUJI(Vo/Ba)が加入、そして新たにかなす(トロンボーン)、イイカワケン(トランペット)を迎えた新体制で、2016年5月に最新アルバム『STOP THE WAR』をリリースした。

 よりロックなタフさも加わった強靭なアルバムを携えて、47都道府県ツアーを行ない、ファイナル公演は結成10年にして初のワンマンを、地元・大阪の府民共済SUPER ARENAで完遂。インディーズレーベル所属で、全編英語詞のパンクバンドでありながら、作品をオリコンチャートに叩き込み、アリーナクラスの会場を熱いキッズで埋めることができる数少ないバンドのひとつである。

 また、どんなに会場の規模が大きくなっても、ライブへの向き合い方、壮絶とも言えるほど高いボルテージで豪速球を投げつけるステージは変わらずで、そんなところにもバンドの姿勢がうかがえる。今回ファイナル公演を収録した映像作品『MORE FREEDOM』のリリースを機に、HEY-SMITHの「ライブ」について、猪狩秀平(Gt/Vo)に話を聞いた。(吉羽さおり)

「このタイミングはワンマンだって思っていた」

ーー3月29日には『STOP THE WAR TOUR』のツアーファイナル、地元・大阪の府民共済SUPER ARENA公演を収録したライブDVD/Blu-rayがリリースされます。まずは、新メンバーとなってのアルバム『STOP THE WAR』をリリース後、2016年6月からスタートした『STOP THE WAR TOUR』の47都道府県ツアーを振り返ってみていかがですか。

猪狩秀平(以下、猪狩):もう、忘れちゃったな(笑)。でも今は、終わってホッとしているという感じですかね。

ーー新メンバー3人が加わったバンド感はどうですか。

猪狩:いい意味で、そこまで干渉はしない。それぞれがそれぞれの時間を過ごしていることが多くて、飲む席はみんなで飲んだりとかで。移動の車では、一切話をしないんです(笑)。昔からですね。お酒の席とかでは、ひとつのテーブルでメンバーだけとかもあるし、それは楽しいんですけど。お互い干渉はしないですね。

ーーツアーファイナルのみワンマン公演で、しかも今回がHEY-SMITHにとって初のワンマンとなりました。映像を見ても、すごい光景ですよね。

猪狩:それは、嬉しかったですね。ワンマンやるのが初めてだったし、全部英語で、速い曲をやっているようなバンドが、アリーナでワンマンをするとかは、基本的にないもんやと思ってたから。

ーーそういうなかで、いつぐらいから大きな会場でもできるのではないかという実感や、手応えがありましたか。

猪狩:今回、アリーナを会場に選んだのは、大きなところでやっていこうという第一歩とかではなくて。ワンマンやったし、ライブハウスでいちばん大きなところだとZeppとか、なんばHatchとかSTUDIO COASTになると思うんですけど。もし、チケットが取れないとかで来れない人がいたらイヤやなと思って。これ以降、ワンマンをやる気が今のところ全然ないので。

ーーそうなんですか?

猪狩:それはずっと言っていて。最初で最後くらいの気持ちやったんで。だから、全員見に来れるような、デカイところでやろうと思って、アリーナを選んだんです。今後もっともっと大きいところで、どんどん広げていくんだという気持ちはそこまでないんです。やっぱり、ギターをジャーンって弾いてる感じとか、弦をどうはじいているかとかが、見えるくらいのところでやりたいっていう気持ちの方が強い。

ーー対バンでのライブを基本にしていくということですね。

猪狩:そっちの方が打ち上げが楽しいので(笑)。

ーーそこですか(笑)。ワンマンへのこだわりはなかったんですね。

猪狩:ないですね、あまりやりたくなかったし。でも、このタイミングはワンマンだって思っていたんですよね。新メンバーが入って初めてのツアーやし、あとは10周年やったので。そこはやりたかった。次やるとしたら、15年とか20年とか、そういうノリになると思いますね。

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ーーHEY-SMITHとしてライブをはじめた時は、自分たちはどういうふうに進んでいきたいか、何かビジョンはあったのでしょうか。

猪狩:バンドをはじめた時から、前作のアルバム『NOW ALBUM』くらいまでのイメージがありました。こういうCDを出して、こうなるんじゃないかなっていうイメージは、すでにありましたね。

ーーそれが一旦、なくなってしまった。

猪狩:そうですね。前のメンバーが脱退するとなった時に、なくなりました。新しくメンバーが代わった時に、もう一回広がりましたけどね。

ーーメンバーが脱退するとなった時に、バンドも解散してしまうかもしれないという話は、インタビューでも話していましたね。でも、周りのバンドたちはそれを止めてくれたんだと。

猪狩:結構、無理やり止めてくれて、引っ張り出すようなこともしてくれたし。ふと考えたら、バンド以外にやりたいこともあんまりなかったし。休止して何カ月か飲んだくれていたんですけど、全然おいしくなかったし、暇やったんですよね。お酒とかご飯とか好きやのに、全然楽しめていなくて。そういうことがめっちゃあって。もう一回、バンドをやりたいなとなったんです。

ーー活動休止している間は、どう過ごしていたんですか。

猪狩:めっちゃライブに行ってました。でも、情緒不安定な子みたいで、行ったら泣きそうになっちゃう感じですよね。バンドがポジティブなメッセージを言ってくれるじゃないですか。そういうのを目の当たりにした時に、「ああ、こういうふうに人に響いてるんや」って、その時思いました。バンドをやってる時は、他の人が言ってることも、ふーんって思っていたんです。別に、そんなに響かなかったんですよね。「この人は、こういう考え方やねんな」、「この人は、そういう生き様やねんな」って、普通に見てたけど。それがやたら、グサっと入るようになっていて。こうやってみんなライブ見てるんかなと思うと、余計にまたグサっとくるみたいな。

ーーそれでもう一回、やろうという気持ちにもさせてくれたり。

猪狩:休止して最初に見たのが、THE BONEZのライブやったんじゃないですかね。その時まだTHE BONEZをはじめたてで、PTP(Pay money To my Pain)からの流れがあったり、JESSEも当時はRIZEが結構ぐちゃぐちゃやったから。そういうのを見ていて、今こうやってステージに立っているバンドを見ると、俺もできるかもしれないとか思ったりして。かなり、勇気もらったライブではありましたね。

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