NONA REEVES 西寺郷太が語る、“歌謡曲”と向き合った20年 「自分で失敗して学んでここにいる」

NONA REEVES西寺郷太が語る、20年史

 NONA REEVESが、メジャーデビュー20周年を迎え、ベストアルバム『POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES』をリリースした。同作には、「WARNER MUSIC」(1998年)から「HEY, EVERYBODY!」(2009年)、そして新曲「O-V-E-R-H-E-A-T」を含む全16曲が収録される。

 1997年にメジャーデビューしてから20年。西寺郷太はプロデューサーとしても、そして奥田健介と小松シゲルはプレイヤーとしても、シーンで大きな存在感を発揮しながら、NONA REEVESとしてコンスタントに作品を発表してきた。変わりゆく時代の中でのバンドの立ち位置から、“日本の歌謡曲”の理想形、そして現在製作中だというオリジナルアルバムとこれからの活動について、西寺郷太への単独インタビューでじっくりと話を訊いた。(編集部)

「もう一個ギアを入れたいなっていう思いはずっとあった」

――3月8日に、20周年記念ベストアルバム『POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES』がリリースされましたが、その反響や手応えはいかがでしたか?

西寺郷太(以下、西寺):ここ数年は、マイケル、プリンスや、藤井隆さん、プロデューサーとして参加したNegiccoやV6などの話にプラスアルファでNONA REEVESの話をすることが多かったんです。今回は全面的にNONA REEVESとしての活動なので反響は大きかったです。あと、ニューアルバムのタイミングだと、どうしてもそのアルバムの話になるじゃないですか。だけど、今回はベスト盤、しかも20周年記念ベストなので……。20年っていうのは、世の中的にもいろいろ振り返りやすいのかも。ジャミロクワイがまた注目されているとか、そういうことも引っくるめて、90年代半ばあたりからの20年間っていうのが、自分たち的にも、世の中的にも、ある種一周回った感がある。というか、僕らはあんま変わってないんだけど、まわりがこっち側に寄ってきた感じもあって(笑)。今回のベストのタイトルに“POP’N SOUL”ってつけましたけど、80’s的な瑞々しいポップネスを切り取ったグルーヴが、2010年代になってからすごい増えてきている印象、ありませんか? それこそ、ブルーノ・マーズを筆頭に。

――だからこそ今、ノーナがベスト盤を出すことは、すごく意味があることのように思います。

西寺:しかも、最初にメジャー契約をしたワーナーミュージックに戻ってきたタイミングで、こういうベストを出すっていう。そういう意味で、僕らのやってきたこと/やっていることが、かなりわかりやすくなったんじゃないかと。僕も若い頃、ベスト盤から入ったアーティストが多いので。もちろん今は、ストリーミングサービスとかで聴くのかもしれないけど、「これまでの曲が200曲ぐらいあるのでどうぞ!」ではなく、今の人たちに焦点を合わせて、「ここからだったら2017年のノーナに入りやすいですよ」と提示することは、すごく意味のあることだなって。

――最近は、文筆業やテレビ、ラジオなどの出演などで西寺さんの存在を、果てはノーナの存在を知ったという人も多いようですし。

西寺:名前のあとにカッコでバンド名が入ってないことも結構多くて(笑)。ただ、それは僕だけではなく、ノーナの3人は、みんな今、同じような認識だと思うんですよね。奥田(健介/G)にしても小松(シゲル/Dr.)にしても、彼らはセッション・ミュージシャンとして売れっ子ですごく忙しいので、それぞれソロでやっていく道は見えているんですよね。ただ、そういうなかで、本体のノーナを何とかしたいなっていうのは、みんな思っていたことであって。もちろん、アルバムとかはずっと出しているし、同じペースでやれているので、それ自体はすごいありがたいことなんですけど、もう一個ギアを入れたいなっていう思いはずっとあったんです。で、そういう時期に、ちょうどワーナーから話がきたと。

――原点回帰じゃないですけど、メジャーデビューしたときの古巣であるワーナーに戻って心機一転、ノーナを頑張ろうと。

西寺:この半年、3人で会う回数がすごい増えました。バラバラの仕事をしているんで、ここ数年なかなか会えなかったんで。もちろんアルバムは出していたけど、みんなスキルが高いので、集中力でアルバムを作れていたというか。ここ数年は、メンバーの誰かがやりたいなら、それをやってみようっていうスタンスだった気もします。プロデューサーの冨田さんに任せたり。ちょっと偏っていても、誰か一人がやりたいと言ったものに、他の二人が乗っかるみたいな、そういうスムースな進め方を意図的にやっていたところがあるんです。前作『BLACKBERRY JAM』あたりからセルフ・プロデュースで三人のパワーを出さざる得ない状況を作ったんですが、今作り始めている新しいオリジナルアルバムは、更にお互いの意見をぶつけ合いながら作っているところがあって。お前はそうかもしれないけど、俺はこう思うとか。で、それが何か、かつてのワーナー時代を彷彿とさせるんですよね(笑)。今回のベストに新曲として入っている「O-V-E-R-H-E-A-T」も、そういうアプローチで作っていて。どうやったら今の人たちに届けられるのか、どうやったらこの国に脈々と続く「ザ・歌謡曲的」なものを飲み込みながら対抗、革新できるのかっていうのを、僕だったらジャニーズの仕事をした経験とかをもとに考えてるというか。

――3人が別の場所でそれぞれ培ってきた経験を、ノーナに持ち込むというか。

西寺:そうなんです。だから、ちょっと意図的に、お互いが「ここはポップソングとして弱くない?」みたいなことを指摘し合うみたいな感じで、今、アルバムを作っていて。それはすっごい大変な作業ではあるんですけど。ミュージシャンも40代になると、だいたい他の現場にいけばリーダーなわけです。自分の指示で現場は動く。でも、NONA REEVESで三人になるとそれぞれそうはいかない。今回のワーナー復帰っていうのは、そういう部分も含めて大きな意味があるなって、僕らは思っているんですよね。

――端的に言うと「ノーナをちゃんと売ろう!」みたいな。

西寺:ですね(笑)。もちろん、ノーナの場合、初週だけじゃなくて、地道に売れ続けるので、累計枚数はそんなに悪くないというか、結果は割と優秀なんですけど(笑)。他の皆が数字を落とす中で「常に微増」でキープし続けてきた。だから生き残ってこれたんです。ただ、次のアルバムでは、もっともっと上を目指せるんじゃないかっていう。そういうムードに今、なっているんです。

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