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ジョン・ライドンが語り倒す、表現者の哲学 「俺には飽くことのない知識への渇望と意欲がある」

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小野島大
洋楽
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 ご存じ、Sex Pistols/PiL(Public Image Ltd.)のフロントマンであり、パンクのトリックスター、ジョニー・ロットンことジョン・ライドンのインタビューである。彼は今月末に歌詞集『Mr. Rotten’s Songbook』を出版する予定であり、(https://mrrottenssongbook.concertlive.com/)、そのプロモーションという名目で実現したものである。彼の出版エージェントを通じて、ライドンの著書『ジョン・ライドン新自伝 怒りはエナジー』(シンコー・ミュージック刊)の訳者である田村亜紀氏の元に売り込みがあり、相談を受けた小野島大がリアルサウンドに記事化を提案した。インタビューは小野島が質問を作成し、田村氏に託す形で、電話によって行われた。先方からの提案もあり、昨年末にリリースされたPiLの『メタル・ボックス』『ALBUM』のスーパー・デラックス・エディション・ボックス・セットについても訊いている。

 読んでいただければわかるが、基本的には質問に答えるというより、自分の言いたいことを気が済むまで喋りまくる、という内容である。気に入らない質問には絶対答えないし、答えない理由もはっきりと明言する。『ジョン・ライドン新自伝 怒りはエナジー』でも縦横に発揮されたフリーダムな、だが意外とまっとうで筋の通ったジョン・ライドン哲学がここでも炸裂している。質問者の発言がほとんど相づちだけなのは、口を挟む余地がなかったからと思われます(苦笑)。

 なお現在までのところ、『Mr. Rotten’s Songbook』の日本版の出版予定はないということだ。興味のある方はぜひ公式サイトより予約していただきたい。

 かなり長いが、とにかくあまりに面白い内容なので、ぜひ最後までおつきあいください。(小野島大)
 

「素晴らしき音楽の世界には、自己欺瞞が満ち満ちている」

――まずはあなたの最新リリースとなる『Mr. Rotten’s Songbook』についてお訊きします。実物を手にするチャンスには恵まれていませんが、資料で拝見したところでは非常に面白そうな本ですね。これはあなたが過去手掛けたすべての歌詞を、オリジナルのイラストつきでアート作品に仕立てたもの、という解釈で正しいでしょうか?

ジョン・ライドン:俺が過去40年余りの間に書いてきた曲数は128曲にのぼる。これをまとめることに決めたのは、俺たちが中国本土で2本のギグを演ることになったのがきっかけだった。中国当局から歌詞の提示を求められ、それに従ったところ、本土での公演が認められたんだ。それで俺は俄然、こいつは面白いと思ってな。で、どっちにしろ歌詞をまとめたんだから、いい機会だと思ってあらためて見直してみたら、ああ、これは本にしたらきっと良いものができるんじゃないかと考えたんだ。それで、イラストをつけて、多少の彩りを添えたわけだな。

――なるほど。

ジョン・ライドン:こういうのは今まで出したことがなかっただろ。俺の歌詞を全部まとめて、1冊の本に仕立てるっていうのはさ。というわけで、ようやくこういうものが出せたってわけだ。

――この本に収められている文字やイラストは、すべてこの本のために新たに描きおろしたものということですね?

ジョン・ライドン:ああ、勿論だ。当たり前だろ?

――はあ。で、サンプルの画像を見る限り非常に凝った、よく出来たポップアートという印象です。曲毎に文字やイラストのスタイルを変えたりもされていますよね。本作の制作過程で、最も苦労した点はどこですか?

ジョン・ライドン:あー、俺が過去40年にわたって一貫して持ち続けてきた正直さとフェアプレー精神、それに良い仕事をしたいと思う気持ちに折り合いをつけるってことだな。その点については俺は実に首尾一貫してるんだ、恐らく40年以上にわたってな。俺はもう結構長いことこの仕事を続けてきていて、61歳になったところだが、自分がソングライターとして終わった、あるいは終わりに近づいているとはこれっぽっちも思ってない。俺にはまだこの先、長い長いキャリアが続いていくって確信があるんだ。とりあえずここまではなかなかイイ線行ってると自分じゃ思ってるんだけどな。

――はい。

ジョン・ライドン:フォーク・シンガーとしては悪くない。俺は自分じゃ自分のことをそう見てるんだ。このfolk singerってのはつまり、世間一般の人々(folks)の歌を歌う人間ってことさ。俺もそのひとりだからな。どれもみんな真実の物語なんだ。俺の実在する友人たち、俺の属するコミュニティ、俺の価値観がそのまま反映されてる。それは俺が俺の両親から受け継いだものであり、彼らもその両親から受け継いできたものだ。俺たちにとって、生きるってのはそういうことなんだよ。高潔さを何より大切にし、同胞であるすべての人間たちに対して共感を持つってことだ。この本のテーマになってるのもそれだよ。

――なるほど。では、この本の仕上がりには満足していますか?

ジョン・ライドン:俺は決して満足することはないね。

――あ、そうですか。

ジョン・ライドン:何に対してもそうだ。俺は今までのところ、これでもう何も思い残すことはないと思うところまで突き詰めて書けた曲はひとつとしてないし、歌詞についても、自分の納得するレベルには半分も達したとは言えんね。

――ほんとですか。

ジョン・ライドン:ああ、マジな話だ。まあ、きっと822歳ぐらいになったら、満足したと言えるものが何かしら出来てるんじゃないかと思うがね(笑)。

――ハハハハ、なるほど。

ジョン・ライドン:いいか、俺はよくそこらにいる理想主義かぶれの、『老いさらばえる前に死んでしまいたい』なんて連中とは違うんだよ。むしろその逆を行くつもりだ。俺はとんでもなく、ケタ外れに長生きしようと思ってる(笑)。人生とは、生きるとはどういうことかってのを、完全に掌握するまでは、死ぬ準備に取り掛かる気はないね。(笑)そうなったら喜んで死を迎えるさ。その時が来るまでは、俺は決して満足するつもりはない。

――はい。

ジョン・ライドン:俺には飽くことのない知識への渇望と意欲があるんだよ。そして英語という言語に対する純粋なる愛情もだな。『ジョン・ライドン新自伝 怒りはエナジー』にも書いた通り、俺は4歳の時にはすでに読み書きができるようになってたんだ。ところが7歳になった時、髄膜炎という恐ろしい病気によってその能力と知識は根こそぎ奪われてしまった。それを完全に取り戻すのに、丸4年もかかったんだ。だけど本ってものを再び発見したおかげで、俺は自分の考えだけじゃなく、他人の思考プロセスの中に入り込むことができるようになった。そうすることによって逆に、人ってのは実にそれぞれなんだって感覚を手に入れたんだ。それと同時に、俺たち人間はみんな、実はとても似通っているんだってことも分かった。俺たちはみんな、例外なく同じ種類のエモーションをひと揃い兼ね備えているし、例外なく7つの大罪を犯さないよう、誘惑に抗って生きているんだ(苦笑)。けど、そこんところを心得てる人間は決して多くはない。それがわかった時、俺は自分と同じように人生という旅路を辿る仲間たちに対して大いに興味を抱くようになったわけだよ。

――なるほど。

ジョン・ライドン:俺は我が同胞、人間てやつが大好きなんだ。俺たちはみんな偉大な存在なんだよ。誰もが一人残らず、それぞれ独自の視点で人生を捉えてる。だから俺はどんな主張を持った特定の政党にも与しないし、どんな政治的な考え方にも、どんな宗教運動にも加担しない。何故かと言えばそういう組織はみんな、それぞれの人間の持つ個性をことごとく否定し破壊するものでしかないからだ。

――ふむ。

ジョン・ライドン:乱暴な言い方をすりゃ、俺たちはみんな戦士なんだよ。だけど俺たちの中には、戦士であることを不安に思ってる奴らがいる。(可笑しそうにクックッと笑う)俺もそのひとりだ、ハハハ。

――あれ、そうなんですか?

ジョン・ライドン:ああ。まあ、いつもじゃないけどな。でも絶えず自信に満ちて戦いに挑んでるってわけじゃないぜ。けど結局のところ、大事なことはいつもオープン・マインドでいることだ。そこが肝なんだよ。そして寛容な心(オープン・ハート)でいること、こいつはもっと大事なことだ。俺の作品には俺のハート&ソウル、全身全霊が注ぎ込まれてる。何しろこいつは俺が人生において与えられた唯一のチャンスだったんだからな。よし、これなら俺にもできるぞ、っていう確信を持って、紙の上にペンを走らせ、間違いなく俺だけじゃなく他の連中にとっても意味を持つ言葉を書き連ねていったんだ。

――ええ。

ジョン・ライドン:俺はうちの親父とオフクロに教えられたこと、彼らとの思い出を正直に記しただけなんだよ。俺の家族、俺のコミュニティ、俺の星においてのな。我が種族、我が同胞たる人類、我が宇宙についてだ!(笑)。そうやってどんどん突き詰めていくと、ブラックホールに辿り着くってわけだな。宇宙の終わりであり始まりさ。実に興味をそそられるじゃないか!(笑)。

――はあ。

ジョン・ライドン:しかしな、人間社会で生きていると、真実だけを語ってるんじゃニッチもサッチも行かなくなるわけだよ。自己欺瞞てやつは、俺に言わせりゃ人間の犯すことのできる最大にして最悪の悪行のひとつだと思うがな。そして、素晴らしき音楽の世界には、自己欺瞞が満ち満ちているわけだ。

――(苦笑)確かに。

ジョン・ライドン:な、そうだろ。自分に対する過大評価だの何だの……俺は自分のキャリアのごく最初の段階で、そんなものは全部喜んで放棄したんだよ。俺は無理やりポップ・スターの役割を押しつけられたわけだが、全く気に病まなかった。だから止めたんだ。最初のバンド(注:Sex Pistolsのこと)はそうやって辞めたのさ。そうして物事を正しく行なうことに着手したんだ。

――ええ。

ジョン・ライドン:で、このSongbookの本質も、つまりはそういうことさ。詞に添えられたイラストや漫画みたいなものは、言葉の中に込められた俺のイマジネーションを表わしたものだ。詞を書いてる最中に頭の中にふと浮かんできたキャラクターだな。

――なるほど、そういうことですね。

ジョン・ライドン:見ての通り、コメディーの要素がたっぷり入っているが、それは当然で、俺は自分の半生を通して、人生ってのはそういうものだと学んだんだ。ただしそれには常に大いなるペーソス、大いなる悲しみがつきものでな。そいつを笑い飛ばせるようになるには、更に個人レベルで大いなる苦痛を味わうことが必要なんだ。自分自身を疑い、探し、見つけることが必要だ。俺はそういう中から人生の真実を見つけたし、それは俺の敵じゃなく、武器になってくれることもわかった。……というわけで、それがこの本が説明しようと試みていることだ。今まで話してきたこと、そのすべてがひとまとめになってここに詰まってる。これまでは全部バラバラで、断片的だったものが……ある意味ジグソー・パズルのピースみたいなもんだよ。曲の形にする過程で、パズルがひとりでに出来あがっていったんだ。俺はミステリー扱いされたいなんて思ってやしない(笑)。むしろ何も包み隠さず、誰が見てもわかるようでいたいんだ。

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