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くるりの楽曲を形作る、不変のメロディセンスとコード感覚ーーベスト収録曲を改めて紐解く

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 今年9月でバンド結成20周年を迎えたくるりが、先だってリリースされたオールタイム・ベストアルバム『くるりの20回転』を携えた、『「くるりの20回転」リリース記念ツアー「チミの名は。」』を開催する。同ツアーは、2017年2月19日の大阪・Zepp Osaka Bayside公演を皮切りに、2月21日、22日には福岡・DRUM LOGOS、2月24日に名古屋Zepp Nagoyaそして2月27日、28日に東京Zepp DiverCity TOKYOにておこなわれる。アルバムごとに新たなアプローチを試みながら、常に進化し続けてきたくるり。そんな彼らにとって本ツアーは、キャリアを総括しつつも次なる道標を示すような内容となるだろう。そこで今回は、彼らの代表曲をピックアップしつつ、ソングライティングの魅力に迫りたい。

 くるりの楽曲の、ほぼ全ての作詞作曲を手掛けているのはフロントマンの岸田繁である。前述のとおりアルバムごとに様々なアプローチをおこなってきている彼らだが、骨子となるのはシンプルなコード進行およびシンプルなメロディである。ただし、ルート音を避けながら浮遊感を出していくベースラインや、時おり挿入されるディミニッシュ、マイナーセブン・フラットファイブといったコードにより、いわゆるJ-POPとは一線を画す新たな響きをもたらしている。また、彼が影響を受けた海外アーティストへのオマージュを、楽曲の随所に散りばめているのも特徴の一つ。構造はシンプルでありながら、そこには膨大な情報量が詰め込まれているのだ。

 まずは、1998年10月にリリースされたくるりのメジャー・デビューシングル曲「東京」(『さよならストレンジャー』収録)を聴いてみよう。キーはEで、イントロは<A /E – B/ C#m – F#m/ G#m – A>を2回繰り返した後、<E/B – F#m/A – E/B – F#m/A>となり、そのままのコード進行でAメロへとなだれ込む。歪んだギターのバッキングに8ビートを主体としたリズムは、スマッシング・パンプキンズやピクシーズ、ダイナソーJr.といった90年代USオルタナティブ・ロックを彷彿させるもの。途中、レディオヘッドの「Creep」に登場する、かの有名なバッキング(ガガッ!ガガッ!)を登場させるのはご愛嬌。メロディは、どこか日本のフォークミュージックを思わせる朴訥とした響きをたたえており、ソリッドなバンドサウンドとのコントラストが効果的だ。サビもAメロと同じコード進行で、いわゆる「Bメロ」を挟まないところも当時のJ-POPでは珍しかった。

 2001年1月にリリースされた7枚目のシングル曲「ばらの花」は、今も語り継がれるくるりの初期名曲。コーラスはSUPERCARのフルカワミキで、レイ・ハラカミがリミックスしたほか、奥田民生や矢野顕子、南佳孝らによってカヴァーされるなどミュージシャンにも人気が高い。この曲のキーはE♭で、平歌の部分のコード進行は<E♭Maj7-Cm7-Gm7-A♭Maj7>とシンプルな循環コード。「東京」と同様、Bメロを挟まずサビへと進む。コード進行は、前段が<E♭onG – A♭Maj7 – B♭ – Cm7>、後段が<E♭onG – Fm7 – B♭ – Cm7>。ここも循環コードだが、1小節目が分数コードになっていて(ルートに対して長3度の音)、これがえもいわれぬ浮遊感を醸し出している。また、メロディは最後の部分以外、全て拍のアタマに四分音符で乗っており、強烈な印象を残す。ユニークなのは、べートーベンの交響曲第9番、第4楽章で歌われる「歓喜の歌」に、(譜割も含め)とてもよく似ていることだ。ハーモニーが異なるため意識しなければ気付かないが、日本では大晦日に歌われる有名なこのメロディをモチーフにしていることも、「ばらの花」を不朽の名曲たらしめている要素と言えるのではないだろうか。ちなみに、前段と後段の2小節目のコードはA♭Maj7からFm7に入れ替わっていて、ここも意識しないと気付かないぶん潜在意識に強く訴えかける。

 この曲のように、いわゆる「スタンダードナンバー」を“取り入れた”曲としては、「JUBILEE(Jubilee gemischt von Dietz)」も挙げておきたい。アンディ・ウィリアムスの「Moon River」と、バッドフィンガーの「Without You」を組み合わせたようなメロディに、思わずニヤリとさせられる。

      

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